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序章 プロローグ 始まり……。『ウィズ ファントム ハート』
扉……。
しおりを挟む(チーン……)
(下へ参ります……)
目のやり場に困りながらも、俺は、点滅するエレベーターの行き先階表示ランプが、1階へと徐々に降りてゆく様子を目で追って見上げていた。
アレなはずの彼女のアノ部分は、静かにしている。
と、同時に、俺と同じようにエレベーターの行き先階表示ランプを、目で追いながら見つめている彼女。
エレベーター1階到着の際に、再び「たゆん」と揺れる。
俺の手に握られた、アレなはずの彼女の儚はかなげな手の温もり。
約5秒ほどで、エレベーターが10階から1階へと下降して止まった瞬間、アレなはずの彼女の手から、俺の手がスルリと抜け落ちた。
「え……?」
「あ……。ごめん」
(チーン……)
(1階です……扉が開きます)
約5秒間ほどの時間。
俺は、アレなはずの彼女の手から、人としての温もりを感じていた。
けれども、約5秒後には消えてしまった、アレなはずの彼女の手の温もり。
いや、アレなはずなので、当然と言えば当然なのだが……。
エレベーターの扉が開いて、一歩前に進む俺。
まだ、エレベーターの中に、留とどまっている彼女。
彼女が、切なげな顔をして俯うつむいている。
彼女を乗せたままの、エレベーターの扉が、閉まろうとした瞬間。
俺は、感じたことの無い不安と孤独に、襲われた。
「来いよっ……!!」
「えっ……?」
思わず、彼女に叫んでしまった俺。
驚く彼女。
少しだけ目に涙をにじませているアレなはずの彼女。
俺と彼女の目が合う。
ハッと気がついたように、我に返ったアレなはずの彼女の目の前で、エレベーターの扉が閉まり、俺の視界から彼女の姿が、閉ざされる。
(ブーン……)
その瞬間……。
電磁波のような何とも言い難い得体の知れない物音に似たような感覚が、空気中を振動させて、俺の肌を震動させた。
閉ざされたはずのエレベーターの扉の隙間から、彼女が転げながら、すり抜けて飛び出して来た。
「大丈夫かっ……!?」
「ケホッ、カハッ!! ハァハァ……。気持ち悪い。大丈夫。すり抜けるのは、やっぱり慣れないかな……」
エレベーターの前で倒れている彼女を抱き起こそうとして、俺の手が、何度も何度も、彼女をすり抜ける……。
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