パワード・セブン

絶対に斬れない刃

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第一章

パワード・セブン 第三話

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「しかし、分かりませんね。」
「何がだ?」
隣に座り、勇一の顔を見ながら肩に触れるか触れないかというラインで切られた銀色に煌めく髪を揺らしながら、ルナは独り言を言うようにして勇一に言った。
「いえ。・・・・・・・・・・ただ、我が主マスターが彼女たちとの関係性が良く分からなかったというただです。」
ねぇ。・・・・・・・・・・単なる幼馴染じゃダメか?」
なんですか?」
ルナは勇一の言葉にさらに疑問を言う。それに対して勇一はどう言えばいいのか、一瞬分からなかった。勇一自身としては、自分とどうルナと接してどのような関係性があったのか、ルナに訊きたかったのだが、はぐらかされて終わりだろうなと自己解決したので訊きはしなかった。
「・・・・・・・・小学生の時にな。いじめに遭ってたクラスの子がいて、助けたら知り合った。それが、切っ掛けって言えばいいのかな。それが、たまたま次々起きて友達が増えたってくらいかねぇ。これじゃ、ダメか?」
「・・・・・・・・・・・・・いえ。私もモノでしたので。」
「そうなのか?」
「えぇ。」
そう言うと、ルナはくすりと微笑むように口元を緩めた。そんな彼女の顔を見て、勇一は一瞬脳裏に映像が思い浮かぶ。それを確認する前に、授業のチャイムが鳴り響く。
「今日はこれで授業は終わりですね。」
「あっ?そうか?」
「えぇ。ちなみに言いますが、今日は始業式と単なる説明のみですので、授業という授業はありませんよ?」
「・・・・・・・・・・あぁ~、そういえば、そうだったか。忘れてた。」
「ふふっ。」
勇一の言葉にルナは素直に笑う。その彼女の笑顔を見て、勇一は一瞬固まる。いつも、とは言ってもほんの数時間でしかないが、彼女が普通に見せた笑顔は勇一は素直に可愛いな、と感じた。だが、そう思ったのは一瞬で、すぐに彼女の顔から笑顔が消える。
「勇一くぅ~ん!一緒に帰りませんか~!」
翼が勇一に対して言ったその言葉を切っ掛けに、他の知り合いたちは勇一と共に帰る様に声をかけた。
「おい、帰るぞ、勇一!」
「帰るっすよ、勇一!」
「それじゃ~、帰ろうか、勇一君~!」
元気がいい涼子や空とのどかの声に押されるようにして、勇一のところにやって来た風音と洋子の二人は勇一に静かに言う。
「帰りましょうか、勇。」
「・・・・・・・・・・・・帰りましょう、勇一。」
そんな彼女たちの言葉を恨むように一瞬ではあるが、ルナは睨むように目を細めるが、いつも、というよりかはほんの数時間でしかないが、表情を物静かな表情へと変える。そんな彼女の顔を見て、おや?と勇一は考えるが、すぐに考えることをやめる。
「ああ、帰るか。ルナ、お前はどうする?」
「・・・・・・・・よろしいので?」
ごく自然に、当たり前のことだという様にして、勇一はルナに訊く。だが、ルナはそんなことを疑問を持つようにしてルナは勇一に問う。そのルナの言葉を聞いて勇一は二カッと口元を笑う様に変える。
「当たり前だ。それに、お前は俺の持ち物なんだろ?だったら、いいと思うが?それとも、俺の気のせいだったかな?だったら、断るが。」
「いえ。であれば、同行します。・・・・・・・・・・同行許可ありがとうございます。」
「気にするな。」
勇一はルナに笑いながら言葉を返す。ルナはルナでなぜかは分からないが、勇一以外と関りを持たない様に勇一の方をずっと見て一日を過ごしていた。友達を作らない気でもあるのかと思わせてしまうかのように。であれば、せめて、知り合いでも作らせてやった方が良いかと勇一は考えた。そんな勇一の考えが分かったのか、ルナは勇一の質問に笑顔で応えた。



















「それでっすね、勇一。新しい特撮ヒーローのDVDが出たらしいんっすけど、一緒に見ていくっすか?」
「あぁ、あの『健全戦隊エロゲーマー』ってやつか?他のヒーローが全滅しかけて、怪獣どもに人類が反撃に出るやつだろ?でも俺、あれ全部見たぞ?」
「えぇ!?見たんっすか!?見ちゃったんっすか!?正気っすか!?」
「そりゃ、見るだろ。呼ぼうにもお前、遠くに引っ越したし。」
「そんな~。・・・・・・・・・あっ、ネタバレは結構なんで!!」
「言わねぇよ。」
バカか、と勇一は空に返事する。小さいときに、家に呼んだ時にたまたまやってたのが特撮ヒーローものでドはまりしたらしいが、そのころ泣き虫だったのがこうも変わるかねぇと勇一は軽く頭を掻いていると、今度はのどかがやって来る。
「勇一君、勇一君。DVD借りに行かない?」
「いいけど、何借りるの、お前?」
「『灰色龍と小さな従者』~。」
「えっ。俺、見たから、借りないつもりでいたんだけど。」
「DVD特典に、作者のオーディオコメンタリーが付いてるっぽいんだけど、って言ったら、行く~?」
「って、言ってもな。あれの原作、もう持ってて、後書きのとこで作者が書いてたんだけど。」
「えぇ~。それは残念~。私、原作持ってないんだよね~。」
「マジか。良かったら、貸すぞ?あれ、もう終わって今新作やってるから本屋に置いてないし。」
「ほんと~?」
「ああ。お前が良かったら、の話だが。」
「いいよ、全然いいよ~?」
「そうか、なら明日持ってくるか。」
頼むね~、とのどかはゆらりゆらりと身体を揺らしながら、後ろへと行く。が、のどかが去って行ったのを見計らってか、今度はルナが勇一の隣に来る。
「仲がよろしいですね。」
「ガキからの付き合いだからな。」
ま、短かったけどな、と勇一は継ぎ足しながら言う。
「んじゃ、どっかに飯でも食いに行くか。」
特に考えずに勇一は皆に言った。その言葉に、ルナ以外の全員が反応する気配を勇一には感じられたが、すぐに気まずいような空気が流れる。
「・・・・・・あ~、勇一。鉄也さんいるんだろ?」
「父さんか?どうだったっけな。たしか『少し出てくる』って言ってたと思うけど。」
「なら、もうわね。」
「鉄也さんだしな~。」
「鉄也さんっすもんね。」
「鉄也おじさんだからね~。」
四人の反応を見て、何も知らないルナは気になった様に尋ねる。
「鉄也・・・・・・・さん、とは?」
柳宮鉄也やなぎみやてつやさん。勇一さんのお父さんです。」
「・・・・・・・・・そして、現役の忍者です。」
ルナの質問に翼と洋子は答える。しかし、ルナは今一つ分からなかった様子で、勇一に問う。
「忍者?」
「あ~、うん。そう説明すればいいのか分からないけど、本人曰く忍者らしい。」
「ということはので?」
「俺?まぁ、目指してるっちゃ目指してるって言った方が良いんかな。」
「ハッ、ドッジボールの時に、相手の打球を分身で避けた野郎が良く言うぜ。」
「あと、地面を畳返しの要領でひっくり返してたわね。」
「あったあった。車避けようとして、コンクリートをひっくり返したっけ。よく覚えてるな。」
「コンクリートを・・・・・・ひっくり返す・・・・・・?」
懐かしいな、と言う勇一たちを他所にルナはどこか考え込むように唸る。だが、そんなルナに誰も気が付かない様子で昔話に華を咲かせていた。
「一回、鉄也さんがひっくり返りそうになったトラックを元に戻してたっけ。」
「あったっすね~。そのあと、先生方に怒られてたっすけど。」
「勇はコンクリートをひっくり返して壁にしようと必死だったわね。」
「そのあと、鉄也さんに怒られてたけどな。『私の仕事を増やすな!』だっけか?」
「いや、『やるんだったら、もっと大きく、もっと多くしなければ意味がない。二tの巨体を人間サイズで防いでも意味はない。だろう?』って言われたよ。」
「・・・・・・・・・・・ありましたね。・・・・・・・・・・・・そういえば。」
ハハハ、と笑い合う勇一たちであったが、ルナだけは深く考えた様子であった。そのルナの様子が気になり、勇一はルナに具合を訊く。
「大丈夫か、ルナ?」
「問題はありません。少し・・・・・・・・・えぇ、少し考えていただけですので。」
「それだったら、別にいいんだが。」
本当に、大丈夫かと大丈夫だと言ったルナを勇一は心配に思う。具合を訊いた際に、大丈夫だと答える者の多くは大丈夫ではない場合がよくある。勇一も、鉄也の厳しい修行にダメになりかけたときにもう限界であったにも関わらず、大丈夫だと言って、さらにきついメニューにつき合わされたものだった。あの時に、全てのメニューを終えたときに、『限界だったら、「もう限界だ」と言え。忍びという者であっても弱音くらいは言ってもいいんだ。それを聞いて加減するかは分からんが。』と言った父を一回殴った方が良いのかどうか本気で悩んだりしたものだが。
下駄箱から靴を履き替えて、勇一たちは外へ出る。
「それじゃ、また明日。」
「・・・・・・・・・・・では。」
「また、明日っすよ!」
「じゃあね~。」
「それじゃあ、また明日ね、勇。」
「じゃあな、勇一。」
「ああ、それじゃ、また明日。」
登校ルートが違うからか、勇一と翼たちは登校口で別れる。が、ルナは一人だけ勇一からは離れなかった。
「お前、こっちか?」
「ええ。貴方がこちらに行かれるのでしたら、こちらです。」
「?そ、そうか。」
ルナの言葉に勇一は一瞬、疑問に思った。
そして、数歩歩きだしたときに、背後から勇一たち二人に声がかけられる。
「お~っほっほっほ!お待ちなさい、柳宮勇一!」
そう言う甲高い声に勇一は、あああいつらか、とおおよその予想を立てて振り返る。すると、そこには案の定、だと言える典型的な金持ちを彷彿させるように腰に手を置いて、口元に手を置いて、身体を上に反らすように立っている宮子とその取り巻きその一、その二、その三の四人がいた。
「なんだよ?」
「なんだとはなんですか!?破鋼高校の学校長であり、理事長の娘様であられる宮子様に向かって!」
「いいのですわ、綾子。」
「ですが。」
綾子と呼ばれた取り巻きその一は勇一に向かって、宮子がどの様な人物であるのかを説明しようとしたが、宮子はそれを窘める。
すると、勇一の方を宮子は見る。
「おや、はいらっしゃらないのですね?」
はな。」
「であれば、今が好機ですか。」
「何が言いたい?」
宮子が何を言いたいのか、だいたいは予測がついていたが、あえて勇一は訊く。
「いえね。あの『パワード・セブン』と言ったかしら。あの力を今ならば潰すことが出来ると思いましてね。」
「させません。」
宮子の言葉を聞いてルナは一歩、勇一よりも前に出る。その動作に勇一はしまった、と感じた。だが、そんな二人の様子を気にしないかのように、宮子は話し出す。
「私の下に下りなさい、柳宮勇一。今ならば、処遇を優しくしますわ。」
「いやだね。」
勇一は宮子の言葉を瞬時に拒否した。その勇一の言葉にルナは一瞬、勇一の方を見る。
「理由をお聞かせいただいても?」
「男が女の尻に敷かれるのは、当たり前だからいいが、尻に敷こうとする女の提案はロクなもんじゃないって教えられてるもんでね。悪いが、従うわけじゃいかないな。」
昔、父に教えられた言葉を勇一は宮子に言う。

『人類史の歴史において、男が女の尻に敷かれるのは当たり前となっている。私もいつの間にか敷かれてたのでよく分かる。逆らおうとする時は、男は女に敗ける。その逆はあり得ないと断言しておこう。だが、尻に敷こうとする女はロクな女じゃない。いつの間にか敷かれていたなら分かるが、尻に敷こうとするやつはロクな女房にはならない。絶対に離婚する。ああ、母さんは、違うぞ?母さんは、私が気が付いた時はもうすでに私が敷かれていたからいい女だぞ?だが、尻に敷こうとするやつはロクな女じゃない。そんな奴には関わるな。母さんにあの世で私が叱られるからな。』

母さんには内緒だぞ?と言っていた父の言葉を思い出す。勇一は母との思い出はない。そういう風に感じ取れる時にはもう既にいなかったので、どの様な人と父が結ばれたのか、どの様な女性だったのか、勇一には分からないが、懐かしそうに言う父の顔を見れば、母をどれほど愛していたのか、よく勇一には分かる。・・・・・・・・だいたいのおおよその予測の範囲でしかないが。
だが、目の前にいる宮子は男を自分の尻に敷こうとするの分類であろうと勇一は予測を立てた。そう言った勇一の横顔を見る様にルナは勇一を心配そうな表情で見る。
我が主マイ・マスター・・・・・・・・・。」
「心配するな。お前は違うって。」
「有り難き幸せ。恐悦至極にてございます。」
「上手い皮肉をご馳走様。」
「皮肉・・・・・・・・?さて、どのようなことでありましょう?」
「はぁ・・・・・・・・・・・。お前はいい女になるよ。俺が保証する。」
「であれば、貰って下さるので?」
「予約でもしろって?他のに殺されるから、やめとくよ。ってか、年頃の女の子がそんなこと言わないの。」
「予約も何も、もう貴方のモノですが?」
「冗談がうまいことで。」
ルナとのやり取りで、勇一は困ったもんだ、と軽く頭を掻く。そんな二人に腹を立てたのか、宮子は取り巻きその一、綾子と言ったか?に大きな声で指示を出す。
「えぇい、バカして!綾子、『ハガネイラー』、出動ですわ!」
「しかし、宮子様!『ハガネイラー』の修理はまだ・・・・・・・・・・!」
「黙りなさい!」
「・・・・・・・・・・・っ!!分かりました!ゴー、『ハガネーミヤコ』!!」
「セェェェェェェェェット!『ハガネードリル』!」
「エマージェンシィィィィィィィィィィィ!!『ハガネーライナー』!」
そう、その二とその三が叫んだ次の瞬間、シュ!と素早い音を立てて、その二とその三の二人の姿が消えると同時に、二人がいた場所から、ギュイィィィィィィィィィン!と音を立てて、太いドリルが地中から姿を現す。
「ったく、ド派手な登場だな、おいっ!!」
!!」
ルナが勇一を呼ぶのと同時に、勇一に手を差し伸べる。その伸ばされた細い手を勇一は掴む。すると、ルナの身体は光る粒子になって、その場から消えるのと同時に、勇一の腰に今朝見たベルトが装着される。その様子の勇一たちを他所に、今朝見た大型のステルス機と戦闘機が姿を現すと、宮子と取り巻きその一の姿が光に包まれて、その場から消える。
『行きますわよ!最終合体!!』
『最終合体、ゴー、「ハガネイラー」!』
『チェェェェェェェェェェンジ、「ハガネイラー」!!』
最終合体と呼ぶ宮子の掛け声に合わせて、戦闘機とステルス機、地中から現れたドリルにどこからか飛ぶようにして現れた新幹線が天高く昇った太陽と同じくらいに天高く飛び上がる。
その様子を見て、勇一は右手を前方に伸ばして、左腕を腰部に強くあてがう。
『スタンバイ、レディ。』
「変、身!」
ルナの声に合わせる様に、ベルトの両側のスイッチを素早く同時に押す。
『ビルドアップ。』
勇一が同時に押したことによって、そうルナの声が雄一の耳に届くのと同じくらいのタイミングで小さな旋風が勇一の身を包み込むように巻き起こる。
だが、勇一が変身するのとほぼ同時のタイミングで、空から巨大なロボットが風を撒き散らしながら降下してくる。
『「ハガネイラー」、合体完了!』
『宮子様、まだ「パワード・セブン」の変身が終わっていませんわ!』
『でかしたましたわ、綾子!あとで、褒美を与えます!』
『い、いえ。それは後でしてください。』
『そうですわね、食らいなさい!ドリル!クラッシャー!マグナム!』
宮子の声と共に『ハガネイラー』から勇一たちに向かって回転する拳が撃ち出される。そして、その拳が勇一たちがいた地面をえぐるようにして、『ハガネイラー』の右腕に戻る。
『やったか!?』
『いくら「パワード・セブン」とは言え、無事ではいられまい・・・・・・・。』
『宮子様の言う通りにすればこんな目には合わなかったものを。』
『そこ、私のせいですの?』
そんな四人の声に、おいおいと声が掛かる。そちらに『ハガネイラー』が目を移すと、そこには銀色の鋼に身を包んだ勇一がいた。
「変身途中に攻撃するたぁ、いい度胸じゃねぇか。そうしたヤツがどうなるか、お前ら知らんのか?」
『はい、存じません。』
「いや、お前には言ってない。」
『では、無知な私めにご教授のほどを。』
「だったら、いいか。・・・・・いいか、ルナ。そんなことした連中はな。」
『はい、我が主マイ・マスター。』
『ハガネイラー』に指を差して勇一はルナに聞こえる様に大きな声で言う。
「倒されるって決まってるんだぜっ!」



















『はっ、戯言を!』
「そんじゃ、やってみるか?」
そう言うと、勇一は両腕を左右に思い切り振る。左右の腕に取り付いているアームがそれぞれ大きな刃を現す。
「疾風怒濤ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!大回転魔弾っ!!」
左右とも一本ずつ、計二本の刃を振り回すように勇一は自身の身体をコマの様に回す。だが、それをただで受ける『ハガネイラー』ではなかった。
『甘いですわ!プロテクション・ウォール!』
左腕を自身の前にかざすと、分厚い障壁が『ハガネイラー』の前に現れる。その障壁に勇一の身体は防がれる。
『くっ、頑丈なっ。』
「だったら、殴った方が良いだろっ!!」
ルナの言葉を聞いて勇一は回転を止めて、もう一度、左右の腕を振り、両腕に取り付いている長い刃を折りたたむ。そして、拳を握り締め。
「気合ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、一発ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!パワードォォォォォォ、パァァァァァァァンチィィィィァァァァ!!吹き飛べやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
障壁に拳を叩き込む。
だが、勇一の気合も虚しく拳は障壁に阻まれる。
『おーっほっほっほ!それだけのパワーでは壊せなくてよ!』
勇一の拳を宮子は笑う様に大声を出し、『ハガネイラー』の右腕を勇一に向ける。
『食らいなさい!ドリル!クラッシャー!マグナム!』
キュイィィィィィィィィィン!!と高速で回転する右拳が勇一の身体に向かって撃ち出される。その拳を避ける術を持たない勇一の身体に撃ち出された拳は当たり、勇一は弾き出されてしまう。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
!!』
弾かれた勇一を心配するようにルナは勇一に向けて、彼女と出会ってから聞いたことのない大きな声を出す。その声に勇一は大丈夫だと言ってルナを安心させたかったが、勇一は声を出せずに身体を何回も空中で回して、地面に身体を打ち付ける。
「っぐっ!!ああああああ!!っつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
『動けますか、!?』
地面に身体を叩きつけられ、勇一は自身の身体から地面に当たった衝撃を逃がすために数回転がる。ルナはそんな勇一を気遣う様に勇一に問う。
「ああ!?・・・・・・・・・・ああ、問題ない。修行の時ほど過酷じゃないしな。」
『・・・・・・・・・・ですが、では、耐えられません。』
「心配してくれるのか、ルナ。だったら、心配いられねぇ。俺はの人間の息子じゃないしな。」
『・・・・・・・・、・・・・・・。』
「だったら、心配すんな。ちょっとやそっとじゃ、俺は死なん。」
過去を思い出して言うルナに、勇一はやっぱり昔に出会ってるのか、と思うが、今はそこを問いただしている時間はない。
だが、今の勇一に『ハガネイラー』に立ち向かえる力はないのは事実であった。参ったな、と独りごちていた勇一に背後から声が掛かる。
「あれ、勇一君ではありませんか?」
「・・・・・・・・・・・幻覚・・・・・・・・ではありませんね。・・・・・・・・どうしたので?」
「変身してる・・・・・・・・・ってことは悪っすか!?悪党っすか!?」
「それはどうかと思うな~。」
「そこには私も同意見ね。」
「アタシも同じだ。で、勇一。どうした、こんなとこまでわざわざ。空の言う通り、悪に吹き飛ばされたか?」
勇一の姿を見て、翼たち六人の声が勇一に掛かる。その声を聞いて、勇一は痛む身体を起き上がらせ、翼たちの方を向くと、翼たちに向かって腰を折る。
「すまん!!力を貸してくれ!!俺とルナの二人だけじゃどうにもならん!」
『・・・・・・・・私からもお願いします。』
勇一とルナの頼みに翼たちは一瞬考える様に、交互に見る。
「・・・・・・・・・、どうします?」
「勇一に頼まれたら、断れないっすね!私は行くっすよ!」
「ま、そこは空ちゃんと同意見かな~。力貸すよ、勇一君。」
「はっ、頼まれちまったら断れねぇな。どうせ、破鋼のお嬢だろ?だったら、問題ねぇな!」
「そうね。勇に頼まれたら、断れないわ。私たちでよかったら、貸すわよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・四人が行くなら、断れませんね。・・・・・・・・断れば、後が怖いですから。」
「・・・・・・・、力をお貸ししますよ、勇一君!」
翼たち六人の言葉を聞いて、ガバッと勇一は顔を上げる。
「助かる!」
『助かります。』
勇一とルナの言葉を聞いて、涼子はやれやれといった具合で肩をすくめる。
「アタシらいなくても、大丈夫だの言ってた野郎に言われたくはないがな。」
『はて、いつの話ですかね?』
「てめぇ・・・・・・・・・・・。」
「涼子、今はダメっすよ!」
「そうだよ~。それをぶつけるなら相手が違うよ~。」
怒ろうとした涼子を空とのどかが宥める。
そんなことをしていると、勇一を吹き飛ばした『ハガネイラー』が勇一たちを見つけたように宮子の大きな声が勇一の背後から聞こえる。
『そこにいましたか、「パワード・セブン」!』
「うわっ、見つかったか!」
宮子の声に、勇一は身体を竦める。だが、空はそんな勇一の肩をポンと軽く叩く。
「大丈夫っすよ、勇一。あんな、すぐに倒しますから、安心するっす。」
「いやいや~。空ちゃん、一人で倒せないでしょ~?」
「そうね。空一人じゃ無理ね。」
「そこをどうにかするのが、ヒーローってもんっすよ。」
「勇一、一人でもどうにか出来なかったのに、か?」
「そこは・・・・・・・・・気合とかでどうにかするっす。」
「どうにか、ねぇ~?」
「そう言うなら、涼子一人で出来るんっすか!?」
「あ?できるかよ。」
「そうね。一人だけじゃ、どうにもできないわ。でも。」
風音はそう言って言葉を切ると、勇一の方に身体を向ける。
じゃない。でしょう、勇?」
「その通りだ。」
「一人は皆の為に、皆は一人の為に。」
「確かにな。」
「風音ちゃん、いいこと言うね~。」
「私も言いたかったんすけど。」
「風音ちゃん、博識ですね。」
「・・・・・・・・・・・・単なるオタク。・・・・・・・・しかし、力をというのであれば、話は別です。」
皆の言葉を聞いて、勇一は強く頷く。
「借りるぞ、みんなの力!!」
『お借りします。』
そうルナが言った途端に六人の姿が消えて、勇一のベルトのランプが点灯する。ピンク、黄、オレンジ、緑、青、紫と光が消えていたランプに光が点ると同時に、勇一の身体に力が漲ってくるような感じを勇一は感じた。
の思いを受け継いで、悪を倒せと我が身が叫ぶ!平和を乱す悪は、俺が、いや、が許さん!『パワード・セブン』、ここに、現着!」
『なにが、現着ですか!』
『そうよ、もうとっくにいるではありませんか!』
、お気になさる必要はありませんよ?』
勇一の名乗りを聞いた宮子たちは勇一の言葉に訂正を求めているかのように否定の声を言う。
だが、そんな彼女たちの声から勇一を優しく包むかのようにルナは優しく勇一に声をかける。その言葉は、まるで、勇一の傍にいるかの様に勇一が錯覚してしまうかのように感じられる言葉であった。彼女は耳元のすぐ傍にはいないのにも関わらず、だ。
「ありがとうな、ルナ。」
『いえ。お気になさらず。貴方が進む最善の道を貴方に見せるのが、私の務めですので。』
「だったら、胸に仕舞っておいてくれ。俺の独り言ってことにしてくれ。」
『はい。私の胸の中に仕舞っておきます。』
そう言ったルナの言葉を勇一は聞いて、『ハガネイラー』を指差すと言った。
「さぁ、第二ラウンドと行こうじゃないか。」
















『ならば、先手必勝!ドリル!クラッシャー!マグナム!』
「当たるかっての!」
ギュイィィィィィィィィィィィン!と高速の回る撃ち出される巨大な弾丸を勇一は飛び出すと同時に避ける。
『勇!借りるわよ!』
「構わねぇ!」
勇一はそう言うと、両腕を思い切り振り、先ほどと同様に左右一本ずつ、計二本の大ぶりの刃を左右それぞれに現す。
「疾風怒濤ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!大回転魔弾っ!!」
『ふっ、受けませんわよ!プロテクション・ウォール!』
勇一は大ぶりの刃を振り回すように、身体を高速に回転させる。だが、それを見切ったか『ハガネイラー』は左腕を前方に出すと、分厚い障壁を出現させる。そして、勇一の身体が障壁にぶつかると、それを見た宮子は結果を見ずに、機体の顔を正面から外す。
『勝ちましたわね。』
「誰がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、勝ったって言ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
『宮子様!プロテクション・ウォールが!』
『何ぃぃぃぃぃ!?』
宮子は取り巻きその二の声を聞いて、機体の顔を正面に戻す。すると、パリィィィィィィィィン!と障壁が崩れさり、高速に身体を回転させる勇一がいた。
「よし、一発ぶちかませ、のどか!」
『分かったよ~、勇一君。ちょっと借りるよ?』
回転を止めると勇一は両腕の刃を折りたたむように両腕を左右に勢いよく振ると、ガチィィィィン!と音を立てて、元の形に戻る。そして、右の拳を引き絞る。
『気合ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~、一発ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~!』
「パワードォォォォォォォォォォォォォォォ、パンチィィィィィィィァァァァァァァァ!!吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
のどかの掛け声に合わせる様に、勇一は気合を込めて、引き絞った拳を『ハガネイラー』の顔面に叩き込む。すると、勇一の拳を叩き込まれた『ハガネイラー』は二、三歩後退する。
『やりますわね、「パワード・セブン」!ですが、なにかお忘れではありませんこと!?』
「なにがっ・・・・・・・・・・・!?」
宮子の言葉を聞いて、勇一は一瞬、身体を止める。その時、背後からキュイィィィィィィィィン!!と高速で回転するようなの音が聞こえた。
『バカっ!止めるな、勇一!』
涼子のそう言う声が勇一の耳に聞こえるのと同時に自身がしようとした動きとは異なる動作を身体はとった。
両腕に取り付けてある左右のアームを取り外し、二本のアームを一つの殺戮兵器げいじゅつひんへと姿を変える。
「すまん、涼子!」
『ハッ!気にしねぇな!』
「そうかい!だったら、言うことは一つだけだな!」
『なんだ!?』
「ぶちかませ!」
『ハッ、誰に言ってやがる!』
超電磁砲げいじゅつひんのトリガーを引き絞ると、何十万ボルトの電圧と電流が放たれるのが銃器越しに伝わるのが分かる。放たれた直径数ミリの丸い鋼鉄のピンボールは音速を超える速度で、『パワード・セブン』に向かってくる『ハガネイラー』の拳に小さな穴を開けて、拳より向こうの空の彼方へと飛んでいき、穴が空いた拳は高速に回転をしながら、爆発する。
その結果を見ずに、『パワード・セブン』は超電磁砲を分解し、元のアームの形へと戻し、両腕に取り付ける。
「これで、勝負はついたとは思うんだが?」
『まだ・・・・・・・・・・っ!まだ、負けたわけでは・・・・・・・・っ!』
「・・・・・・・・・・そうかい。」
そう残念そうに言う勇一に『ハガネイラー』は膝のドリルを勇一に向ける。
『その通り!まだ終わってなぁぁぁぁぁぁい!!』
ブォォォォォォォォォォォォォ!と背中のブースターを噴射して、飛び上がる『ハガネイラー』であったが、当たるより早くに勇一は更に身体を上昇させる。
『しぶといっすね!』
「ああ!・・・・・・・だったら、空!!?」
『特撮オタクを嘗めないでほしいっす!!』
先程の『ハガネイラー』が上昇した様に天高く浮かび上がると、身体の上昇を止め、勇一は身体をくるりと宙返りさせて反転させる。
『パワードォォォォォォォォォォォォォォォォ、キックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
「一文字突きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
勇一たち、『パワード・セブン』は先程放った超電磁砲に負けぬ速度で『ハガネイラー』に蹴りを突き刺す勢いで降下する。
『防ぎますわ!プロテクション・ウォール!!』
『パワード・セブン』の技を見切って、『ハガネイラー』は左腕を前方に突き出して、前方に障壁を出現させる。そして、『パワード・セブン』の蹴りが障壁に当たり、一時的に空中で停止すると、宮子たちは、フッと笑う。だが、次の瞬間、障壁が砕かれ、『ハガネイラー』の鋼鉄の身体を『パワード・セブン』が貫き通して、『ハガネイラー』の背後に着地する。
着地するのと同時に、変身する時にとったポーズと同じく、右腕を左前に左腕を左わき腹にそれぞれ構えると、ゆっくりと、右腕を左から右へ移動させていく。
『爆圧!』
「完了!」
そう言った瞬間に、『ハガネイラー』の身体が爆散する。


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