布団の中の田んぼ

いのんちゅ

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布団の中の田んぼ

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畳六畳の狭い世界。薄い布団と最低限の私物が散らばる中で私は眠っている。
机と椅子と布団。どれもデザイン性はなく無機質。
布団とは対照的に分厚い毛布にもかかわらず、冬の寒さが身に染みる。

乾いた空気。毛布で見えない視界の下に、わずかな湿り気を感じる。腹部に近い。
毛布の中で身じろぎし手を動かすと、布団があるべき場所にその下の畳ですらなく地面があった。
手探りで探ってみると、人の頭より二回りは大きそうな円形の地面ができていた。
ボロアパートの二階、角部屋に地面はあるはずはない。もちろんガーデニングを趣味に変えた記憶もない。
ただ事実としてそこには地面があった。

地面には湿地的な部分とわずかに乾いて固まった部分があった。
中心ほど湿っており、そこは田んぼのようだが、側面は渇き畑のようになっている。
中心が黒く、側面は赤茶色のダーツの的のようなものをイメージしながら、手元の見えない布団の中で土遊びを始める。
側面の固まった土を手に取り、砕きながら中央の部分に混ぜていく。
ホロホロと崩れる土の感触。
乾いた土を混ぜると、瞬間少し水分を失うが、すぐに元通りに戻る田んぼ部分のドロドロ。
右手だけでただただ土をいじって楽しむ。
親父の実家は農業をしていた。小さいときに触れた畑の土を思い出し、さらに幼いときに公園の砂場で砂山を作ったことを思い出す。
海に行ったときには海には入らず、ただただ砂浜で穴を掘り、砂山を作り、トンネルを通していたことを思い出す。
背中だけが真っ赤に日焼けして、その日は風呂に入るのが嫌だったことを思い出す。

足元に違和感を覚える。むず痒さ。
そもそも濡れた地面で毛布も濡れていないか気になり、横になったまま毛布をめくる。
半身を起こし見てみると、布団はすっぽりくりぬかれ予測していた丸い小さな田んぼがそこにあった。
不思議と毛布は濡れておらず、布団にも水害は出ていない。そこだけ別空間のような違和感が襲う。

めくった毛布の足元の付近。黄色と黒のまだらのような粒が付いていた。
コーンと稲の中間のような種子。毛布に付着しているが、体にも布団にもついてはいない。

「起きたら種を植えないと」

ぼんやりとした思考の中で、漠然とそう思う。無意識から湧き出るような自然な思考の流れ。
毛布をめくり冷えたからか、急速な眠気に抗わず毛布をかぶり直し、脳の命じるままに目を閉じる。
右手だけを田んぼに戻し、指先にある地面の感触に安堵しながら眠る。
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