ヴァーチャル・ラブ ~いつもあなたを好きでした。~

楠瀬 飛鳥

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本編

愛のキューピット

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今日の唯は、愛のキューピットだ。

そう聞いている。

人のキューピットしてる場合なのかな?とも思ったが、友人の事を大切に思う唯であって欲しいとも思う。
僕は今日も仕事で、穏やかな時間が流れている。

でも、最近の唯は友人と出かけると必ず、電話をかけてくるか、メールをしてくるか、何かしらの出来事に出くわしている。

今日は何事もなければ良い、とふと思った矢先だった。

唯から怒涛のメールが届く。いつもの怒り方とは、どこか違う。怒り方に余裕がないのだ。感情のままに文字を打っているように思う。

「何があったんだ?」
返事のメールを打っても、更なるメールの文章を読むと僕のメールを唯が読んでいないことに気づく。

「回線が混み合ってる? 僕のメールが届いていない? そんなことある?」

唯のメールが徐々に、その怒りをエスカレートしていく。唯に語り掛けても届かないもどかしさが、苛立ちを増幅させる。暫くの間、メール交換を行ったが、唯から今度は電話がきた。

「その怒りを少しでも、和らげてあげたい。」
新しいはずの明日、輝くかもしれない明日がこのままでは、今日の延長の一日に過ぎなくなってしまう。二人だけの時間が過ぎていく。長いはずの時間が、とても短く感じる。それはきっと、心が満たされているからだ。感情を思いのままにぶつけてくる唯が愛おしく思う。
唯と同じくらいの年齢の自分が脳裏を過ぎる。

「僕は好きな相手にこんなにも、感情をぶつけることが出来ていたのだろうか?」

僕も、今まで唯が付き合ってきた人達のように、受け止めてくれない相手に落胆していたような気がする。そんな思いを唯にはさせたくないし、唯のことを思えば、唯のことを理解したければ、、、と、自ずと唯の言葉を耳ではなく、目でもなく、心で聞いているのだと気づく。

どれくらいの沈黙だったのだろう。
調子を合わせたように、二人の会話が止まった。
言葉を失った訳ではない。
間をとったのだ。
何でもない“間”だ。
実際に人と会ってる時には、暫しある、ありふれた間である。

でも、電話でこんな間をとったのは、初めてだった。
しかも、お互いが同時に、そうしたくてかは解らないが、無言の時間が過ぎていく。
でも、何となく心地の良い“間”だ。
唯に呼び掛けてみる。唯の返事が返ってくる。

その時に解った。

お互いにお互いのことを考えている。
近くに居たい。
傍に寄り添っていたい。

唯の気持ちを察するのに時間はかからなかった。
もう一度、唯に呼び掛けてみる。

いつも以上に、くぐもった声。
愛おしい声。

こんな状態を脱出しようとしたのは唯の方だった。

「修、、、。」
「修、したい、、、。」

唯の呼びかけに何の疑問も不思議も感じなかった。僕も望んでいることだからだ。

二人の吐息が、スマホを通して交差する。

まるで唯が、本当に耳元で吐息を漏らしているように思った。
『唯が欲しい。』

僕に全てを預けてくる唯を全身で受け止めたい。
お互いが求め合う。これはもう“Telephone SEX”なんて簡単な言葉で表現できるものではない。

唯の声が耳元で聞こえる。いつもの声よりも“一オクターブ”高い、唯の吐息。腹式呼吸によるものなのだろう。

いつの間にか、僕も唯とのSEXに没頭していた。

実際に相手が目の前にいる訳ではないのは解っている。
でも、もうどうしようもない。唯を感じたい。

僕の深層心理が、唯のありとあらゆる記憶を呼び覚ます。
すると、急に僕の胸部が熱くなっていく不思議な感覚が走った。

『胸が熱い。足が熱い。』

まるで、唯が僕と本当に抱き合ってるみたいだ。

『唯がいる。本当に傍にいる。』
そう思った。人が聞いたら、「そんなバカなことはある訳がない!」と言われるだろう。
でも、本当なのだ。

『体温の上昇と共に、僕の身体が唯の体重さえも感じている。』

温度と重さを感じ始めるともうリミッターが解放され、唯の唇、胸、局部の形までもを把握し、愛しく触れていく。僕が触れた箇所を唯も感じいるかのように同じタイミングで吐息が漏れていく、、、。

嘗て経験したSEXよりもさらに感情がエスカレートしている。この上もない至福の想いで満たされていく。こんな気持ちでSEXをしたのは初めてかもしれない。

『実際に相手が目の前にいる時よりも感じている。もう、どうなってもいい』
とすら思った。

こんな想いで果てた後も、唯のことでいっぱいだった。
どれくらいの時間が流れたのだろう。気づくと、喉がカラカラであることからも、このリアルさを再確認することになった。人の想いが、時間と空間を超えた瞬間だったのかもしれない。
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