歩夢さん

文字の大きさ
6 / 32

紅雷の愛し方3

しおりを挟む
今日の雪音は変だった。紅雷は行為の最中はその代わりように煽られ冷静に考えられなかったが、雪音の寝顔を見つめているうちにふと疑問を抱えた。
 ふとスマホに映る日付を見て思い出す。8月7日。雪音の、両親の命日である。紅雷が、雪音の両親を殺した日。紅雷の記憶では去年の今日は一人にしてくれ、と雪音はリビングで眠っていたのを思い出した。本当は今日も一人にして欲しかったのかもしれない、と思い至る。
 雪音の頭を撫でる。前髪をどかす。実年齢よりだいぶ大人びている。ちょうど5年前の今日、初めて会った時もずいぶん大人びて見えたのを覚えている。当時から完成した顔つきで、背も高く、大人びた雰囲気を纏っていた。

「恨んでいるだろうか。」

 小さな声で呟いた。紅雷は5年間、その疑問を雪音にぶつけられずにいる。紅雷は雪音を愛している。雪音を自分ができる最大限守り、大切にしている。それでも雪音から愛されることはないと思っている。雪音が拒まないことをいいことに何度も求め、自分のものにならないとわかっていながら、自分の跡をつけてしまう。
 いつか、雪音が紅雷の元を離れるといった時、自分は冷静でいられるだろうか。
 もし、恨んでいると言われて、紅雷は自分を保てるか。
 突然、雪音が帰ってこなくなったら?

 今の自分でいられる自信がない。

「いっそ、」

 いっそ自分の子でも孕んでくれれば。そしたらいなくならないんじゃないか。ある時から避妊をしなくなったのはその期待にすがっているから。毎回生理がきたと言われ、安堵する自分と落胆する自分がいる。

 身体が冷えてきた。紅雷は雪音の隣に潜り込んで、抱きしめた。どこにも行かないでくれ、と願いを込めて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

処理中です...