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24.いいよー

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「いいよー。どんな内容にする?」
「私の正体を決して人間に言わないこと。それと、私に危害を加えないこと」

 軽い調子で問うノムルに対して、ユキノの声は重い。
 どんな契約内容にするかで、彼女の今後の安全度と扱いが変わるかもしれないのだ。真剣になるのは当然であろう。

「それだけでいいの? 宿泊施設のランクとか、専用の馬車を買えとかでもいいけど?」
「いえ、そのようなことは……あ、私、お金を持っていません」

 思い出したように零したユキノに、ノムルはふっと面白そうに笑う。人間が使う金銭を、森人の子供である彼女が用立てられるなんて、彼は思っていない。
 彼女が使っていた妙薬を売れば莫大な金になるだろうが、そんなことをすればユキノの価値は跳ね上がり、それこそ裏社会の人間たちから狙われてしまう。
 むろん、もしそうなってしまった場合は、ノムルが全て排除するけれど。

「それは気にしないで。金なら幾らでもあるから。王族並に豪華な旅がしたいとかでも平気だからさー」
「それはさすがにご遠慮します。目立ちたくありません。……え? そんなにお金持ちなんですか?」
「使わないから、貯まる一方なんだよねー。遠慮なく使っていいよ? その代わり――」

 笑みを湛えたまま、ノムルの目が厳しくなる。

「さっき話した同族との交渉の件は、本当にお願いね? それまでに逃げるのはなし」
「は、はひ」

 ノムルから放たれる圧に、ユキノは身を竦ませた。

「あのう、見つけた同族がお薬を持っていなかった場合は、どうなるのでしょうか? それに、同族が見つからなかった場合は?」

 危機感を抱いたためか、抜けていた部分に思い至ったらしく、質問してきた。

「その時は仕方ないかな。そもそも君と会わなければ森人に頼る気はなかったし、自分でどうにかするさ。ということで、契約期間は、君が同族を見つけるまででいいかな?」
「そうですね。……あ、私の同族を見つけても、危害を加えないでいただけませんか?」

 慌てて付け足された内容に、ノムルは苦笑を禁じ得ない。
 ユキノはただ、人間に襲われるのを防ぐためと考えたのだろう。けれどノムルにとって、この契約内容は痛手となる。
 もしも見つけ出した森人たちがノムルへの協力を渋った場合、強硬手段に出ることも視野に入れていたのだ。それができなくなってしまった。
 それでも、ユキノを手元に置いておく利益に比べれば、安いものである。

「いいよー。じゃあ、この内容で契約するね?」

 ここまでユキノから申し出のあった内容を、ノムルは改めて言葉にする。
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