パワード・セブン

絶対に斬れない刃

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第一章

パワード・セブン 第二話

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「それで、お前は何してるんだ?」
「ただ、見ている。それだけです。」
、ねぇ・・・・・・・・・?」
朝の騒ぎから少し間をおいてから行われた始業式の後、勇一は教室の自分の席に座っているのだが、なぜか、担任の教師の言うことを聞かないで、勇一の方を見ているルナに勇一は訊いてはみたのだが、まぁ、だいたいは勇一の予想通りの感想が返って来たので、気にした方が良いのかどうか分からなくなってきた。勇一たち二人を気にしたように後ろを振り返る感じで見ていている、翼と空、涼子の三人の視線に後でどう言ったモノかな、と勇一は悩んでいた。
勇一の席は後ろの廊下にほど近い席であり、柳宮という名前の後ろになる苗字はなかったらしく、一番後ろの席を独占気味で座りたかったのだが、その勇一の隣に短めの銀色の髪をしている少女、星川ほしかわ=スターライト=ルナの碧い瞳にしばらく見られる形となって独りでのんびり出来ないのか~とか思ったりしている勇一であった。ちなみに、一番前の窓側の席を翼と洋子の二人に、その隣に空がいて、ルナの列の前にのどかがいるという状況であった。涼子はルナの席の列にいて、風音は一番後列の窓側にいる形になっている。
風音と洋子の二人は時々気になるという感じで時々勇一たちの方を見ているが、のどかは自分は関係ないという様にほぼ一人の世界にいるような感じだ。厳密には、授業が始まる数分前から寝ていたのだが。
なんでこうなったのか、と勇一は気にはなっていた。
だが、ルナという少女は勇一との関係性を何一言も発しない。いや、一応ヒントはくれてはいた。ただ、をヒントと言っていいのかどうか悩ましいものだというのは事実だが。
『貴方がそう言うのであれば、会ってはいないでしょう。』
そう言った彼女の顔はどこか残念な思いがあった様に勇一には思えてならない。一応、翼たちとの面識はないとは言ってはいたので恐らくは小学生の時には会ってはいないのであろう。そうなると、中学生時代に出会っている可能性があるのだが、勇一の記憶にはあまりなかった。ということは、印象にはあまり残ってはいないのだろうが、ルナの様な外見をしていれば、憶えてはいるとの自信があった。だが、どうしたものか勇一は憶えてはいない。故に、彼女がどうして勇一のことを動作の一つ一つを頭に忘れるのかという様に勇一の方を見ている理由が勇一にはほとんど分からなかった。
「あーっと。で、ですね。皆さん、入学おめでとうございます。」
黒板の方から女性の声が勇一の耳に届く。ルナからの視線を無視する形で、勇一は前の教壇の方を見る。・・・・・・・それでも、ルナは気にするものかという具合で、勇一を見ていたが。
「私はこの教室の担任の佐藤友梨佳さとうゆりかと言います。えっと、一年間の短い間になりますがよろしくお願いしますね?」
「お~っほっほっほ!この教室は、私、破鋼宮子はがねみやこの支配に置きますわ!私に従わない者は、破鋼の名において排除しますわ!覚悟なさい!」
「宮子様ぁ~!!」
「宮子様~!!」
「MIYAKO、宮子!イッェ~イ!」
朝の件をすっかりと忘れているのか、の宮子とその取り巻きたちは担任の自己紹介の後に勝手にこの教室を支配するなどと勝手を言っている。この破鋼高等学校はがねこうとうがっこうと同じ苗字ということは、学園長だかの娘さんとかなのかなぁと勇一は呑気に考えていたのだが、そんなことを考えていた勇一に声が掛かる。
「えっと、柳宮勇一やなぎみやゆういちくんはいますか?」
「・・・・・・あっはい。ここにいます。」
「あとで、話せますね?」
「えっ?えぇ。」
今朝のこと以外に特に覚えがなかった勇一は友梨佳とは話す要件など特にないはずだよな?と考えていた。












「柳宮くん。君は・・・・・・・・・柳宮鉄也やなぎみやてつや一等陸佐の息子さんってことで合ってるかな?」
「・・・・・・・・・・・っ!・・・・・・・父を知っているんですか?」
関係はないだろうな、と思いつつも勇一は友梨佳に訊かずにはいられなった。父、鉄也を知っている人間は限られてくるはずだとも思える一方、目の前にいる女性を敵と見るかどう見るか勇一は悩んだ。だが、彼女はそんな勇一の心情が理解できたのか、にこやかに笑いながら、否定するように片手を振った。
「知ってるには知っているけど、そんな目で見ないでよ。少なくとも、一佐とは顔見知りだし、敵ではないよ。」
「それじゃ・・・・・・・・・なんですか?」
。」
一瞬出た名前に勇一は反応できなかった。友梨佳はニヤッと軽く笑う。
「自衛隊のとして、試作されたパワード・ユニット。一人での使用は危険性が伴うとか言われて研究が頓挫したの制御ユニットがうちのクラスにいるとなったら、どうなるだろうねぇ・・・・・・?」
「脅迫ですか?」
「逆だよ、逆。自分のクラスの生徒を売るような真似するわけないじゃないか。それに、柳宮一佐の御子息を政府に売るでもしたら、その時が怖いからね。」
はっはっは、と笑う友梨佳の話の意図が分からずに勇一は友梨佳の顔を見る。
「私のクラスにいる間は一佐の指示で情報操作とかで攪乱はしておく。ま、バレたらバレたで、偽の情報で惑わしとくけどね。」
「ってことは。」
「困ったことがあったら、私に言ってね、ってこと。一佐ほどじゃないけどは出来るから。・・・・・・・・・自慢もあんまりしていいか分からないけどね。」
「ありがとうございます。」
勇一は友梨佳に素直に頭を下げる。鉄也ほどではないとは言えども、情報操作ができるレベルと自分で言うとはそれ相当の実力を持っていることと同じである。そして、勇一はそういったことは出来ない。感謝してもしきれないと勇一には思えた。
「それに早速甘えるってことになるんでしょうが。」
「ん?なに?なに訊きたいの?・・・・・・・あっ、テストの範囲とスリーサイズ、好みのタイプは答えないよ?」
「いや、違うんですが。」
「えっ、なに、違うの?・・・・・・・・なんだ、がっかり。」
勇一の否定の言葉に友梨佳は項垂れる様子を見せる。勇一は教師がそんなんでいいのか、と一瞬思ってしまったが、友梨佳の口元が笑っているように見えたので、心配しなくてもいいかと思い直した。
「えっと、ですね。隣の席の・・・・・・・。」
「星川さん?スリーサイズ?教えないよ?」
「いや、違うんですが。」
「違うの?」
「えぇ。以前、会った様な感じで話して来るんですが、何時会ったのか、分からなくて。」
「それを調べてくれって?なに、惚れっちゃった?」
「逆です、逆。多分ですが。」
「君と彼女が何時どこで会ったのか分からないけど、彼女、元は海外で生活してたみたいだよ?今はどうか分からないけど。その証拠に、星川って日本の姓、名乗ってるじゃん?」
「えっ、そうなんですか?」
「たぶん、中学生らへんでなんかあったんだろうね。・・・・・・・・・・で?」
友梨佳の言葉を脳内で考えていると、友梨佳は勇一に訊いてくる。
「えっ?」
「だから、調べるの?って言ってるの。一佐に訊いたらすぐに分かりそうだけど、今、一佐いないからなぁ~。ま、困ったことがあったらって言ったの私だし、言っちゃった責任くらいは取ろうかね。やらなかったらやらなかったで一佐に何言われるか分からないし。」
「あ~、面倒くさかったりします?」
「面倒は面倒だけど、若者が心配しちゃいけないよ?生徒の疑問の解決に担任が努力するってのが、学校ってとこだからね。無問題モーマンタイ無問題モーマンタイ。」
友梨佳は軽く笑いながら、勇一にそう言った。勇一は彼女に対して感謝をしていた。そんなことを話していると次の授業の開始を促すチャイムが鳴り響く。
「話すのは問題ないだろうけど、授業さぼるのは問題ありだからね。さっ、授業、授業。」
そう言って、友梨佳は勇一の背を軽く押すようにして、勇一たち二人は教室へと戻った。が、その時。
パァン。
なにかを叩く様な音と頬を押さえる様に立っている銀髪の少女と、今ではのお嬢様な格好をしていて振り払ったように立つ宮子の二人がいた。











「勇一君・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・大丈夫。・・・・・・・・・勇一は。」
「でも・・・・・・・・・。」
翼は後ろの席の洋子の言葉に、後ろを向きながら答える。洋子の言う通り、心配はいらないとは思うのだが、それでも心配してしまう。なぜか。なぜだろう。子供の時から持っていた感情だから、翼には特に何も感じられない。特別な感情ではない様に思えるのだが、それでも気にはなってしまう。
そんなことを思っていると、誰かが近づいてくる気配がした。
「葵さん。よろしくて?」
「えっ?えぇ。」
顔を上げると、そこにいたのは先程、を言っていた、確か破鋼宮子はがねみやこと言ったであろうか。授業前にも難癖を言ってきたとは思うが、何か用なのであろうか?
「さきほどの。私にくださらない?」
・・・・・・・・?」
あれとは、何のことであろうか?先程ということは、今朝の騒動なのであろうが、あの時に翼が持っていたものは何もない。それでは、いったい・・・・・・・?と翼が考えていると、宮子は翼が返事をしないことに腹を立てたのか、声を荒げて翼に言う。
「とぼけるのもよしてくださらない?と言ったら、しかないでしょう?」
「・・・・・・・・・と言われても、何のことだか。」
「えぇぇい!と言われれば一つしかないでしょう!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・それは無理。」
何のことか分からない翼は首を傾げるのだが、その行動に腹を立てたのか宮子は大丈夫だとさらに声を荒げる。その様子を見ていた洋子が耐えに見たのかぼそりと宮子に言った。
「あら、それはなぜかしら?」
「・・・・・・・・・・・勇一と私たちはじゃない。・・・・・・・・それに、言う相手が違う。・・・・・・・・・担当者に言って。」
洋子はそう言うと、先ほど勇一がいた廊下側の席を指差す。まぁ、指を差したところで、勇一は担当である友梨佳に連れて行かれたからいないのだが。その勇一の隣の席にいる銀の髪をしているルナというらしい少女しかいないのだが、彼女のことを言っているのだろうか。
「星川さん・・・・・・・・・・・。そうですか、彼女に言えばいいのですね?」
「・・・・・・・・・・・肯定。」
「洋子ちゃん。」
「・・・・・・・・・・・・心配はしなくても大丈夫。・・・・・・・・たぶん。」
洋子は翼を安心させるように言うが、洋子も自信がないように言葉を継げ足す。その足された言葉が、余計に翼を不安にさせるのだが、それを洋子は分かって言ったのであろうか。
そんな二人の様子を気にしない様にづかづかと宮子は歩いていく。
その宮子のルートを防ぐように、涼子は席を立つと、宮子の進路をふさぐ。
「あら、柊さん。・・・・・・・・なにか?」
「・・・・・・・・・・さてな?ただ立ちたかっただけかもしれねぇな?」
「私の邪魔をしますの?」
「ハッ。どうだかねぇ?誰にも分からねぇだろうが。」
悪い悪い、と片手を振りながら、涼子は宮子に道を譲るとそのまま翼たち二人の方へ向かって来る。
「さっきのなんです?」
「・・・・・・・・・・何がしたかったので?」
「あ?ああ。単なる、のつもりだったんだが。・・・・・・・大した度胸だよ、ったく。」
そう言って、ペッと涼子は床に唾を吐く。そんなことをしていると宮子はルナの席までたどり着く。
「星川さん。」
「・・・・・・・・・・なにか?」
「今、よろしくて?」
「私は良くない。」
「そんなにお時間は取らせなくてよ?」
「私にとっては今の時間が貴重。」
「では、単刀直入に訊きますが。今朝のの件で少し訊きたいのだけれど。」
「今朝?」
「えぇ。今朝の私の『ハガネイラー』を打ち破った、ですわ。」
「『パワード・セブン』?」
「えぇ。それですわ。その『パワード・セブン』、私にくださらない?」
は無理。貴女には扱えない。」
「なんですのっ、その言い草は!?」
ルナは冷たく宮子を突き放す言い方をする。だが、宮子は拒絶されているのにも関わらずに、ルナに食い下がる。
「無理なものは無理。何より貴女は改造手術をしていない。」
がなんですか!!」
パァンと宮子はルナの頬を叩く。
「・・・・・・・ワァォ。やっちまったな。」
先程外に出た勇一は友梨佳と共に教室に戻ってきていたが、ちょうどタイミングが悪かったらしい。その証拠に、友梨佳は説明を求める様に、周囲を見渡す。
「えっと、誰か説明頼めるかな?」
「あ~っと。なんだか知らんが、破鋼が星川に怒ったらしくてな。・・・・・・・なんでか知らんけど。」
そう言った涼子の言葉に何かを理解できたのか勇一は涼子の方を睨みつける。
「涼子っ・・・・・・・!お前っ、止めなかったのかよ・・・・・・・・!」
「おいおい、勇一。勘違いすのもいいが、アタシはちゃんと止めはしたぜ。はな。」
「けっ、何言ってやがる・・・・・・・!」
そう言うと、何かが分かったのか、朝から机に顔を埋める様にして寝ていたのどかが顔を上げていたことにのどかの方を見て冷や汗をかいた様子で引き攣った顔でのどかを勇一は見る。
「あ~・・・・・・・・・・・・・・・、おはよう、のどか。」
「あ~、うん。おはよう、勇一君。あのさ~ちょいと訊いてもいい~?」
「な、なんだ?」
「なんかさ~、誰かを誰かが叩いた~?それっぽい音がしたんだけどさ~。」
気のせいかな~?と呑気にのどかは頭を軽く掻いて背伸びをする。その様子に、どこか怒った様子の宮子は声を荒げて、のどかに言った。
十九野とくのさん!!なぜ、朝から寝れますの!?」
「え~、なんでって訊かれてもね~。分からないかな~。」
宮子に訊かれて素直にのどかは答えて、後ろを振り返る。のどかが振り返った瞬間、勇一はあっこれやっちまったな、と少し後悔の念に駆られた。
「一応、訊くんだけどさ~。星川さんの頬とか叩いたりした~?」
「そ、それが?」
「訊いてるのは私なんだけどな~?」
ゆらりとのどかは立ち上がりながら、そう繰り返し宮子に訊く。心の中で、否定しろ、否定しろ、と勇一は強く願っていたが、勇一の願いも虚しく宮子はのどかに答えてしまう。
「えぇ、そうですけど。」
「そっか~。そうだよね~。そうじゃないと、おかしいよね~。」
ゆらりゆらりと身体を左右に揺らしながら、宮子の方へと歩もうとするのどかはどこか恐怖を思わせる、そんな歩き方だった。その様子ののどかの進路を塞ぐように勇一は歩いていく。
「柳宮君っ・・・・・・・・・・・・・。」
「なんとかします。・・・・・・・・・なんとかですが。」
なんとかって何よ?と訊こうとした友梨佳を他所に勇一はのどかの進路を塞ぐ。
「勇一君、邪魔だよ~?」
「いや。のどか、お前の方こそ止まれ。」
「手を出したのは、向こうだよ~?」
「そうだろうが、はまずい。やめとけ。」
「でもさ~。」
でも、だ。はやめとけ。なっ?」
「う~ん。そうは言ってもね~。」
「・・・・・・・・・・・ったく、言うこと聞いてくれよ。」
勇一はそう言うと、のどかの身体を抱き締める。
「うぅん、う~ん、恥ずかしいよぉ~。」
「・・・・・・・落ち着いたか?」
「落ち着いた、落ち着いたよぉ~。」
「・・・・・・・・・・・・・なら、戻れるか?」
「うん、うん。戻れる、戻れるから~。」
「・・・・・・・・・・・そうか。だったら、よかった。」
勇一の取った行動に頬を染めながら、のどかは勇一の身体から離れようとする。勇一はのどかに何度も確認を取りながら、ゆっくりとのどかから身体を離すと、宮子の方へと顔を向ける。
「それで?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ?」
「ごめんなさいは?」
「・・・・・・・・・・・なぜ、私がっ!?」
「今、のどかはあんたがルナに取った行動をしようとしたんだ。んで、を俺が止めた。・・・・・・・・・分かるか?」
「わ、分かりません。」
「・・・・・・・・ハァ。だろうな。あんたには分からねぇだろうな。ま、俺にもあんたがルナを叩く理由は分からんがな。」
それでも、と勇一は一旦言葉を区切る。
「のどかがあんたに対して、怒ったのは確かだ。だから、謝れって言ってるんだ。ルナとのどかに。」
「あ~、私はいいよ~。」
「・・・・・・・・・・・・ってのどかは言ってるから、ルナだけでもいいぞ。」
「だから、なぜ私が謝らねばいけないのですかっ!?」
「分かんねぇか?・・・・・・・・・って言っても分からんわな。分かりやすく言うと、のどかはな。自分に対しての怒りとかには見ての通り鈍感だが、他人に向けられたモノには敏感っていう体質でな。・・・・・・・・・まだ、数分しか経ってなくとも、と言える奴だったら余計に、な。」
だから謝れ、と勇一はもう一度宮子に対して言った。
「悪いが、もう一回やってみろ。今度は止めないぞ。」
「止め・・・・・・・・・・・ないんですの?」
「ハッ、一回忠告したのにもう一回やるバカには身体で覚えるのがいいだろ。・・・・・・・・忠告はしたぜ?」
そう言うと、勇一は宮子たちから視線を外す。
「のどか。次はやってもいいぞ。」
「いいの?」
「ああ。でも、加減はしろよ?」
「自信ないよ?」
「・・・・・・・・・・・そこは頼むぜ。」
小さな声でのどかと話す勇一であったが、のどかが自信なさげに言う言葉においおい、と思いつつ、勇一は頭を軽く掻いた。そうしていると、ようやく、意を決したのか宮子はぼそぼそと小さな声でルナに謝罪の言葉を言い始めた。
「えっと、星川さん。その・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。」
「いえ。経緯はどうであれ、私が悪いと思うので、こちらこそと言わせてください。」
二人のやり取りを見てやれやれと勇一は一息つく。



















その一方で。
太平洋の大空。
その大空に数機の戦闘機が一機の戦闘機を追っていた。
「『聞こえるか。貴公の機体は日本の機体ではなくの機体である可能性がある。速やかに、降下し、受け渡されたい。繰り返す。』」
「・・・・・・・・今頃、言うか。ふん、展開が早いで有名な米軍の実力のたかが知れるな。」
「『何・・・・・・・・?』」
「一応言おうか。貴殿の話されてる言葉が理解が出来んので、日本語で話せ。繰り返す。クソ食らえ。日本語で話せ。」
「『・・・・・・・・了解した。』」
ふっ、これだから米軍は、と独り言をつぶやいて柳宮鉄也やなぎみやてつやF-35ライトニングⅡのフットペダルを踏んで更に加速する。
「『速度を落とせ!!』」
「日本語で言ってくれ。英語は分からない。」
先程から聞こえる英語に対して、鉄也は日本語で返答する。・・・・・・・・まぁ、英語で話せと言われれば話せなくもないのだが、何を言っているのか分かってる上でわざと日本語を使うという嫌がらせでもなんでもないことを平然と行ってる時点で鉄也は米軍には友好的ではないと言える。
鉄也はゆっくりとした動作で後ろを見る。背後には米軍のF-35ライトニングⅡが鉄也の機体の背後についたのが、見える。

そう鉄也が思ったときには、すでに敵機にロックオンされたことを操縦者に知らせるアラートが鉄也の耳に響く。ニヤリと鉄也が頬を緩めた次の瞬間には、鉄也のF-35ライトニングⅡは背後から放たれたミサイルによってスクラップになり四散した。
「『・・・・・・・・・ったく、最後まで話さなかったぜ。』」
海に落ちていくF-35ライトニングⅡの残骸を見ながらパイロットは独り言を言う。
「『どうした?』」
「『。』」
「『やれやれ。また予算についての文句が司令官の口から出るぞ。』」
「『そうかい。』」
戦闘機に一体いくらかかると思ってんだ、と言う通信兵の文句を聞き流しながら、パイロットは思う。先ほどのパイロット、ロックされたのが分かっていたのにも関わらず、なぜ回避運動をしなかった?
もしかすると。
「『?』」
「『・・・・・・・・・・・・っ!?』」
突然聞こえた言葉にパイロットはガバッと顔を上げる。そして、驚愕した。
高度2600メートル。
そんな高度で耐寒装備を付けないで人が生きていられるはずもない。ましてや音速に近い速度が出てる機体にへばりつくなど、尋常ではない。だが、目の前には機体のGに耐えるための耐Gスーツやパイロットスーツといったものを装備しないで普段の生活で着る厚手のコートを羽織り、よくは分からないが長いマフラーを首に数回程度巻いただけという訳の分からないロックンロールの様な頭のいかれたキチガイ染みた格好をしている忍者っぽい恰好をした頭がいかれたやつロックンローラーがいた。
「『お前、何をしている・・・・・・・・・!?』」
「『速度は出すのは構わないが、中に入れてはくれないか?外は寒くてな。』」
「『当たり前だ!!』」
忍者っぽい恰好をした頭のいかれたやつロックンローラーは機体から振り解くようにパイロットは機体を回すが、彼は機体から全く落ちずに、何も影響を受けないという様に、微動だにしなかった。
「『クソッ・・・・・・・!!落ちろっ、落ちやがれっ・・・・・・・・・・!!』」
「『今の季節は夏ではなく春だぞ?涼しいには涼しいというより寒いんだが。なぁ、?』」
「『・・・・・・・・っ!!誰がっ・・・・・・!!』」
「『そうか。は残念だ。』」
忍者っぽい恰好をした頭のいかれたやつロックンローラーはパイロットにそう言った瞬間、パイロットの身体は、外に出ていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ?
そう言葉を発することもなく、パイロットの身体は重力に引かれて、海上へと落下する。落下することに気が付いたパイロットは自身の身体に付いている落下傘を開くために、パイロットスーツからピンを抜く。その様子を鉄也はパイロットからF-35ライトニングⅡのコックピットの窓から見ていた。
「全く。判断が遅いな。」
これで米軍は大丈夫なのか?と思いながら、鉄也は機首を日本へと向けて機体を飛ばした。
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