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第二幕
2-5・見つからない駅
しおりを挟む次の休日。
俺はまず駅に向かった。然乎さんと待ち合わせた、俺の家の最寄り駅だ。
切符売り場で路線図を見る。
俺は眉をひそめた。
あの日。俺は今まで乗ったことのない電車に乗った。行ったことのない方へ進み、降りたことのない駅で降りた。
電車に乗っていたのはほんの十数分。駅数にして5駅かその辺だったはず。残念ながら、なんという駅だったのかが、どうしてかどうしても思い出せないのだけれど、それどころか。
見上げた路線図は、ひどく単純だった。と、言うよりかは、この駅から走っている路線は一つしかない。
俺がいつも会社に行く時に乗っているそれのみ。
どうしてあの日、気付かなかったのだろうか。
初めてのおでかけにまさか浮かれていたのか。
わからない。
わからないけど、続けて駅名をじっくり見た。
どれだけ見ても、そこにあるのは見たことのある駅名ばかり。
あの日、降りたはずの駅名らしきものは何処にもなかった。
「どうして」
降りた駅は、確かに知らない駅名だったはずだ。そう思った覚えがある。初めて降りる駅だった。だけど思い出せない。
そもそも、俺は元よりあまり頻繁に出かけたりするような性質ではなく、休日と言えばこもって休むことばかり。
今見上げている路線図にある駅名も、見覚えがあるとはいえ、そのどれもに降りたことがあるわけでもない。
そもそも、会社に出勤する時や、実家に帰る時ぐらいしか電車そのものに乗らないのだ。
俺の、勘違いだろうか。
この中の駅名のどれかだったのか。
聞き覚え、見覚えがないと思ったのが、思い違いという可能性がある。
俺はひとまずホームに上がり、いつも会社に向かうのとは、逆に行く電車に乗った。
選んだのは各駅停車。
あの日に乗った電車がそうだったのかはやはり覚えていないのだけれど、ひとまずは一つ一つの駅を注意深く見ていってみようと思った。
きっと、思い違いだ。
すぐにあの駅に辿り着けるはず。
俺は嫌な予感を覚えつつも、必死で自分にそう言い聞かせ、一駅ごとにいちいち電車を降り、その全部をじっくりと見て回った。
少しでも、あの日の記憶にある駅と、同じ駅はないかとそう、祈るような気持ちで。
だけど。
「どうして」
どの駅を降りても、そこにあったのは俺の最寄り駅と大きくは違わない駅の風景。
ホームから見える景色も、あの日驚いた長閑な田園風景などどこにもなく、住宅街ばかりで。
丸一日かけてずいぶん遠くまで確かめたのに、その日結局俺は最後まで、あの駅を見つけることが出来なかったのである。
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