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58.まあ例外もいるけどね?

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「まあ例外もいるけどね? 樹人じゅじんなんかは、人間が手を出さなければ攻撃してこないし、竜種に至っては、卵から育てれば手懐けることもできるからね」

 木の姿をした魔物の樹人は、攻撃しなければ動きもしない。慣れていない人間だと目の前にいても気づかないほどだ。
 竜種はルモン大帝国の騎竜部隊など、騎獣として活用している国もある。
 ノムルの説明に、ユキノは戸惑いながら頷いた。

「そ、そうなのですね。私が森で一緒に遊んだことのある子は、このくらいの大きさの丸いふわふわした子で、丸いお耳と細い尻尾がありました。怒ると、とげとげになるのです」
「たぶん魔栗だね」

 皮膚から分泌される毒によって毛が棘のように硬くなり、掠っただけで激痛に見舞われてしまう。小さくて動きが素早いため発見が遅れることも多く、警戒が必要な魔物である。

「後は、おでこに角が生えた、しか――ええっと、馬をもっと小さく細くしたような生き物と言えばいいのでしょうか? 時々角が光っていました」
「魔一角鹿か。あれ、凄くしつこく攻撃してくるんだよねー」

 魔一角鹿は額にある角が雷をまとい、触れると即死することも多い危険な魔物だ。角から雷撃を放ったり、角部分よりは弱いが雷を全身にまとうなど、討伐難易度は高く設定されている。
 そして人間への執着が強く、遭遇してしまうと討伐するか、冒険者が全滅するまで戦いは終わらない。

「そうですね。最初の頃は、会うたびにもっしゃもっしゃされました」
「もっしゃもっしゃ?」
「ナンデモアリマセン」
「そう」
「あい」

 やはり森人は魔物と分かりあえるのかとノムルが感心していたところへ、金属鎧の三人組がやってきた。魔山猪豚を捌き終えて、戻って来たらしい。艶々とした牡丹色の肉と、毛皮を抱えている。
 ノムルは防音魔法を解くと、ユキノをローブで隠すように立ち、三人に向き合う。
 成人男性としては小柄なノムルを、三人は侮りを隠さぬ顔で見下ろしてきた。

「お前は一匹も魔物を倒していない役立たずなんだ。見張りくらいできるだろう? 今夜の夜番くらい、役に立ってはどうだ?」

 この場所には魔物除けの魔法道具が設置してあるが、全ての魔物を遠ざけられるわけではない。竜種などの強い魔物を始め、一部の魔物には通用しないのだ。
 それゆえに、夜の見張りを欠かすことはできなかった。護衛たちは道中だけでなく、夜の番も務めなければならない。

 金属鎧たちが命令口調で言い放った内容に、そんなことかとノムルは承諾しようとしたのだが、割って入る声があった。シャンだ。

「逆だろう? 魔物を一匹も倒せなかったんだぞ? 一人で見張りなんてさせたら危険だろう? そいつはあのイゾーとかいう人と組ませて、三交代にすべきじゃないのかい?」

 彼女の後方を見やれば、商人たちが眉をひそめて成り行きを見ていた。
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