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バケモノ殺人
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ここ数年。全国各地でバケモノの仕業とされる殺人事件が世間を賑わせている。
どの事件も被害者はグシャグシャに潰され、衣服など遺留品も現場には何一つ残されておらず、例外なく被害者の身元は不明。とても人間業とは思えない現場の惨状と、現場付近でのバケモノ目撃情報が数件報告されていることから、これらの事件はバケモノの仕業とされ、世間で『バケモノ殺人』と呼ばれるようになった。
全国各地で目撃されるバケモノの、
ゴリラのように毛むくじゃら。毛の色は緑。目は赤く光っている。
という特徴が一致していることから、全てのバケモノ殺人はそのバケモノの仕業とされている。SNSなどでそのバケモノとされる姿が拡散されてはいるが、真偽のほどは不明であり、そのバケモノは未だ捕獲されていない…
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「おい!早く起きろ!今日は学校行くんだろ」
という、ババアの声で目を覚ました。朝からやかましい。
「今起きるよ。うっせーな」
頭がガンガンする、昨日は夜遅くまで仲間達とラリって、そういえば酒も飲んだかもしれない。イマイチ記憶が曖昧だが、いつもと変わらぬ不快な朝だ。
高校なんてものに行く気はなかったが、ババア、つまり母親が「高校くらいは出ておけ!」とうるさいから、自分の名前を書けたら入試に通るような地元で一番の底辺高校へ通っているというわけだ。やはり、底辺学校には底辺の連中が集まる。おれはすぐに他のどうしようもない奴らと仲良くなり、本格的な悪党の道を進み出した。
強姦、恐喝、窃盗、傷害など。おそらく殺人以外の犯罪は一通りやっているはずだ。まだシャバにいることが奇跡に近い。部活やバイトなんてもちろんしない。金がなくなれば、オヤジかカップルを狩る。金はオヤジの方が持っているが、カップルを狩る場合は女も楽しめるので、こちらも捨てがたい。
そんな感じでいつ捕まってもおかしくない毎日を送っていた。そんなオレの母親がこのババアだ。オレがまだ小さかった頃にババアと父親は離婚したらしいので、父親は知らない。ババアは離婚してからオレを育てるために水商売で生計を立てており、ここ最近は知り合いがやっているスナックに勤めているはずだ。
ババアはなんとかオレにまともな人間になってほしいと願っていたようで、昔はことあるごとに色々口やかましく言ってきたが、最近は諦めたのか何も言わなくなってきた。まあ、こちらとしては好都合だ。
ゴミだめのような自分の部屋を出て、ボサボサの頭をかきむしりながらリビングへ行く。ババアがまだ酒の匂いをプンプンさせながら水を飲んでいた。
「詳しい状況はまだわかっていないのですが、バケモノ殺人と考えて間違いなさそうです。例のごとく、遺体は潰され、遺留品はなし。被害者の身元は不明ですが若い女性とみられており…」
「これ、バケモノ殺人かよ」
テレビから流れるニュースはバケモノ殺人を報じていた。しかも、現場はウチのすぐ近くだった。
「そうみたいだね。ウチのすぐ近所にいるのかねぇ。やられたの、多分、高校生くらいの若い女の子だろうってさ。バケモノもこんな女の子殺さずにさ、あんたみたいに、いても仕方がないやつ殺せばちったぁ世の中のためになるのにねぇ」
「うっせーよ。ババアがよ。バケモノなんか返り討ちにしてやるよ」
ババアの飲んでいる水をかっさらうように飲み干し、空になったコップをドンとババアの目の前に叩きつけた。
「あー、そうそう。私、しばらく朝帰りが続くかも。お店忙しくってね」
商売柄、ババアの朝帰りは珍しくなかったが、何日も続いたことはなかったと思う。まあ大方、言い寄られでもした客のおっさんとよろしくやるのだろう。オレにとっちゃどーでもいい話だ。
「もう、一生帰ってこなくてもいーぞ」
そう吐き捨て、適当に身支度をしてからペシャンコのカバンを持って家を出た。
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学校に着くともちろん教室にはいかず、校舎裏の溜まり場へ直行する。昨日、仲間の何人かがオヤジを狩り、かなり稼いだらしく、そのおこぼれをもらえることになっていた。逆の場合はオレが仲間に振る舞うこともある。持ちつ持たれつだ。
「おう、おつかれ!」
仲間の一人がオレの顔を見るなり、そう言って札束をひらひら見せながら笑ってきた。
「昨日のオヤジ50万も持ってやがってよ。この時代にそんな現金持ち歩くなんて、バカなオヤジだぜ」
まあ、その通りかもしれない。この辺りは俺たちのようなどうしようもない悪党が多いのだ。用心するに越したことはない。
「で、いくらくれるんだ?」
「10万やるよ。お前にはこの前、いい思いをさせてもらったからな」
つい最近、オヤジを狩った金でこいつに風俗を奢ってやったのだが、そこのサービスが極上だったようだ。やはり、恩は売っておくものだ。
「じゃ、遠慮なく」
差し出された金を無造作にカバンに入れた。
「あ!悪い!それ、50万全部だわ。40万返してくれ」
渡された瞬間にそれが全額の50万であることは気づいていたが、バカなこいつはそれに気づかないかと思ったが、さすがにそういうわけにいかないらしい。オレはカバンから金を取り出し、金を数えようとしたのだが、札が冷たい。
「それ、濡れてないか」
その通りだった。しかも、ただ濡れているのではないらしい。
「それ、血じゃないのか?」
札は赤く濡れていた。オレはびっくりして、カバンの中を確認してみた。すると、カバンの中が血で染まっていた。
「なんだよ。これ」
普段カバンの中など確認しないからわからなかったが、それは明らかに血だった。そして、よく確認すると、何か布のようなものも入っていたので、手にとってみた。
「これ、スカーフか」
オレの手にあるのは、女子の制服によくあるスカーフだった。そして、手に取った赤いスカーフが、血で赤黒く染まっていた。
「お前、女でも犯してきたのかよ。それ、犯した女の男の血だろ。悪いやつだなぁ」
これまでの行動を考えると、そいつの言うことはもっともで、そう考えれば合点がいく。ただ、昨日はラリって酒飲んで寝たはずだ。いくら何でも、無意識のうちにそんな大仕事をしてるとは思えない。
「さすがっすね!先輩!」
その場にいた後輩が目をキラキラさせて言った。
「覚えてないんだ…」
何度思い出そうとしても、思い出せなかった。
「センパイ、喧嘩でも意識ないまま相手KOしたことあるじゃないすか!それと一緒すよ。意識ないまま女犯して男半殺しにしたんすよ。凄いっす!神っす!」
確かに、喧嘩などで所々意識が飛ぶときはある。気づけば相手が倒れていたこともある。でも、喧嘩をしたこと自体を忘れたことはない。もちろん、女を犯したことも忘れたことなどない。
「何もしていない…」
神っす!神っす!と騒ぐ後輩を前に、ふと朝のニュースを思い出した。
「バケモノ殺人…」
ババアの話では、確か被害者は高校生の女だったとか。そんなことを言っていた気がする。オレは血で少し重たくなったスカーフをまじまじと見つめた。
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血で染まったスカーフを見つけてから数日が経っていた。さすがにカバンから血染めのスカーフが出てきたので少しの間は薬も酒もやらなかったが、いつもと変わない日常が続いた。警察が家にくることもなかった。いつもと違うことと言えば、ババアが夜に帰ってくることがなくなったくらいだった。
スカーフに関しては誰かのいたずらか何かと思い込むようにしているうちに、あまり気にならなくなっていた。そして、ラリって、飲んで、狩るといういつもの日常に戻っていった。
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「起きろ!おい!起きろこのバカ!!」
頭がガンガンする。飲み過ぎのせいもあるだろうが、久しぶりにババアの声を聞いたからに違いなかった。時計をみる。夜中の2時だった。
「なんつー時間に帰ってきてんだよ。てか、一生帰ってくるなって…なんだよこれ!」
ババアに引きづられるようにしてリビングへ行くと、そこはめちゃくちゃにされていた。食器類、テレビ、テーブル、椅子、全てがめちゃくちゃに壊され、足の踏場に困るほどだった。
「あんた、何トチ狂ってんのよ!」
「オレじゃねーよ!帰って寝てただけだよ!だれかが入ってきてやったんじゃねーのかよ」
本当に、帰って寝てただけだ。こんなこと、無意識のうちにできるわけがない。
「あんたしかいないんだよ。ここ団地の5階だよ!私帰ってきたとき玄関にちゃんと鍵かかってた!玄関以外から入ろうと思ったら、壁登ってきて窓割るしかない。壁登るなんてできないし、窓も割れてない!あんた、何やってんだよ!」
確かにババアの言う通りだ。状況的に考えて、オレが暴れたとしか考えられない。そして、ババアがさらに驚くものを見つけた。
「これ、毛?」
ババアが手に取ったものは毛だった。電気に照らすと、それは緑がかって見えた。よくみると、あちこちに緑の毛が落ちていた。
「バケモノ…」
口から出ていた。ババアも、同じことを思っていたらしい。
「これ…バケモノじゃねーのか…」
「あんた…ほんとうに何も見てないの?」
スカーフの時と同じだ。何も知らないし、まったく覚えていない。
「覚えてねーよ…」
声が少し震えていた。
「わかった。とりあえず、今日はもう寝な。警察に連絡するかどうかは、少し考えるから」
ババアに言われ部屋に戻ったが、こんな状態で眠れる訳がない。
すぐに警察にきてもらった方がいいのではないのか。少しはスッキリするかもしれない。でも、ババアはそうしなかった。
『少し考える』
そう言った。ババアが警察へ連絡するのを躊躇う理由。頭が混乱していてうまく考えがまとまらないが、どう考えても躊躇う理由は一つしかないように思えた。つまり、バケモノ事件に自分の息子が関与しているかもしれないという疑惑だ。
さっきのババアの顔を思い出してみる…
どうやら、ババアがそう疑っているのは間違いなさそうだった。
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その日以来、眠るのが怖くなった。
寝たらまた身に覚えのないことが身の回りで起きるのではないか…
血染めのスカーフだったり、家を荒らされたり、バケモノの毛が落ちていたり…次は、なんなんだ…
そんなことを考えているので、深く眠れない。寝ては目覚め、寝ては目覚め、浅い眠りの繰り返し。初めて、ババアに家にいてほしいと思った。そんなことを考える自分が情けなかったが、夜、ババアがいてくれたら、少しは安心して眠れる。もう、自分で自分が怖くなっていた。
しかし、人間の体はロボットではない。疲れは確実に溜まっていき、いつか限界を迎える。そして、人間の体の法則に従って疲れが限界を超えたオレは、深く眠ってしまった。
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久しぶりにぐっすり眠った。数日ぶりのはずだが、数年ぶりに深く眠った気がした。リビングへ行くとババアが起きていた。メチャクチャな状態はババアの掃除のおかげで綺麗になっていた。そして、ボロボロながらなんとかテレビはついていた。
「おはよう」
自分からババアから挨拶をするなんて、いつぶりだろう。はるか昔のことなので思い出せなかった。ババアはオレの挨拶に答えず、ボロボロのテレビが報道している内容に釘付けだった。
「バケモノ殺人です。遺体は頭部のない状態で発見されました。今回の被害者は中年男性と思われますが、残った部分の損傷も激しく、被害者の特定は難しいとのことです。はたして、今回も本当にバケモノの…」
テレビは、新たなバケモノ殺人を伝えていた。
ババアがオレに気づき、オレの方を振り返った。
「あんた…」
そこで言葉を切り、その顔はみるみる青ざめていった。
「なんだよ」
「あんた…」
もう一度そう言った後、ババアはテーブルに突っ伏して泣き出した。
何が起きているのか正確には理解できなったが、胸がえぐられるような嫌な予感はあった。洗面台へ行って自分を見た。そこには、血に染まった服を着ている自分がいた。部屋に戻ってみると、寝ていたベッドも血だらけだった。
うっすら、わかっていた。そう考えると辻褄が合うのだ。でも、考えないようにしていた。考えたくなかった。自分が多重人格者だなんて。そして、自分が殺人者だなんて。
ベッドから血の跡を辿ると、もう何年も開けていないクローゼットへ続いていた。よく見るとクローゼットが少し開いている。そこには、全ての答えがある気がした。開けたら、全てが終わる気がした。一生開けずにすむのであれば、そうしたかった。でも、そんなわけにいくはずもない。オレは、自分への審判を下すことにした。クローゼットの前に立ち、ゆっくりとその扉を開けた。
そこには、もう一人の自分がいた。つまり、世間を騒がせ、SNSで拡散されているバケモノだ。ゴリラのように毛むくじゃら、緑色の毛、目の部分は赤くなっていた。正確にはそのバケモノの着ぐるみがそこにあった。そして、その横に血まみれの斧、ノコギリ…その横に、人間の頭部…おそらく、先ほど報道されていた中年男性のものだろう。
「やっぱり、あんただったの…」
いつの間にか後ろにババアが立っていた。
「そうみたいだ」
記憶にない。やっていない。
そう叫びたかったが、これだけの状況証拠があるのだ。もう言い逃れはできないだろう。
「警察に連絡するね」
久しぶりに、ババアの優しい口調を聞いた気がした。
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「それでは、奥山しずえさん、詳しい話は署の方で伺いますので、息子さんはこちらでお預かりします」
オレの嫌いなエリート臭をプンプンさせた清潔そうな刑事が事務的な口調で奥山しずえ、つまりババアにそう告げた。
「はい。よろしくお願いします」
ババアは小さく答えた。
ババアは終始下を向いていた。それはそうだろう。世間を騒がせているバケモノ殺人の犯人が自分の息子だったのだ。オレの人生はこれで終わりだが、ババアの人生もこれで終わりだろう。
そう考えると、ババアに申し訳ない気がした。終わるなら、オレ一人で終わればよかった。ババアみたいなやつ、死んだらいいと思っていたのに、こういう感情が出てきたのは自分でも驚きだ。
「ババア、悪かった」
そんな言葉が自然と出た。すると、ババアはこちらをまっすぐ見つめ、泣きながら首をブルブルと横に降った。
「ほんとにごめんよ。母さん。オレなんて、産まれてこなきゃよかった」
心からそう思った。ババアのことを母さんと呼んだのもいつ以来だろう。その言葉を聞いて、母さんは完全に泣き崩れた。
「さあ、いこうか」
刑事に促されて、オレは家を後にした。背中から、オレの名前を叫びながら「ごめんね!ごめんね!」と繰り返す母さんの声が聞こえた。
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「あの、息子はその後どうでしょうか?」
しずえはあの時、息子を連れて行った男に聞いた。バケモノ殺人の容疑者で息子が連行されてから1ヶ月が経っていた。
「ええ。順調ですよ。経過は良好です。すっかり自分が多重人格者だと思い込み、やったと思い込んでいることを後悔していますよ。つまり、やってもいない殺人をね」
男はそう言ってにっこり笑った。
「そうですか。ただ、今でも本当に思うのです。これでよかったのかなって」
男は少し難しそうな顔をした。
「良いか悪いか…それはわかりませんが、この先、息子さんが本当に殺人を犯すことはないでしょう。心から反省しています。それにうまくいけば、これまでのような不良でなく、心を入れ替えて立派な青年として立ち直るかもしれませんよ」
それを聞いてしずえは少し笑顔になった。
「ありがとうございます」
「それでは、また1ヶ月後、定期報告に伺います」
男はそう言って、出ていった。
男が出て行った後、しずえは『バケモノ殺人更生法のご案内』と記載された資料を手に取った。
「これに救われたな」
そう呟いてもう一度読み返してみる。そこには、こう記載されていた。
バケモノ殺人更生法【極秘情報】
この度はご契約くださり、誠にありがとうございます。
我々は、自分の子供が手に負えなくなった。このままでは殺人など重大な犯罪を犯してしまうかもしれない。というご家族のために活動している団体で、世間を騒がせているバケモノ殺人を演出している団体となります。
手に負えなくなったご子息が人を本当に殺めてしまう前に、殺人者になってもらい、殺人という最も重い罪を背負わせます。もちろん、実際には殺させません。
具体的には、警察と連携して殺人事件をでっちあげます。でっちあげですので、加害者もいなければ被害者もいません。だから毎回、加害者はバケモノ、被害者は身元不明として事件を作ります。加害者のバケモノに関しては、適当な目撃情報を広めて、SNSに画像を拡散します。
ここで重要になってくるのは、ご子息に本当に犯人であると思わせることですが、親御さんのご協力があれば可能となります。
本人が事件に関与していると思わせる証拠を見せながら、多重人格だと思わせる。具体的には、カバンにものを入れたり、家を壊したり、服を血だらけにしたり、バケモノの着ぐるみや凶器、場合によっては遺体の一部を置いていただいたりします。必要であれば、これらの作業をする際、ご子息に睡眠薬などを飲ませてください。
睡眠薬や証拠となる凶器、着ぐるみ、遺体の一部などは全てこちらで用意します。もちろん、遺体の一部などは本物そっくりの模型です。事件が報道されるタイミングも伝えますので、一緒に住んでいればそれほど難しいことではないと思います。
ご子息が自身を犯人と認めた後、ご子息を逮捕という形で連行しますがマスコミなどには情報を流しませんし、架空の事件ですので刑務所でも少年院でもなく、我々の施設で更生をさせます。何年かかるかわかりませんが、更生中は定期報告という形で月に一度、御宅へ報告にまいります。
そしてご子息が社会復帰された後ですが、世間でバケモノ殺人の犯人が捕まっていないことに驚かないよう、こちらでバケモノ殺人は未成年かつ多重人格者の犯罪なので世間には公表していない。と説明しますので、そのように話を合わせてください。この辺りは定期報告の中でもご説明させていただきます。
また、本活動は警察などと連携し全国的に展開しておりますため全国でバケモノ殺人が報道されますが、いつかこのようなことをしなくても良い世の中になればと願いながら活動しております。その旨、ご理解いただけますと幸いです。
末筆ながら、今回は我々の活動に賛同してくださり、誠にありがとうございました。心より感謝致します。
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ここ数年。全国各地でバケモノの仕業とされる殺人事件が世間を賑わせている。
どの事件も被害者はグシャグシャに潰され、衣服など遺留品も現場には何一つ残されておらず、例外なく被害者の身元は不明。とても人間業とは思えない現場の惨状と、現場付近でのバケモノ目撃情報が数件報告されていることから、これらの事件はバケモノの仕業とされ、世間で『バケモノ殺人』と呼ばれるようになった。
しかし、真偽のほどは不明であり、そのバケモノは未だ捕獲されていない…
そして、これからも捕獲されることはないだろう。
どの事件も被害者はグシャグシャに潰され、衣服など遺留品も現場には何一つ残されておらず、例外なく被害者の身元は不明。とても人間業とは思えない現場の惨状と、現場付近でのバケモノ目撃情報が数件報告されていることから、これらの事件はバケモノの仕業とされ、世間で『バケモノ殺人』と呼ばれるようになった。
全国各地で目撃されるバケモノの、
ゴリラのように毛むくじゃら。毛の色は緑。目は赤く光っている。
という特徴が一致していることから、全てのバケモノ殺人はそのバケモノの仕業とされている。SNSなどでそのバケモノとされる姿が拡散されてはいるが、真偽のほどは不明であり、そのバケモノは未だ捕獲されていない…
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「おい!早く起きろ!今日は学校行くんだろ」
という、ババアの声で目を覚ました。朝からやかましい。
「今起きるよ。うっせーな」
頭がガンガンする、昨日は夜遅くまで仲間達とラリって、そういえば酒も飲んだかもしれない。イマイチ記憶が曖昧だが、いつもと変わらぬ不快な朝だ。
高校なんてものに行く気はなかったが、ババア、つまり母親が「高校くらいは出ておけ!」とうるさいから、自分の名前を書けたら入試に通るような地元で一番の底辺高校へ通っているというわけだ。やはり、底辺学校には底辺の連中が集まる。おれはすぐに他のどうしようもない奴らと仲良くなり、本格的な悪党の道を進み出した。
強姦、恐喝、窃盗、傷害など。おそらく殺人以外の犯罪は一通りやっているはずだ。まだシャバにいることが奇跡に近い。部活やバイトなんてもちろんしない。金がなくなれば、オヤジかカップルを狩る。金はオヤジの方が持っているが、カップルを狩る場合は女も楽しめるので、こちらも捨てがたい。
そんな感じでいつ捕まってもおかしくない毎日を送っていた。そんなオレの母親がこのババアだ。オレがまだ小さかった頃にババアと父親は離婚したらしいので、父親は知らない。ババアは離婚してからオレを育てるために水商売で生計を立てており、ここ最近は知り合いがやっているスナックに勤めているはずだ。
ババアはなんとかオレにまともな人間になってほしいと願っていたようで、昔はことあるごとに色々口やかましく言ってきたが、最近は諦めたのか何も言わなくなってきた。まあ、こちらとしては好都合だ。
ゴミだめのような自分の部屋を出て、ボサボサの頭をかきむしりながらリビングへ行く。ババアがまだ酒の匂いをプンプンさせながら水を飲んでいた。
「詳しい状況はまだわかっていないのですが、バケモノ殺人と考えて間違いなさそうです。例のごとく、遺体は潰され、遺留品はなし。被害者の身元は不明ですが若い女性とみられており…」
「これ、バケモノ殺人かよ」
テレビから流れるニュースはバケモノ殺人を報じていた。しかも、現場はウチのすぐ近くだった。
「そうみたいだね。ウチのすぐ近所にいるのかねぇ。やられたの、多分、高校生くらいの若い女の子だろうってさ。バケモノもこんな女の子殺さずにさ、あんたみたいに、いても仕方がないやつ殺せばちったぁ世の中のためになるのにねぇ」
「うっせーよ。ババアがよ。バケモノなんか返り討ちにしてやるよ」
ババアの飲んでいる水をかっさらうように飲み干し、空になったコップをドンとババアの目の前に叩きつけた。
「あー、そうそう。私、しばらく朝帰りが続くかも。お店忙しくってね」
商売柄、ババアの朝帰りは珍しくなかったが、何日も続いたことはなかったと思う。まあ大方、言い寄られでもした客のおっさんとよろしくやるのだろう。オレにとっちゃどーでもいい話だ。
「もう、一生帰ってこなくてもいーぞ」
そう吐き捨て、適当に身支度をしてからペシャンコのカバンを持って家を出た。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
学校に着くともちろん教室にはいかず、校舎裏の溜まり場へ直行する。昨日、仲間の何人かがオヤジを狩り、かなり稼いだらしく、そのおこぼれをもらえることになっていた。逆の場合はオレが仲間に振る舞うこともある。持ちつ持たれつだ。
「おう、おつかれ!」
仲間の一人がオレの顔を見るなり、そう言って札束をひらひら見せながら笑ってきた。
「昨日のオヤジ50万も持ってやがってよ。この時代にそんな現金持ち歩くなんて、バカなオヤジだぜ」
まあ、その通りかもしれない。この辺りは俺たちのようなどうしようもない悪党が多いのだ。用心するに越したことはない。
「で、いくらくれるんだ?」
「10万やるよ。お前にはこの前、いい思いをさせてもらったからな」
つい最近、オヤジを狩った金でこいつに風俗を奢ってやったのだが、そこのサービスが極上だったようだ。やはり、恩は売っておくものだ。
「じゃ、遠慮なく」
差し出された金を無造作にカバンに入れた。
「あ!悪い!それ、50万全部だわ。40万返してくれ」
渡された瞬間にそれが全額の50万であることは気づいていたが、バカなこいつはそれに気づかないかと思ったが、さすがにそういうわけにいかないらしい。オレはカバンから金を取り出し、金を数えようとしたのだが、札が冷たい。
「それ、濡れてないか」
その通りだった。しかも、ただ濡れているのではないらしい。
「それ、血じゃないのか?」
札は赤く濡れていた。オレはびっくりして、カバンの中を確認してみた。すると、カバンの中が血で染まっていた。
「なんだよ。これ」
普段カバンの中など確認しないからわからなかったが、それは明らかに血だった。そして、よく確認すると、何か布のようなものも入っていたので、手にとってみた。
「これ、スカーフか」
オレの手にあるのは、女子の制服によくあるスカーフだった。そして、手に取った赤いスカーフが、血で赤黒く染まっていた。
「お前、女でも犯してきたのかよ。それ、犯した女の男の血だろ。悪いやつだなぁ」
これまでの行動を考えると、そいつの言うことはもっともで、そう考えれば合点がいく。ただ、昨日はラリって酒飲んで寝たはずだ。いくら何でも、無意識のうちにそんな大仕事をしてるとは思えない。
「さすがっすね!先輩!」
その場にいた後輩が目をキラキラさせて言った。
「覚えてないんだ…」
何度思い出そうとしても、思い出せなかった。
「センパイ、喧嘩でも意識ないまま相手KOしたことあるじゃないすか!それと一緒すよ。意識ないまま女犯して男半殺しにしたんすよ。凄いっす!神っす!」
確かに、喧嘩などで所々意識が飛ぶときはある。気づけば相手が倒れていたこともある。でも、喧嘩をしたこと自体を忘れたことはない。もちろん、女を犯したことも忘れたことなどない。
「何もしていない…」
神っす!神っす!と騒ぐ後輩を前に、ふと朝のニュースを思い出した。
「バケモノ殺人…」
ババアの話では、確か被害者は高校生の女だったとか。そんなことを言っていた気がする。オレは血で少し重たくなったスカーフをまじまじと見つめた。
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血で染まったスカーフを見つけてから数日が経っていた。さすがにカバンから血染めのスカーフが出てきたので少しの間は薬も酒もやらなかったが、いつもと変わない日常が続いた。警察が家にくることもなかった。いつもと違うことと言えば、ババアが夜に帰ってくることがなくなったくらいだった。
スカーフに関しては誰かのいたずらか何かと思い込むようにしているうちに、あまり気にならなくなっていた。そして、ラリって、飲んで、狩るといういつもの日常に戻っていった。
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「起きろ!おい!起きろこのバカ!!」
頭がガンガンする。飲み過ぎのせいもあるだろうが、久しぶりにババアの声を聞いたからに違いなかった。時計をみる。夜中の2時だった。
「なんつー時間に帰ってきてんだよ。てか、一生帰ってくるなって…なんだよこれ!」
ババアに引きづられるようにしてリビングへ行くと、そこはめちゃくちゃにされていた。食器類、テレビ、テーブル、椅子、全てがめちゃくちゃに壊され、足の踏場に困るほどだった。
「あんた、何トチ狂ってんのよ!」
「オレじゃねーよ!帰って寝てただけだよ!だれかが入ってきてやったんじゃねーのかよ」
本当に、帰って寝てただけだ。こんなこと、無意識のうちにできるわけがない。
「あんたしかいないんだよ。ここ団地の5階だよ!私帰ってきたとき玄関にちゃんと鍵かかってた!玄関以外から入ろうと思ったら、壁登ってきて窓割るしかない。壁登るなんてできないし、窓も割れてない!あんた、何やってんだよ!」
確かにババアの言う通りだ。状況的に考えて、オレが暴れたとしか考えられない。そして、ババアがさらに驚くものを見つけた。
「これ、毛?」
ババアが手に取ったものは毛だった。電気に照らすと、それは緑がかって見えた。よくみると、あちこちに緑の毛が落ちていた。
「バケモノ…」
口から出ていた。ババアも、同じことを思っていたらしい。
「これ…バケモノじゃねーのか…」
「あんた…ほんとうに何も見てないの?」
スカーフの時と同じだ。何も知らないし、まったく覚えていない。
「覚えてねーよ…」
声が少し震えていた。
「わかった。とりあえず、今日はもう寝な。警察に連絡するかどうかは、少し考えるから」
ババアに言われ部屋に戻ったが、こんな状態で眠れる訳がない。
すぐに警察にきてもらった方がいいのではないのか。少しはスッキリするかもしれない。でも、ババアはそうしなかった。
『少し考える』
そう言った。ババアが警察へ連絡するのを躊躇う理由。頭が混乱していてうまく考えがまとまらないが、どう考えても躊躇う理由は一つしかないように思えた。つまり、バケモノ事件に自分の息子が関与しているかもしれないという疑惑だ。
さっきのババアの顔を思い出してみる…
どうやら、ババアがそう疑っているのは間違いなさそうだった。
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その日以来、眠るのが怖くなった。
寝たらまた身に覚えのないことが身の回りで起きるのではないか…
血染めのスカーフだったり、家を荒らされたり、バケモノの毛が落ちていたり…次は、なんなんだ…
そんなことを考えているので、深く眠れない。寝ては目覚め、寝ては目覚め、浅い眠りの繰り返し。初めて、ババアに家にいてほしいと思った。そんなことを考える自分が情けなかったが、夜、ババアがいてくれたら、少しは安心して眠れる。もう、自分で自分が怖くなっていた。
しかし、人間の体はロボットではない。疲れは確実に溜まっていき、いつか限界を迎える。そして、人間の体の法則に従って疲れが限界を超えたオレは、深く眠ってしまった。
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久しぶりにぐっすり眠った。数日ぶりのはずだが、数年ぶりに深く眠った気がした。リビングへ行くとババアが起きていた。メチャクチャな状態はババアの掃除のおかげで綺麗になっていた。そして、ボロボロながらなんとかテレビはついていた。
「おはよう」
自分からババアから挨拶をするなんて、いつぶりだろう。はるか昔のことなので思い出せなかった。ババアはオレの挨拶に答えず、ボロボロのテレビが報道している内容に釘付けだった。
「バケモノ殺人です。遺体は頭部のない状態で発見されました。今回の被害者は中年男性と思われますが、残った部分の損傷も激しく、被害者の特定は難しいとのことです。はたして、今回も本当にバケモノの…」
テレビは、新たなバケモノ殺人を伝えていた。
ババアがオレに気づき、オレの方を振り返った。
「あんた…」
そこで言葉を切り、その顔はみるみる青ざめていった。
「なんだよ」
「あんた…」
もう一度そう言った後、ババアはテーブルに突っ伏して泣き出した。
何が起きているのか正確には理解できなったが、胸がえぐられるような嫌な予感はあった。洗面台へ行って自分を見た。そこには、血に染まった服を着ている自分がいた。部屋に戻ってみると、寝ていたベッドも血だらけだった。
うっすら、わかっていた。そう考えると辻褄が合うのだ。でも、考えないようにしていた。考えたくなかった。自分が多重人格者だなんて。そして、自分が殺人者だなんて。
ベッドから血の跡を辿ると、もう何年も開けていないクローゼットへ続いていた。よく見るとクローゼットが少し開いている。そこには、全ての答えがある気がした。開けたら、全てが終わる気がした。一生開けずにすむのであれば、そうしたかった。でも、そんなわけにいくはずもない。オレは、自分への審判を下すことにした。クローゼットの前に立ち、ゆっくりとその扉を開けた。
そこには、もう一人の自分がいた。つまり、世間を騒がせ、SNSで拡散されているバケモノだ。ゴリラのように毛むくじゃら、緑色の毛、目の部分は赤くなっていた。正確にはそのバケモノの着ぐるみがそこにあった。そして、その横に血まみれの斧、ノコギリ…その横に、人間の頭部…おそらく、先ほど報道されていた中年男性のものだろう。
「やっぱり、あんただったの…」
いつの間にか後ろにババアが立っていた。
「そうみたいだ」
記憶にない。やっていない。
そう叫びたかったが、これだけの状況証拠があるのだ。もう言い逃れはできないだろう。
「警察に連絡するね」
久しぶりに、ババアの優しい口調を聞いた気がした。
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「それでは、奥山しずえさん、詳しい話は署の方で伺いますので、息子さんはこちらでお預かりします」
オレの嫌いなエリート臭をプンプンさせた清潔そうな刑事が事務的な口調で奥山しずえ、つまりババアにそう告げた。
「はい。よろしくお願いします」
ババアは小さく答えた。
ババアは終始下を向いていた。それはそうだろう。世間を騒がせているバケモノ殺人の犯人が自分の息子だったのだ。オレの人生はこれで終わりだが、ババアの人生もこれで終わりだろう。
そう考えると、ババアに申し訳ない気がした。終わるなら、オレ一人で終わればよかった。ババアみたいなやつ、死んだらいいと思っていたのに、こういう感情が出てきたのは自分でも驚きだ。
「ババア、悪かった」
そんな言葉が自然と出た。すると、ババアはこちらをまっすぐ見つめ、泣きながら首をブルブルと横に降った。
「ほんとにごめんよ。母さん。オレなんて、産まれてこなきゃよかった」
心からそう思った。ババアのことを母さんと呼んだのもいつ以来だろう。その言葉を聞いて、母さんは完全に泣き崩れた。
「さあ、いこうか」
刑事に促されて、オレは家を後にした。背中から、オレの名前を叫びながら「ごめんね!ごめんね!」と繰り返す母さんの声が聞こえた。
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「あの、息子はその後どうでしょうか?」
しずえはあの時、息子を連れて行った男に聞いた。バケモノ殺人の容疑者で息子が連行されてから1ヶ月が経っていた。
「ええ。順調ですよ。経過は良好です。すっかり自分が多重人格者だと思い込み、やったと思い込んでいることを後悔していますよ。つまり、やってもいない殺人をね」
男はそう言ってにっこり笑った。
「そうですか。ただ、今でも本当に思うのです。これでよかったのかなって」
男は少し難しそうな顔をした。
「良いか悪いか…それはわかりませんが、この先、息子さんが本当に殺人を犯すことはないでしょう。心から反省しています。それにうまくいけば、これまでのような不良でなく、心を入れ替えて立派な青年として立ち直るかもしれませんよ」
それを聞いてしずえは少し笑顔になった。
「ありがとうございます」
「それでは、また1ヶ月後、定期報告に伺います」
男はそう言って、出ていった。
男が出て行った後、しずえは『バケモノ殺人更生法のご案内』と記載された資料を手に取った。
「これに救われたな」
そう呟いてもう一度読み返してみる。そこには、こう記載されていた。
バケモノ殺人更生法【極秘情報】
この度はご契約くださり、誠にありがとうございます。
我々は、自分の子供が手に負えなくなった。このままでは殺人など重大な犯罪を犯してしまうかもしれない。というご家族のために活動している団体で、世間を騒がせているバケモノ殺人を演出している団体となります。
手に負えなくなったご子息が人を本当に殺めてしまう前に、殺人者になってもらい、殺人という最も重い罪を背負わせます。もちろん、実際には殺させません。
具体的には、警察と連携して殺人事件をでっちあげます。でっちあげですので、加害者もいなければ被害者もいません。だから毎回、加害者はバケモノ、被害者は身元不明として事件を作ります。加害者のバケモノに関しては、適当な目撃情報を広めて、SNSに画像を拡散します。
ここで重要になってくるのは、ご子息に本当に犯人であると思わせることですが、親御さんのご協力があれば可能となります。
本人が事件に関与していると思わせる証拠を見せながら、多重人格だと思わせる。具体的には、カバンにものを入れたり、家を壊したり、服を血だらけにしたり、バケモノの着ぐるみや凶器、場合によっては遺体の一部を置いていただいたりします。必要であれば、これらの作業をする際、ご子息に睡眠薬などを飲ませてください。
睡眠薬や証拠となる凶器、着ぐるみ、遺体の一部などは全てこちらで用意します。もちろん、遺体の一部などは本物そっくりの模型です。事件が報道されるタイミングも伝えますので、一緒に住んでいればそれほど難しいことではないと思います。
ご子息が自身を犯人と認めた後、ご子息を逮捕という形で連行しますがマスコミなどには情報を流しませんし、架空の事件ですので刑務所でも少年院でもなく、我々の施設で更生をさせます。何年かかるかわかりませんが、更生中は定期報告という形で月に一度、御宅へ報告にまいります。
そしてご子息が社会復帰された後ですが、世間でバケモノ殺人の犯人が捕まっていないことに驚かないよう、こちらでバケモノ殺人は未成年かつ多重人格者の犯罪なので世間には公表していない。と説明しますので、そのように話を合わせてください。この辺りは定期報告の中でもご説明させていただきます。
また、本活動は警察などと連携し全国的に展開しておりますため全国でバケモノ殺人が報道されますが、いつかこのようなことをしなくても良い世の中になればと願いながら活動しております。その旨、ご理解いただけますと幸いです。
末筆ながら、今回は我々の活動に賛同してくださり、誠にありがとうございました。心より感謝致します。
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ここ数年。全国各地でバケモノの仕業とされる殺人事件が世間を賑わせている。
どの事件も被害者はグシャグシャに潰され、衣服など遺留品も現場には何一つ残されておらず、例外なく被害者の身元は不明。とても人間業とは思えない現場の惨状と、現場付近でのバケモノ目撃情報が数件報告されていることから、これらの事件はバケモノの仕業とされ、世間で『バケモノ殺人』と呼ばれるようになった。
しかし、真偽のほどは不明であり、そのバケモノは未だ捕獲されていない…
そして、これからも捕獲されることはないだろう。
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