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第二章・ペーリュ視点
2-45・魔力欠乏①
しおりを挟む私は人よりも魔力の量が多い。
だが、リーファほどではなく、曽祖父にもかなわなかった。
それでもラーヴィや両親、他の弟妹達よりは上だ。
とは言え、いくら私が豊富な魔力を有していたとしても、その量には限りがあり、こうして際限なく眠るリーファを揺さぶり続け、注げるだけ魔力を注ぎ込んだ結果、たった数日で私の魔力は枯渇し始めていた。
たとえ少なくとも魔力を注ぎ続けている限りリーファは目覚めない。しかし流石にひと時も手を放さずにだとかいうわけではなく、少しぐらい傍を離れたからと言って、すぐに目を覚ますというわけではなかった。
むしろ起こそうとしない限り起きないと言っていい。ただし、声をかけて揺するだとかするとすぐに目を覚ましてしまうのだが、先に魔力を持って触れるなら、やはり目覚めることはないのである。
リーファを、可能な限り放さずに数日。ついに限界を悟った私はしぶしぶリーファから体を離した。
リーファは健やかに眠っている。苦しそうな様子もなく穏やかだ。鈍く痛む頭とふらつく体で、それでも、お互いの体液でドロドロに汚れた寝台の上を洗浄魔法で整え、リーファには治癒魔術も施した。
私を健気に受け入れてくれていた部分が、真っ赤に充血して、かわいそうなほど腫れてしまっていたからだ。
切れていないのが不思議なぐらいで、その部分からこぷん、こぽと注いだ体液が呼吸に合わせてか溢れてくる様子は大変に卑猥で普段なら興奮する光景だったのだけれど、今の私には流石にそのような元気はなく、そちらに関しても、リーファが不快に思わない程度に処理を済ませた。
普段ならなんとも思わないそれらの些細な魔術や魔法でさえ、元から覚えていた頭痛がひどくなったが仕方がない。
最後にゆっくりと、リーファの頬を撫でる指先に魔力を乗せて、より眠りが深くなるように調整する。きっとこれでしばらくは起きないはずだと確認してそうしてようやく寝台から離れた。
覚束ない足取りで扉に向かい、部屋を出る。
元より気配には気づいていた。曽祖父が部屋を出てすぐの所で、おそらくは私を待っている。
予想通りひどく近い距離にいた曽祖父は、私の様子を見ると呆れたように深く溜め息を吐いた。
「まったく。なんてざまだ。らしくないね、ペーリュ」
そんな風に努めて軽い調子でかけられた声に、私は小さく笑い返す。
「らしいという言い方をするのでしたら、この上なく私らしいですよ、曽祖父様」
そんなことを言いながら浮かべた笑みは、しかしどこか空虚な笑みだった。
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