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2.テレビを付ける

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 父は仕事。妹は学校。母は僕が引き籠るようになってから、パートの仕事を辞めた。それでも買い物に行ったりと、出かける時間はある。
 誰もいないタイミングを見計らって、僕は部屋から出た。

 居間に向かい、テレビを付ける。

『さて、街角から中継です』

 司会者の声がして、街の様子が映される。

 人、人、人――。

 雑踏の中に、僕は違和感を覚えた。
 バナナが歩いている。
 黄色い、あのバナナだ。

 誰も何もツッコまない。

 よく見ると、他にも何か歩いている。
 ホットドッグ、クッキー、えび天……。

『では、明日の天気です。気象予報士の、リンゴさん』
『はあーい、リンゴでーす! 明日の天気は――』

 もう何もツッコまないぞ。


 母が帰ってくる音がした。急いでテレビを消し、部屋に戻る。
 僕が引き籠っている間に、いったい何があったのか。
 僕の部屋に、テレビはない。まだ学生の僕は、スマホも持っていなかった。
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