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序章 プロローグ 始まり……。『ウィズ ファントム ハート』
この際……。
しおりを挟む「う……。ちょ、ごめん。大丈夫だよ。自分で立ち上がれるから」
エレベーターの前で、倒れているアレなはずの彼女。
すり抜けるのは、気持ち悪さで慣れないと、そう言っているのに。
俺は、彼女の身体を咄嗟とっさに抱き起こそうとして、アレなはずの彼女の身体を、何度も何度も、俺自身の手で、すり抜けさせていた。
出来もしないことを、独り善がりな判断で、良かれと想い込み行動に移す俺自身の悪い癖クセ。
目の前の彼女が、「気持ち悪い」と、言っているのに。
そしてまた、俺自身は、走馬燈のように至らなかった過去の俺自身への想いにふけりこみ、閉じこもる。
目の前で彼女が、倒れているというのに……。
「どうかされましたか……!?」
フロントにいたホテルの従業員が、俺へと視線を寄せ、慌てて駆け寄る。
「いえ……。なんでも無いです」
目の前の彼女が、倒れているのに……。
彼女の耳には、俺の言葉が、届いているのに。
そんな俺の言葉を聴いて、彼女は、なんて想っただろう。
スカスカと。
ホテルの従業員には、奇妙な俺自身の言動が、一部始終、目に映ったことだろう。
なかなか立ち上がれないアレなはずの彼女を、どうすることも出来ずに立ち尽くす俺自身と、白昼夢の幻想の中にいるかのような俺自身をどうすることも出来ずに、立ち尽くすホテルの従業員。
三者の不完全な認識の均衡を打ち破るように、アレなはずの彼女が、なんとか自力で立ち上がった。
「ふぅ……。ありがと。もう、大丈夫だよ。やっと立ち上がれた」
「良かった……」
「そ、そうですか? 失礼致します……」
よく分からない不完全な三者の会話の遣ヤり取トり。
やはり、ホテルの従業員には、アレなはずの彼女の姿が見えていない様子と分かり、クスクスと笑い出すアレなはずの彼女。
「まだ、気持ち悪いけど、なんか可笑オカし……。完全に君は、変な人扱いされてたよね?」
「う!? だ、だって、仕方ないだろ……?」
まるで、俺の一人演劇を見るかのように、フロントに戻ったホテルの従業員が、遠目で俺自身を見ている。
「あー。なんか、まあ、いろいろあったけど……。決めた!! やっぱ、君に、ついていくよ」
「憑いて行くじゃなくって?」
「は!? なんか、感じワル。そうやって、君は傷つけるんだ?」
「ぐっ! マジ、ごめん。冗談。いや、傷つけるとかじゃなくて」
「ハァー……。だから、モテ無かったんじゃない? やっぱ部屋に帰ろっかな?」
背中の後ろで手を組み、チラリと横目で俺を見るメイド服姿のアレなはずの彼女。
いちいち気に障さわるが、いちいち気にかかる。
そして……。
いちいち「たゆんたゆん」と、揺れるメイド服姿のアレなはずの彼女のアノ部分。
可愛い……。
ドストライク過ぎるアレなはずの彼女の笑顔と、メイド服姿に揺れる彼女の「たゆんたゆん」には、もはや魂さえも抜かれている俺。
しかし……。
彼女自身の身に一体何があり、何があってアノ部屋にいたのか……?
尽きることのない俺自身のアレなはずの彼女への疑問を他所ヨソに、フロントのホテルの従業員が、まだ俺の一人演劇を遠目に見ている。
「朝飯……。喰いに行く? まだ時間あるし」
「うん! 行くぅー!! おっけー!!」
俺へと向き直り、両手の人差し指と親指を眼鏡メガネのように丸く輪っかにして覗きこみ、オッケーサインを俺へと送るアレなはずの彼女。
メイド服姿のアレなはずの彼女の笑顔が、アノ部分とともに「たゆん」と、揺れる。
可愛い……。
それとともに、またしても俺の心の中をよぎる「喰えるのか?」と言う、疑問。
理屈なんて捨てたい。
そんなことは、もうどうでも良いじゃないかとさえ、この際想う。
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