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第二章・ペーリュ視点
2-27・誤った選択
しおりを挟むそれはリーファも同じだったようで。
「あ! ラーヴィ義兄上! ごめんなさい、そう言えば一緒でしたね! 僕、義兄上のことしか考えられなくて」
えへへ、と、自分があまり良くない態度を取った自覚があるのだろう、少し罰が悪そうに笑うリーファはかわいい。かわいいのだが。
流石にこれはひどいな、と思わざるを得なかった。
なにせ暗に、私以外には興味が全くないのだと告げたようなものなのだ。自分に好意を抱いている相手に対してこれはひどい。ただし、リーファには好意を抱かれている自覚もなければ、自分の言ったことの裏側を察することなども全くできていないのだろう。
リーファに悪気は全くない。全くないのだが。だからこそ残酷なのは確かだろう。
その証拠に、リーファに笑顔を向けられているにもかかわらず、ラーヴィの顔は僅かばかり引きつっている。勿論、その顔には笑みと呼べるものが浮かべられてはいるのだけれど。
「は、はは。そう。だったら、仕方ない、ね? ……なら、義兄上に一番素敵なお庭をお見せする為にも、僕と一緒に先行して先に探しておくのはどう?」
気を取り直して、それでも二人の時間を持とうとするその心根は流石だ。
私は内心溜め息を吐いた。勿論、リーファが気にするだろうから、表には出さない。
「え、でも……」
「リーファ」
まだちらちらと私を気にするリーファに笑いかける。
ラーヴィからの視線を感じた。私が、リーファにどんな言葉をかけるのかが気になって仕方がないのだろう。いい年をしてかわいげのある弟である。
だから、少しぐらいならと寛容な気持ちになれた。
「私に素敵なお庭を探してくれるの? 嬉しいな」
そう、ラーヴィの提案に乗るように促す。リーファはまだ少し迷う様子を見せたものの、すぐに思い直したのかにこりと笑った。
「……そうですね! とっておきの場所を、探してきますね!」
ラーヴィがほっと息を吐く。そしてリーファへと手を差し出した。
「じゃあ、行こう」
「はい! ラーヴィ義兄上!」
うん。何も手をつなぐ必要はなかったんじゃないかな?
大人げなく、面白くない気分になりながら、先を目指す二人を見送った。
すぐに自分も追いつくつもりで。
私はこの時の選択を、のちに後悔することになる。
やはり二人の時間など、持たせるべきではなかったのだ。
だけど、まさか思わないではないか。安全なはずの自国の王宮で、あんなことが起こるだなんて。
誰の悪意も害意もなくても。事故は防げず、そして。
ああ、本当に! 魔術師塔にいる者達は、時に碌なことをしでかさないっ!
誰かの作意がない以上、それはもしかしたら防げない必然なのかもしれなかった。
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