【完結】婚約破棄から始まるにわか王妃(♂)の王宮生活

愛早さくら

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20・茶会の後

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 明日? 明後日? 今日のような会をまた開けと?
 何を言っているの、いったい……。
 全く理解できないアレリディア嬢の置き土産に、すすすと近寄ってきたのは先程までのお茶会で給仕を務めてくれていたケーシャ。

「なんですか、あれ。失礼なっ」

 苛立ちも露わな囁き声は、どう考えてもアレリディア嬢を指している。
 僕は、はは、と力ない笑いを返すことしか出来なかった。

「い、言わないで……そんなこと僕が一番知りたい……」

 今までも、優秀なご令嬢だという声は、間違っても聞こえてこなかった。見目が美しいことだけはわかっていたけれど。
 あの分ではおそらくこれまで、彼女を褒めたたえるような中位から下位貴族しか周りにはいなかったのではないかと思う。むしろそういう方々しか、残らなかったというべきか。
 狭い世界で生きてきたが故の傲慢が、透けて見えるかのようだった。
 せめて言動だけでも『普通』であればまだしも、あれでは。
 僕自身、必要最低限以上の『社交』など経験がない。
 そもそも、少し前までは学生で、必然的に、勉学の方へと重きを置かれ、ある意味では『社交』などは免除されている状態だったからだ。
 とは言え、僕の受けてきた王太子妃教育にはそのような際の対処なども含まれていて、僕が事前に知り得た相手方の情報などを話題としていたのがそう。
 逆に領地のことに関してなんて、最低限と言っていいほど、当たり障りないものだとさえ言っていいことだろう。
 間違っても自分の、それも装飾品などについてのこと、あるいは自分自身のことについてしか話さないなどどう考えても正しいとは思えない。
 勿論、そういった話題に寄りやすい系統の方などはいると思う。特に衣装などは流行だとかそういったものもあるし、話に上がりやすいとも言えるだろう。だけど。

「……ねぇ、あれ、まさかが『普通』だとかそんな…………」

 恐々と口に出した僕に、

「ありえません。これまで様々なご令嬢を目にしてまいりましたけれども、私もあのような方は初めて見ました。妃殿下に対しても、全く敬意を払っておられるようには見られませんし、そもそも、どういったつもりで、どういったお立場であのようなことばかり口にしておられたのか……理解に苦しみます」
「そうだよね、よかった……まさかあれが『普通』だとか言われたら……」

 滲む怒りを堪えきれないと言わんばかりなケーシャの様子に、僕はほっと安堵の息を吐く。
 危うく、今まで自分が受けてきた教育と、自分の中の当たり前を疑う所だったと何とも言えない気持ちになった。
 婚姻式及びお披露目はまだとは言え、僕はすでに王妃。言ってしまえば現状この国において、少なくとも対外的には、国王たるリア様以外に僕以上の立場の者はいない。にもかかわらず、アレリディア嬢は当たり前のように、僕を蔑ろにして見せたのである。
 さも自分の方が、立場が上であるかのように。
 あの場にいたご令嬢は皆、アレリディア嬢と同等か、それより上の立場の方々ばかりだったのに。
 少しの粗でも目立ってしまいそうな、先程までのような少人数の茶会の席で、自分の立場を弁えないものなどいない。
 だからこそ僕だって慣れないながら、必死に場を取り持とうとした。結局は全くできていなかったけれど。

「僕が……もうちょっとうまく対処出来ていたら……」

 他の方々に不快な思いもさせなかっただろうに。
 悔やむ僕の言葉にケーシャは、

「いいえ、妃殿下はご立派でいらしたと思いますわ。あんなの、誰が対応できるって言うんです? そもそも、余程の事情がない限り、あのような茶会など中断してしまえば宜しいんですのよ」

 あるいは該当の者を追い出してしまうだとか。
 そんなことを、慰めでもなく口にする。
 僕は小さく頷く外ない。
 そうして一番立場の上の者が、不快を示すことが必要な場合もある。
 それは僕も知っていたからだ。でも。

「今日は、流石に……」

 今日はもとより、アレリディア嬢を大人しくさせておくためだとかそういった意図を持った茶会だった。
 まさか『当たり前』の対応なんて取れなくて。

「ご安心なさいませ。いずれのことも全て、陛下にご報告いたしますから」

 もちろん、コーデリニス侯爵家にも。
 と、にっこり笑うケーシャに、頼もしいと、僕は頷くことしか出来ないのだった。
 同時に僕からもリア様にお話しておこうとも思ったけれど。
 とは言え、僕はこの時、予想しきれなかったことがある。
 だってまさか思わないだろう、この後しばらく本当に、3日間隔ほどで同じような茶会を開き続ける羽目になるだなんて。
 当然すべて手配はリア様がなさっておられて、加えて次からの参加者の方々が皆、理解した上で付き合ってくれていたようなのは幸いとしか言えなかったが、僕が胃をきりきりさせ続けなければならなかったのもまた、仕方がないことだった。
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