ACES IN SKIES

みにみ

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虚空の猟鳥

ファシア大陸奪還作戦

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夜明けはすでに空の半分を塗り替えていた。
低い雲の下、海面は鈍く光り、そこに無数の航跡が刻まれている。
バラードから出撃した艦隊は、隊形を整えながらゆっくりと前進していた。
駆逐艦、巡洋艦、空母、揚陸艦。そのすべてが、今この瞬間のために集められている。
上空では、エンジン音が絶え間なく重なり合っていた。
制空戦闘に参加した戦闘機隊に加え、攻撃機、電子戦機
早期警戒機、輸送機までが高度と進路を分けながら空を埋め尽くしている。
「こう見れば、やっと軍隊らしくなってきたな」
誰かが無線でそう呟いた。
それは冗談めいた言葉だったが、誰も否定しなかった。
空と海、その両方に、FCFが持ち得る力のほぼすべてが注ぎ込まれている。
これは小規模な反撃ではない。
明確な意思をもった奪還作戦だった。
AWACS、オウルアイから全体通信が入る。
「各部隊へ。敵航空反応は散発的。制空状況は良好。これより次段階へ移行する」
一瞬の間。
そして、作戦司令部からの公式命令が発せられた。

「これより、ファシア大陸奪還作戦を開始する!」

その言葉は、通信回線を通じて全軍に伝えられた。
誰かが歓声を上げることはなかった。
だが、各所で短い呼吸音や、意識的に声を整える気配が広がる。
これは合図だ。
守る戦争から、取り戻す戦争へ移るという合図だった。
上陸予定海域に近づくにつれ、艦隊の動きが変わる。
護衛艦が前に出て、揚陸艦を包み込むように配置される。
艦砲が旋回し、沿岸に向けて仰角を取った。
「砲撃準備」
艦橋からの命令が伝達され、数秒後、最初の艦砲射撃が始まった。
低く重い衝撃音が連続し、砲弾は弧を描いて陸地へ飛んでいく。
陸上の敵陣地が、次々と爆炎に包まれた。
沿岸の防空陣地、簡易指揮所、補給施設。
夜明けの薄明かりの中で、破壊の痕跡がはっきりと見える。
「上陸部隊、前進開始」
強襲揚陸艦の後部ゲートが開き、揚陸艇が海へ滑り出していく。
波を切りながら進むその姿を、上空からクラウ隊が見下ろしていた。
「クラウ隊、上空カバーを維持。低空の脅威に注意」
フーシェンの指示は簡潔だった。
戦況は優勢だが、油断できる段階ではない。
リカは高度を保ちつつ、海岸線と内陸の境界を監視していた。
レーダー画面に映る反応は少ない。だが
敵が完全に沈黙したわけではないことを、彼女は感覚的に理解している。
「対空砲火、散発的に確認。だが統制は取れていない」
スナイパーの報告に、フーシェンが応じる。
「了解。無理に追うな。上陸が最優先だ」
空を覆う航空機の編隊が、ゆっくりと前進していく。
その影が海面に映り、さらに陸地へと伸びていく。
それは、圧倒的な光景だった。
これまで撤退と防戦を繰り返してきたFCFが、初めて正面から力を示す瞬間だった。
「いくぞ。ペイバックタイムだ」
スウィンダラーの声が、少しだけ低くなる。
冗談めかした口調ではあったが、そこに浮ついた気配はなかった。
その言葉は、別の意味を持っていた。
復讐ではない。
失ったものを取り戻す時間が来た、という宣言だ。
海岸では、最初の揚陸部隊が接岸しつつあった。
煙幕が展開され、視界を遮る。工兵部隊が動き、足場を確保する。
敵の反撃は鈍い。
制空を失い、指揮系統も寸断されている。
オウルアイが全体を見渡しながら告げる。
「上陸第一波、成功。敵航空反応なし」
その報告に、誰も歓声を上げなかった。
だが、無線越しに伝わる沈黙は、確かな手応えを含んでいた。
リカは、遠くで立ち上る煙を見つめていた。
あの場所に、これから人が入り、血を流し、奪い合うことになる。
それでも、今は空に集中する。
それが自分の役目だ。
朝日は完全に昇り、戦場を照らしていた。
ファシア大陸への第一歩は、確かに踏み出された。
だが、この戦争が容易なものではないことを、誰もが理解している。
本当の試練は、この先に待っている。

砂と瓦礫が混じった海岸線に、上陸部隊は身を伏せていた。
揚陸艇のランプが下りた瞬間から、敵の散発的な砲火が降り注いでいる。
弾着は不規則だが、前方の内陸部に陣取る戦車部隊が進路を完全に塞いでいた。
履帯が唸り、砲塔が回るたびに、地面の振動が腹に響く。
「前進できん。戦車が道を押さえてる!」
無線機を握る分隊長は、砂にまみれたヘルメットを押さえながら空を仰いだ。
雲の切れ間に、味方の航跡が幾筋も走っている。
「上空の味方機へ! 構わんから全弾ここに落としてくれ。前方の戦車部隊が邪魔で進めん!」
座標を短く送る。返答は間を置かずに来た。
「了解。クラウ隊、近接航空支援開始」
空が低く唸り始める。
戦闘機が高度を落とし、進路を修正していくのが見えた。
「座標一二九・七八・四十六に爆撃。Boms Away」
次の瞬間、時間が引き伸ばされたように感じられた。
数秒後、地面が跳ね上がる。連続する爆轟が、前方一帯を飲み込んだ。
砂煙が壁のように立ち、衝撃波が胸を叩く。
戦車の影が、爆炎の中で歪む。
砲塔が吹き飛び、履帯が外れ、動きが止まった。
「ナイスアタック! これで進める!」
誰かが叫び、部隊が一斉に立ち上がる。
煙の隙間を縫って前進を再開する。
遮蔽物から遮蔽物へ、短い距離を確実に詰めていく。
だが、内陸に入ると別の脅威が姿を現した。
重砲の発射音が腹に響き、迫撃砲弾が弧を描いて落ちてくる。
さらに、低空を掠める回転音が混じった。
「対戦車ヘリだ!」
無線が割り込む。
「こちらFCF連合第三偵察戦闘大隊。
 前方に重砲、迫撃砲、ついでに敵対戦車ヘリだ!」
返答は即座だった。
「了解。ゴーレム隊、近接航空支援開始。全弾ばら撒け」
今度は別の編隊が入る。
F/A-18Dが低空から侵入し、火線を引きながら攻撃に入った。
ロケット弾と機関砲弾が面で叩き込み、重砲陣地が沈黙する。
対戦車ヘリは回避行動を取る暇もなく、空中で炎を上げた。
地上の空気が変わった。
敵の反撃は散発的になり、前進を妨げる決定打が消えた。
「上陸第二線、前進継続!」
指示が飛び、部隊は歩調を速める。
上空では、味方機がなお旋回を続け
必要とあらば即座に火力を落とす構えを崩さない。
兵士たちは知っていた。
この上陸が成功している理由は
自分たちだけの力ではない。空が取られているからだ。
誰かが短く言った。
「……空が、味方だ」
その言葉に、返事は要らなかった。
前へ進む足取りが、答えだった。
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