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第二章・ペーリュ視点
2-31・誤作動と暴走
しおりを挟むとりあえずと応接スペースに腰を落ち着けて話を聞いた結果、彼らが魔道具の開発をしていたことを知った。
なんでも、魔道具に組み込んだ魔術式に誤りがあり、誤作動を起こして暴走、誤った効果を纏った魔力の塊のようなものだけが飛来してしまったのだそうだ。よりにも寄って王宮の中庭方面へと。
リーファは、おそらく本当に全くの偶然で運悪く、それに当たってしまったのだろうということだった。
ただの事故と言えば事故だ。この上なく不運だがそれまで。
魔力の塊のような何か。当たり前に悪意も害意も差し挟まらない、物理的な接触ですらないそれ。
リーファには当然のように結界が張ってあった。それも、ナウラティス特有の守護結界とはまた別に、ある程度の物理的な脅威すら弾いてくれるような結界だ。
これまで、その二つの結界のみで特に問題が起こるようなことはなかった。ただ、こうなってはもう一つ、私以外の魔力的なもの全てを弾くような結界も重ね掛けしておけばよかったとそう思う。
そうすればおそらく、今回のようなことには成らなかったはず。
そもそも、例えば今回のような場合でも、もし、魔力の塊のような何かに、ほんの僅かでも悪意や害意のようなものが混じっていたなら。それはナウラティスの結界で充分に弾き飛ばせるのである。
要は呪術だとか、悪意を持って放たれた魔法だとかなら防げるということ。だからこそリーファにかけた魔法も、件の二つで問題はないだろうと考えられてきた。なのにまさかの事故だとは。
魔術師塔の者たちも、想定外の出来事で恐縮するばかり。むしろ顔色を青くして罪悪感に打ちのめされている。
私は頭を抱えることしかできなかった。
同席したラーヴィも同じ様子で、リーファは私の腕の中で、いまだ苦しげに眉根を寄せ、意識を取り戻さないまま。
今の私に、リーファが放せるわけなんてなかった。だからこそずっと、膝の上に抱きかかえている。
「それで、魔道具の効果というのが……」
「人の記憶や、とりわけ認識に作用するものなのです。事故などにより、留めておきたくもない記憶を有してしまった者たちに対する、対策の一助となればと研究を続けている物でして……」
簡単に言うなら、精神的負荷への対処、医療目的というならそうなのだろう。
それらは魔法で対処が可能だ。だが、それを魔道具に落とし込む。彼らの研究はそのようなものなのだとか。
「つまり、リーファはいったいどうなっているというのだ」
苦く問いかけるのへ彼らは顔を見合わせて、非常に言いにくそうに、だけど正直に、彼ら自身の見解を述べ始めたのだった。
「おそらく、認識に齟齬が発生しているはずです」
「研究室に戻り、誤った魔術式の解析をし直さなければ確かなことは申し上げられませんが、先程の状況とお話を聞く限り、リーファ陛下の中での認識がラーヴィ殿下とペーリュ陛下とで入れ替わっておられる可能性が高いのではないかと……」
「記憶は?」
「記憶への干渉は付与しておりません。おそらくはそのまま」
「何も変わっておられないはずです」
すなわち、記憶と認識の齟齬。それがリーファの混乱の原因ではないかという話だった。
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