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07.町の中を走る道は
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町の中を走る道は土がむき出しのため、風が吹けば砂埃が舞った。道幅は狭く、大人が並んで歩けば道をふさいでしまう。一番太い中央通りでも、小型の馬車でさえ擦れ違うのに苦労するほどだ。
「とりあえず冒険者ギルドに行って、タバン行きの馬車の護衛がないか確認するか」
タバンの港は、サゾンからさらに南方にある、サテルト国一の貿易港だ。ヨルド山脈で討伐された魔物の素材の多くは、タバンの港から海路を使って他国に運ばれていく。
山に囲まれて交通の便が悪い上に、魔物の出現数も多いサテルト国は、まとまった穀倉地帯がなく、放牧も難しい。輸出で得る利益が、国の財政を支えていた。
とはいえ、ノムルは海路で移動する予定はない。前述したように、サテルト国は交通の便が非常に悪いため、目的地であるムツゴロー湿原に向かうためには、一度タバンの港まで南下して、そこから再び北上し直す必要があるのだ。
ノムルは冒険者ギルドの旗を掲げた建物を見つけると、木製の扉を開けた。
掲示板に貼られている依頼書の中から、タバン行きの護衛をすばやく見つけ出して剥がすと、ノムルは受付に向かう。認定証と共に提示すれば、即座に受理された。
出立は明日の朝。割符を受け取ってしまえば、もうここに用はない。ノムルは早々にギルドの建物から出ようしたが、取っ手に手を掛ける前に扉が勢いよく開いたので、身を引いた。
「大変だ! 魔線虫が出た!」
駆け込んできた男は、息を荒げたまま叫んだ。その報せを聞いて、冒険者たちの顔色が一斉に曇る。
魔線虫とは、人間に寄生して宿主を凶暴化させてしまう、厄介な魔物だ。理性を失った宿主は能力を極限まで引き出されるため、一般人でも化け物染みた力を発揮し、大きな被害を出す場合が多い。
しかし魔線虫が忌諱されている最大の理由は、他にあった。
寄生されてすぐならば取り除くこともできなくはないが、理性を失うほどの症状が出てしまえば、もう助ける手段はない。命が尽きるまで、自分の意思に反して暴れ続けることになるのだ。
さらに宿主の屍からは増殖した魔線虫が這い出し、近くにいる人間を新たな宿主にして被害を拡大させてしまう。
だから魔線虫に寄生された人間が見つかれば、まだ生きている間に燃やし尽くさなければならない。
魔物や野盗を狩ることには慣れた冒険者たちだが、操られて凶行に及ばざるを得ない人間を、手に掛けたいとは思わない。だから誰もが避けたいと考える討伐だった。
けれど同時に、自分が寄生されれば、家族や仲間を傷付ける前に処分してほしいと願う。ゆえに、冒険者たちは苦渋を飲みこんで駆け出した。
一刻も早く、安らかな眠りを与えるために――。
「とりあえず冒険者ギルドに行って、タバン行きの馬車の護衛がないか確認するか」
タバンの港は、サゾンからさらに南方にある、サテルト国一の貿易港だ。ヨルド山脈で討伐された魔物の素材の多くは、タバンの港から海路を使って他国に運ばれていく。
山に囲まれて交通の便が悪い上に、魔物の出現数も多いサテルト国は、まとまった穀倉地帯がなく、放牧も難しい。輸出で得る利益が、国の財政を支えていた。
とはいえ、ノムルは海路で移動する予定はない。前述したように、サテルト国は交通の便が非常に悪いため、目的地であるムツゴロー湿原に向かうためには、一度タバンの港まで南下して、そこから再び北上し直す必要があるのだ。
ノムルは冒険者ギルドの旗を掲げた建物を見つけると、木製の扉を開けた。
掲示板に貼られている依頼書の中から、タバン行きの護衛をすばやく見つけ出して剥がすと、ノムルは受付に向かう。認定証と共に提示すれば、即座に受理された。
出立は明日の朝。割符を受け取ってしまえば、もうここに用はない。ノムルは早々にギルドの建物から出ようしたが、取っ手に手を掛ける前に扉が勢いよく開いたので、身を引いた。
「大変だ! 魔線虫が出た!」
駆け込んできた男は、息を荒げたまま叫んだ。その報せを聞いて、冒険者たちの顔色が一斉に曇る。
魔線虫とは、人間に寄生して宿主を凶暴化させてしまう、厄介な魔物だ。理性を失った宿主は能力を極限まで引き出されるため、一般人でも化け物染みた力を発揮し、大きな被害を出す場合が多い。
しかし魔線虫が忌諱されている最大の理由は、他にあった。
寄生されてすぐならば取り除くこともできなくはないが、理性を失うほどの症状が出てしまえば、もう助ける手段はない。命が尽きるまで、自分の意思に反して暴れ続けることになるのだ。
さらに宿主の屍からは増殖した魔線虫が這い出し、近くにいる人間を新たな宿主にして被害を拡大させてしまう。
だから魔線虫に寄生された人間が見つかれば、まだ生きている間に燃やし尽くさなければならない。
魔物や野盗を狩ることには慣れた冒険者たちだが、操られて凶行に及ばざるを得ない人間を、手に掛けたいとは思わない。だから誰もが避けたいと考える討伐だった。
けれど同時に、自分が寄生されれば、家族や仲間を傷付ける前に処分してほしいと願う。ゆえに、冒険者たちは苦渋を飲みこんで駆け出した。
一刻も早く、安らかな眠りを与えるために――。
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