神縁の申し子はその目で何を見る

ボンディー

文字の大きさ
8 / 17
第一部第二章幼児期編

第八話【背伸び】

しおりを挟む
アスターと一緒に食堂に向かうと、既に皆揃っていた。

「おぉアインス来たか」

「とりあえずご飯を食べましょう」

というわけでアインスも直ぐに席に着き食事を開始する。

(そう言えばこの世界基本日本語で話す癖に"いただきます"とか無いな)

 因みにアスターは既に一足早く夕食を済ませており、アインスの後ろに立っている。
 しばらくして、食事が終わると今日の話が始まった。

「よし、みんな食べ終わったみたいだし今日の話をするか」

「ではまず私から、アインス様申し訳ございませんでした」

 アスターはそう言って深々と頭を下げた。

「ん?何でアスターが謝るの?」

「今朝アインス様が頭痛を訴えたにも関わらず、私はそれを無視してしまいました。それに対する謝罪です」

 どうやらコルチカムがあれからしっかりと詳しい状況の説明をしてくれた様だった。

「いや、それは普段から嘘ついてた僕も悪かったし良いよ、僕の方こそごめんね?」

「いえいえとんでもないです!アインス様は何も悪くありません!」

 アスターに続いて両親も謝罪した。

「俺の方からもすまないアインス、今回は俺の不注意だった」

「私もごめんなさい、少しでもアインスの成長の糧になればと思ったのだけど...」

「良いよ、父上も母上もありがとう!僕これから稽古頑張るね!」

(なるべく煽らないように幼く見せるの以外と難しいぞ‼︎)

 などと別のことを考えていると、アスターの更に後ろから声がした。

「でも確かにアインス様前よりちょっとオーラが変わりましたね」

「オーラ?」

 アスターの背後から出て来た例の小さなメイドが喋ったので、アインスが思わず聞き返した。

「はい、なんだか前より落ち着いたというかか、大人びたというか、とにかく雰囲気が変わりました!」

「ナズナ?食器を片づけたら早く下がって寝具の準備をしてきなさい!」

「はーい」

 アスターに言われ、小さく手を振って下がっていくナズナに釣られてアインスは軽く手を振り返した。

「なぁに?アインスったらもうメイドに手を出しちゃったの?だめよぉ~せめて学園卒業するまでは子供なんだから」

「いやっ!ちっ違うよ!ただちょっと本を運ぶのを手伝ってくれただけだよ!」

「確かナズナちゃんは6歳だったか...まぁ若いうちに色々経験するのも大切だが、あまりハメを外しすぎるなよ?」

(この家貴族の中でも大分おかs...珍しいのでは?もしかしてコンプレプリオスト家が辺境伯なのって厄介払い...それは無いと信じよう)

 アインスは否定するのを諦めて、逆に今後の本選びや本の運搬を手伝ってもらをおうと思いそのままスルーした。

「アインス様、因みにどの様な本を読んだのですか?」

「えっあぁ...えっと」

(不味いその質問は考えてなかった‼︎流石に5歳児が魔術の勉強を始めたら気味が悪い!)

「確かにそれは父さんも気になるなぁ」

(不味い不味い!これは流石に話を逸らすのは無理だ...なんとか誤魔化さなければ!)

「いやぁ本の名前忘れちゃってさぁ...ほらアレだよアレ...英雄が活躍するみたいなやつ!まだ全部見てないけど凄そうだったよ!」

(お願いだ!すごい英雄の伝承とかあってくれ!)

「ん?そんな本家にあったか?うーん」

「もしかしてへーニルの伝記かしら?」

「英雄要素はないぞ?」

「ちっ因みにそのヘーニル?って人は何をしたの?」

 ここでアインスは必死に話を逸らそうと話に出てきた単語にしがみついた。

「あぁあいつは...俺の古い友達だな」

「そうねぇあの人はとっても良い人だったわね」

(しまった!罠だったのか!これは大きな地雷をふんでしまっt)

「まだご存命ですけどね」

「なんだよ!」

(思わずつっこんでしまった...アスターが居なかったら本当に騙されてたぞ!)

「まぁ久しく会って無いし同じ様なもんだろ」

「今度うちのアインスを自まn...見せつけるために呼んでみましょうか!」

「母上それじゃ言い直せて無いです」

「奥様、ヘーニル様もお仕事が忙しい身ですので流石に来られないかと...」

「以前会いに行った時は暇そうにしてたぞ?何やら大人の鬼ごっこをしてるとか何やら」

(完全にスルーされたし父上のそれはただサボって逃走しているでは?)

「まぁヘーニルの件は手紙を送ってみるとして、結局アインスの読んだ本は何なのかしら」

「こ、今度持ってくるよ...」

 アインスはそれだけ言って逃げる様にその場を去った。

「全くアインスも素直に言えばいいものを」

「旦那様?それはどういった意味ですか?...」

「なに簡単なことさ、ちょっと背伸びして自分を大人に見せたかったのさ」

「お二人共それを分かっててえて聞くとは...かなり鬼畜ですね」

「昔のコルチカムもひどかったわねぇ」

「おいサルビア!何十年前の話をしてるんだやめろ⁉︎」

 コルチカムとサルビアの昔話はこのまま夜遅くまで続いたと言う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...