忠犬な君

つきのあかり

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俺は、高校2年生になった


春が終わり、本格的に夏が始まろうとしていた
校舎にある桜の木の下に落ちていた花びらも
跡形もなくなって、少し寂しい気持ちになった
そんな桜の木は俺の少し沈んだ気持ちとは裏腹に緑の葉をつけ、のびのびと季節の移り変わりを知らせる

時間がただただ過ぎていく
俺の世界は相変わらず何もなかった




「転校生が来るんだってー!」

ある女子の発言でクラス中がざわめき出した
頬杖をついて外を眺めながら
そうなんだ 
と心の中で他人事のように返事した

「え!まじで!可愛い女の子かな!」
「ざんねーん!男でーす!」
「え~なんだよ~」
「てか、何でそんなこと知ってるんだよ」
「近所に引っ越ししてきたみたいで、挨拶にきてくれたの」
「顔は見た!?イケメン!?」
「私は見てないけど、お母さんはイケメンだったって!」
「「きゃ~‼︎‼︎」」


テンションが若干下がっている男子と
テンションが上がりまくっている女子

東京から越してきたらしい、その転校生の話でクラスの話題は持ちきりだった
(よりによってこんな田舎高校まで‥親の転勤とかかな)
なんて、関わることのないであろう転校生についてどうでもいいことを考えていた


来る前からこんなに期待されるなんて、
実際に俺みたいな奴が出てきたらどうなるんだろう
浮き足立っていた女子たちの顔が一気に冷めたような
落胆したような絶望したような顔になるー
自分で想像して恐ろしくなった

(うわ、またネガティブなことを考えてしまった)

頭の中の妄想を払い
気持ちを切り替えようと、次の授業の準備を始めた
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