197 / 206
5・新学期と学園祭
5-10・新学期の前に⑩
しおりを挟むティアリィはそれに少しほっとする。
ピオラから休み中の話も聞きたかったのだが、この様子ではむしろアリアを優先した方がいいのかもしれない。
「それで皆は今、何をしていたんだ?」
この場にいたのはピオラと、彼女といつも共にいてくれているご令嬢二人。そしてアリアと、ピオラ付きの侍女、少し離れたところに護衛もいた。
ほとんど揃っていると言える。
「もうじき学園に戻りますから、今日は最後にこちらでお茶でもと。とても天気が良かったですから」
そう言えばと、ピオラの言葉で、そろそろちょうどお昼のお茶の時間だなと思い至った。
国王たちと時間を持ったのは、昼食が終わってすぐぐらいの時間だったのである。
ティアリィは少しだけ考えて小さく頷いた。
今日はこの後、そこまで重要な用事はなかったはずだ。
それにもし他に用があったとして、皆でお茶を楽しむ時間ぐらいある。
「そうか。なら、俺もご一緒させてもらっていいかな?」
穏やかに訊ねると、ピオラがぱぁっと顔を輝かせた。
「まぁ! ぜひ!」
他の者も皆、笑って頷いていたので混ぜてもらうことにする。
よく出来た侍女が手早くティアリィの分の席も用意していった。
腰かける。
それなりの広さがある中庭のガゼボ。
真ん中に円形のテーブルのあるそこで、四人のご令嬢とティアリィ。
「それで、この休暇中、皆はどう過ごしていたんだ?」
なにぶん久しぶりに会ったのだ。
近況をと尋ねると、それぞれが柔らかな表情で教えてくれた。
「先程お伝えしたとおり、アリアは昨日、こちらに着いたばかりなんです。それまでは私達三人で、いろいろな所に行ったりしましたのよ?」
それなりに休暇を楽しんだらしい。
「そうなのか。ユーファ殿下とも出かけたりしていたと、先程うかがったんだが」
「あら! お耳が早いんですのね。ええ、お誘い頂いて何度か」
「それは皆も?」
元より隠すようなことでもない華やかなピオラの笑顔に頷きながら、一応と確認すると、二人はふるりと首を横に振った。
「流石に私たちは遠慮しました」
「お邪魔になってはいけませんから」
どうやら彼女たちはちゃんと、ユーファとピオラが婚約者候補同士だという認識を持っているらしい。
良識的な対応に、ティアリィは安堵して頷いた。
「気を使わせてしまったみたいだね。ありがとう」
「お母様は視察に行かれていたとお聞きしましたわ。そちらはどうでしたの?」
「ああ、いろいろと興味深かったよ、そうだ、アーディの策略かなんなのか、視察先で、……――」
などと逆に訊ねられ、それに応えたりそれぞれの近況を伝え合いながら、ティアリィはそこからしばらく、少女たちとのお茶を楽しんだ。
そんな様子を微笑ましそうに眺めるアリアを常に意識の端で気にかけながら。
そしてもちろん、その後すぐに彼女との時間も取ったのだった。
16
あなたにおすすめの小説
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる