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虚空の猟鳥
生と死の臨界点
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夜明け前の大地は、音を吸い込むように静かだった。
フーシュトクバ南方、撃墜地点一帯は低木と起伏が連なる荒野で
月明かりだけが地形の輪郭をかろうじて浮かび上がらせている。
救出予定の搭乗員は十名。
そのうち、救難信号が安定している者は六名。残り四名は信号が途切れがちで
生存しているかどうかは五分五分だった。
「救難部隊、行動開始」
低く抑えた声が、ヘッドセットを通して流れる。
地上では、特殊救難部隊が小隊単位で散開していた。
足取りは慎重で、装備は最低限。敵に見つかれば即交戦になる状況だが
最優先事項は発見されないことだった。
空では、低空を抑える形で航空部隊が待機している。
高度はDTSの射程を避けるため極端に低く、地形追従飛行で位置を保つ。
「チャーリー1、第一目標確認。生存者一名、軽傷」
「チャーリー2、こちらも確認。意識あり」
一人、また一人と、搭乗員が救出されていく。
担架に載せられ、無言でヘリへと運ばれる姿は、戦場の中で奇妙なほど静かだった。
六人目の救出が完了した時点で、指揮所は一瞬の安堵を覚えた。
だが、問題はそこからだった。
「……最後の二名、反応あり。だが位置が近すぎる」
救難信号が示す地点は、森と低地の境界線だった。
敵が哨戒を出していても不思議ではない場所だ。
「行くしかない」
短い判断の後、救出部隊は前進を続けた。
その時だった。
「待て……動きがある」
草を踏む音。
人影が、闇の中で揺れた。
次の瞬間、銃声が夜を裂いた。
「接触!敵だ!」
「撃て撃て!その木のところだ!」
曳光弾が低木を貫き、木片が飛び散る。
敵は特殊地上部隊だった。迷彩に身を包み、地形を完全に把握している。
「そいつは死んでる!おいていけ!」
怒号が飛ぶ。
「無理だ、まだ息がある!」
救難部隊は必死に反撃しながら、担架を引きずる。
だが敵の火力は強く、数も多い。
「こちらチャーリー1、限界です!後退します!」
「踏みとどまれ!空軍が援護に入る!」
「チャーリー1、応答しろ!どうした?!」
返事はなかった。
「……チャーリー1、戦死確実」
その報告と同時に、空からの声が割り込む。
「航空部隊へ!座標129・45・88に機銃掃射を頼む!」
「了解」
フーシェンは即座に機体を振った。
高度を保ったまま、目標地点へ機首を向ける。
「撃つ」
翼根の20ミリバルカンが火を吹いた。
低空を舐めるように弾幕が走り、茶色い地面が跳ねる。
土砂の中に、鮮やかな赤が散った。
敵の動きが、一瞬止まる。
「今だ、下がれ!」
救難部隊はその隙を突き、負傷者を引きずって後退する。
だがその時、別方向から閃光が走った。
「RPG!」
叫びは遅かった。
パンツァーファーストが、救難ヘリに直撃した。
爆発とともに機体が傾き、地面へ叩きつけられる。
「……っ!」
炎が上がる。
そこにいたのは、救助された搭乗員二名と、乗員六名。
「ヘリ1、応答しろ!」
返答はなかった。
戦場は、一気に収拾不能になる。
だがこれ以上留まることはできない。
「撤退!」
指揮官の命令で、残存部隊は後退を開始した。
空からの援護射撃が続く中、なんとか戦線を離脱する。
作戦は終わった。
基地に戻った後、簡潔な報告がなされた。
搭乗員十名中、生存四名。
救出中に死亡二名。
救難ヘリ撃墜により、搭乗員二名、救難要員六名が死亡。
合計六名が、帰ってこなかった。
誰も声を出さなかった。
数字だけが、重くそこに残る。
フーシェンは報告書を閉じ、しばらく動かなかった。
「……これが戦争だ」
誰に向けた言葉でもない。
ただの事実だった。
生き延びた者たちは、次の作戦に備えて動き始める。
失われた命を悼む時間は、与えられない。
夜明けの空は、淡く白み始めていた。
救われた者と、救えなかった者。その境界線は、あまりにも細い。
そして戦争は、何事もなかったかのように続いていく。
フーシュトクバ南方、撃墜地点一帯は低木と起伏が連なる荒野で
月明かりだけが地形の輪郭をかろうじて浮かび上がらせている。
救出予定の搭乗員は十名。
そのうち、救難信号が安定している者は六名。残り四名は信号が途切れがちで
生存しているかどうかは五分五分だった。
「救難部隊、行動開始」
低く抑えた声が、ヘッドセットを通して流れる。
地上では、特殊救難部隊が小隊単位で散開していた。
足取りは慎重で、装備は最低限。敵に見つかれば即交戦になる状況だが
最優先事項は発見されないことだった。
空では、低空を抑える形で航空部隊が待機している。
高度はDTSの射程を避けるため極端に低く、地形追従飛行で位置を保つ。
「チャーリー1、第一目標確認。生存者一名、軽傷」
「チャーリー2、こちらも確認。意識あり」
一人、また一人と、搭乗員が救出されていく。
担架に載せられ、無言でヘリへと運ばれる姿は、戦場の中で奇妙なほど静かだった。
六人目の救出が完了した時点で、指揮所は一瞬の安堵を覚えた。
だが、問題はそこからだった。
「……最後の二名、反応あり。だが位置が近すぎる」
救難信号が示す地点は、森と低地の境界線だった。
敵が哨戒を出していても不思議ではない場所だ。
「行くしかない」
短い判断の後、救出部隊は前進を続けた。
その時だった。
「待て……動きがある」
草を踏む音。
人影が、闇の中で揺れた。
次の瞬間、銃声が夜を裂いた。
「接触!敵だ!」
「撃て撃て!その木のところだ!」
曳光弾が低木を貫き、木片が飛び散る。
敵は特殊地上部隊だった。迷彩に身を包み、地形を完全に把握している。
「そいつは死んでる!おいていけ!」
怒号が飛ぶ。
「無理だ、まだ息がある!」
救難部隊は必死に反撃しながら、担架を引きずる。
だが敵の火力は強く、数も多い。
「こちらチャーリー1、限界です!後退します!」
「踏みとどまれ!空軍が援護に入る!」
「チャーリー1、応答しろ!どうした?!」
返事はなかった。
「……チャーリー1、戦死確実」
その報告と同時に、空からの声が割り込む。
「航空部隊へ!座標129・45・88に機銃掃射を頼む!」
「了解」
フーシェンは即座に機体を振った。
高度を保ったまま、目標地点へ機首を向ける。
「撃つ」
翼根の20ミリバルカンが火を吹いた。
低空を舐めるように弾幕が走り、茶色い地面が跳ねる。
土砂の中に、鮮やかな赤が散った。
敵の動きが、一瞬止まる。
「今だ、下がれ!」
救難部隊はその隙を突き、負傷者を引きずって後退する。
だがその時、別方向から閃光が走った。
「RPG!」
叫びは遅かった。
パンツァーファーストが、救難ヘリに直撃した。
爆発とともに機体が傾き、地面へ叩きつけられる。
「……っ!」
炎が上がる。
そこにいたのは、救助された搭乗員二名と、乗員六名。
「ヘリ1、応答しろ!」
返答はなかった。
戦場は、一気に収拾不能になる。
だがこれ以上留まることはできない。
「撤退!」
指揮官の命令で、残存部隊は後退を開始した。
空からの援護射撃が続く中、なんとか戦線を離脱する。
作戦は終わった。
基地に戻った後、簡潔な報告がなされた。
搭乗員十名中、生存四名。
救出中に死亡二名。
救難ヘリ撃墜により、搭乗員二名、救難要員六名が死亡。
合計六名が、帰ってこなかった。
誰も声を出さなかった。
数字だけが、重くそこに残る。
フーシェンは報告書を閉じ、しばらく動かなかった。
「……これが戦争だ」
誰に向けた言葉でもない。
ただの事実だった。
生き延びた者たちは、次の作戦に備えて動き始める。
失われた命を悼む時間は、与えられない。
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