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第二章・ペーリュ視点
*2-43・私の全て②
しおりを挟む触れる、触れる、リーファに触れる。
いつも通り。否、少し前までと同じだ。
リーファが子供を身ごもる前。
だって私はこうして、眠るリーファに触れていたのだから。
「リーファ」
いつもと同じだ。何も変わらない。
リーファは眠っていて、可愛くて、愛しくて。
そして私が眠るリーファへと触れていく。皮膚を通して魔力を流して、リーファが目覚めたりしないように絶え間なくリーファの肌に指を這わせ続けた。
いつもと同じ。いつも通り。なのに違う。それだけがわかる。
どうしてなのだろう。
リーファが子供を身ごもってから、私は眠るリーファに触れることがなくなった。
リーファは起きていても私を受け入れてくれ、また、眠っている時のことも自分で把握しておきたいとまで言ってくれた。
だから私は眠るリーファに触れる必要などなくなって、その代わりのように、起きているリーファと充分に触れ合い続けてきた。
今、久しぶりに眠るリーファへと触れている。
私の指先全てにびくびくと敏感に可愛らしく反応し、だけど決して目を開けず、私を見ることもないリーファに。私はいつも通りに触れているのだ。
私はしっかりと覚えている。リーファがほんの幼い頃から続けてきた、眠るリーファへと触れる快楽を。他でもない私の腕の中に、リーファがあり続ける至福を。眠るリーファへと、私自身を深く沈めた充足感を。
私はしっかりと覚えているはずなのにどうしてか、今、久しぶりに眠るリーファへと触れていると、その時には感じたことがなかった物足りなさが、私の心を支配していた。
きっと私は知ってしまったからなのだろうと思う。
起きているリーファが私を受け入れ、また自分からも求めてくれることが、どれだけ私を満たすのかということを。私はもう、知っていて、だからきっとこんなにも空しい。
「リーファ」
それでも愛しいリーファには魔力が必要で、私は魔力を注がねばならないのだ。
眠ったまま、私を求めないリーファへと。
たとえ父母を同じくする実弟たるラーヴィ相手だったとしても、もしかしたらリーファへと、他者が魔力を注ぐことを許容しなければならなかったかもしれないと想像すると、それだけでもぞっとする。
そんなことなど全く許せるはずもなく、また、混乱していないリーファ自身も、受け入れはしなかっただろうとそう思った。
『義兄上なら、嬉しいです』
私ならとリーファは言った。他は嫌なのだと訴えた。
いつも真っ直ぐに、私だけを求めてくれていたリーファはしかし、今、目を閉じたまま。決して私を澄んだその瞳に。映すことなどないのである。
「リーファ」
やるせなく呟いた私の呼びかけに。応える者はいなかった。
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