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17・苛立ち
しおりを挟む卒業記念パーティを兼ねた夜会には、勿論、迎えに来てくれたルーミス殿下のエスコートで向かうことになった。
それは婚約者であるのだから当然のこと。
いつもの通り、送ってきてくれたドレスを見に纏った私を見ても、ルーミス殿下は何も言わない。
似合うだとかキレイだとか、何も。
そうすると私も、上手くお礼が言えなくて。
(こればかりはいつも、少し困るわね……)
なにせドレスを送ったり、迎えに来てもらって、かつエスコートを受けたり。
それらは婚約者であるならば何もおかしなことではなく、むしろ当たり前のことで、わざわざいちいち礼を言うほどのものではないのである。
もちろん、私自身はいつもありがたいと思っているのだけれど。お礼だって口にしたいと思っていて、だけどルーミス殿下の雰囲気が、いつもそのような言葉をまるで拒むようなのだ。
「お迎えありがとうございます。ドレスも」
そんな風に、言葉少なに挨拶に紛れて告げるのが精々で。ルーミス殿下の返事は決まって、
「ああ」
軽く頷きながらのその一言。
(こういうの、隙がないって言うのかしらね……)
当然、王宮に向かう馬車の中でも、特に会話など弾むわけがない。
これもまた、いつも通りだ。
程なくして辿り着き、エスコートを受けて馬車から降りる。
通常の夜会なら、王族としての入場となるので、控室などの方へと向かうのだが、今日だけは別、他の招待客……――多くは学園の生徒とその関係者たちに紛れて会場へ向かった。
なんとなく感じる視線は感嘆の混じったもの。
特に居心地の悪いものでもなく、反応など返さずに、おとなしくルーミス殿下に従い続けた。
何も問題などない。
そう、このまま最後まで過ごせれば、それが何よりだったのだ。なのに。
会場についてほどなくして感じたざわめきは、私たちに対してというよりも、私たちに近づいてくる何かに向けて、起こっているようだった。
そのざわめきの元にふと目を向けてしまって、
(ああ……)
ため息とも吐かないような、何とも言えない気持ちになる。
当然そのようなことは顔には出さないように努めたのだけれど。
エスコートを受けるため触れていたルーミス殿下の体が、びく、一瞬強張ったように感じられた。
「? 殿下? どうかなさいま……――」
「ラーファ嬢っ!!」
どうかなさいましたか。
訊ねようとした言葉は、響いてきた怒声宜しく、厳しく私を呼ぶ声に、一瞬でかき消されてしまう。
いつの間にか聞き慣れてしまった声。
誘われるように向けた視線の先にいたのは、案の定と言えば良いのか、先程のざわめきの元でもある、見慣れた姿。
「……キューミオ殿下」
ぽつん、落ちた声には知らず、僅かな苛立ちが混じってしまったのは、きっと仕方がないことだった。
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