ACES IN SKIES

みにみ

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虚空の猟鳥

転換点

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セドハス飛行場壊滅の第一報が入ったとき
ハーギア連邦空軍司令部は一瞬、沈黙に包まれた。
通信士が読み上げる報告は淡々としていたが、その内容は重かった。
駐機中の爆撃機の大半が地上で破壊され、滑走路は使用不能。
迎撃に上がった戦闘機隊も散発的な反撃に終わり、制空権は完全に失われたという。
「確認を取れ。誤報の可能性はないのか」
誰かがそう言ったが、返ってきたのは複数回線からの同一内容の報告だった。
誤報ではない。現実だ。
参謀たちは即座に次の問題に直面した。敵の上陸が始まるという情報は
すでに複数の沿岸監視所から上がっている。
航空戦力による阻止が前提だった防衛計画は、根底から崩れた。
「前線航空団では対応できません」
作戦局の将校が、静かにそう結論づけた。
残存戦力は散開し、練度も統一されていない。即応性に欠ける。
そこで名前が出た。
「第18臨戦を出すしかありません」
空気が変わった。
第18臨戦飛行隊、レギンレイヴ。
本来はDTS防空を主任務とする切り札であり、教導飛行隊上がりの精鋭だ。
前線に出すには早すぎるという意見もあったが、他に選択肢はなかった。
「急遽、作戦任務を変更する。迎撃ではない。制空奪還だ」
命令は短く、重かった。
基地への発令電文が即座に送信される。
この瞬間、戦争は次の段階へ踏み込んだ。


上陸作戦が始まってから数時間後、後方支援区域では異様な光景が広がっていた。
上空を埋め尽くす航空機の列が、途切れることなく前線へ向かっていく。
補給担当の下士官は、弾薬箱の伝票に目を落としながらも、思わず空を見上げた。
編隊は低く、速く、迷いがない。
「あれが、全部味方か……」
誰かが呟いた。
返事はなかったが、周囲の誰もが同じことを思っていた。
これほどの航空戦力を一度に見るのは初めてだった。
戦争が始まってから、常に押され続けてきた。
空は敵のものだと思い込んでいた。だが今は違う。
無線から、前線部隊の歓声が断片的に聞こえてくる。
近接航空支援が正確に入り、敵の抵抗線が次々と崩れているという。
「隕石とともにあらんことを」
誰かが、冗談めかして言った。
最初は意味のない言葉だった。だが別の誰かがそれを繰り返し
さらに別の誰かが笑いながら同じ言葉を口にした。
それはいつの間にか合言葉になっていた。
恐怖を押し流すための、ささやかな儀式のように。
彼らはまだ知らない。
その言葉が、やがて空軍全体に広がり、象徴になることを。


夜明けが近づく頃、AWACS〈オウルアイ〉の機内では、静かな緊張が続いていた。
レーダー画面に映る反応は減少傾向にある。
上陸阻止に投入された敵航空戦力は、ほぼ排除された。
だが、完全ではなかった。
「北東方向、高度一万。速度、異常に揃っています」
オペレーターの声が少し硬くなる。
単機や小編成ではない。編隊だ。しかも、間隔と機動が揃いすぎている。
「通常部隊じゃないな」
ジョシュア・ゲイリー少佐は画面を睨んだ。
これは寄せ集めではない。明確な統制がある。
「識別は?」
「まだです。ただ……練度が高い」
クラウ隊を含む前線航空隊に警戒命令が飛ぶ。
迎撃ではなく、観測と対応準備。無理に噛みつくなという指示だ。
そのとき、別回線が割り込んだ。
敵側の通信断片が、かすかに拾われる。
内容は短く、しかし明確だった。
「第18臨戦、交戦用意よし」
ゲイリー少佐は小さく息を吐いた。
ついに切り札が動いた。
「全機に通達。これより先は、本物だ」
空はまだ薄暗い。
だが、次に来る戦いが、これまでとは違うことだけは確かだった。
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