装甲航空母艦信濃      南東の海へといざ参らん

みにみ

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チューク沖海戦

四空母炎上

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1944年3月9日、午前10時20分
トラック沖の空には、連合艦隊の第一次攻撃隊206機が編隊を組み
米軍の第58任務部隊へ向けて突進していた
信濃から発進した天山10機、彗星一二型甲10機
第三航空戦隊(瑞鳳、千代田、千歳)の零戦8機、零式艦上爆撃機40機、天山10機
第一航空戦隊(翔鶴、瑞鶴、大鳳)の零戦48機、天山一二型30機、彗星一二型甲50機
そして第二航空戦隊の隼鷹からの追加機で構成されたこの大編隊は
高度5,000メートルで整然と進んでいた。信濃の攻撃隊を率いる少佐が無線で指示を出した。

「編隊を維持しろ。敵空母が目標だ。零戦は戦闘機を押さえ、彗星と天山で一気に叩く!」

攻撃隊は雲の切れ間を縫い、敵艦隊へ急接近していた。

一方、米軍の第58任務部隊は、旗艦エンタープライズを中心に
空母ワスプ、バンカーヒル、ヨークタウンII、ホーネットII、軽空母プリンストン
戦艦アイオワ、ニュージャージー、重巡洋艦、駆逐艦を展開し攻撃準備を進めていた
午前10時20分ホーネットIIのレーダーが日本攻撃隊の接近を探知した。レーダー員が叫んだ。

「提督、敵機多数!方位240度、距離80キロ!」

司令官マーク・ミッチャー中将が艦橋で海図を睨み、状況を確認した
しかし、このタイミングは米軍にとって最悪だった
米海軍空母甲板では日本艦隊を攻撃するための
SB2Cヘルダイバー、TBFアベンジャーの発進準備が佳境に入っており
迎撃機を十分に用意できていなかった。参謀のジョージ・ハリス中佐が報告した。

「提督、迎撃可能なヘルキャットは軽空母
 上空警戒中の30機のみです!」

ミッチャーが即座に命じた。

「迎撃機を上げろ!攻撃隊の発進させて甲板を開けろ!」

プリンストンとベローウッドから、急遽ヘルキャット20機が発進
上空の直掩10機と合流したが
圧倒的な数の日本攻撃隊を止めるには力不足だった。


10時30分、日本攻撃隊が米艦隊の迎撃圏に突入した
ヘルキャット30機が高度4,000メートルで零戦56機と交戦を開始
零戦の機動性がヘルキャットを翻弄し
瑞鶴隊の零戦が一機を背後から捉え20ミリ機関砲で撃墜した
炎を上げて墜落するヘルキャットが海面に黒煙を残した

しかし、ヘルキャットの反撃も鋭く、零戦9機が被弾し
編隊から脱落した。彗星一二型甲7機と天山8機も
乱戦の中でヘルキャットの機銃に捉えられ、雲の下に消えた。藤田が無線で叫んだ。

「かかれ!米艦隊を叩き潰せ」

零戦隊の奮戦により、ヘルキャットの迎撃網は分断され
攻撃隊の主力182機が米艦隊上空へ突破することに成功した
米軍の迎撃機は数を減らし、残存機は燃料と弾薬の限界で撤退を余儀なくされた。


10時45分、日本攻撃隊が米艦隊の上空に到達した
ワスプ、バンカーヒル、ホーネットII、ヨークタウンII、プリンストンの甲板は
攻撃隊の発進準備で混乱していた
艦載機が振り落とされるので急激な転舵はできない
戦艦アイオワとニュージャージーの40cm砲は航空戦では役に立たず
艦隊の対空火力は5インチ両用砲とボフォース40ミリ機関砲、エリコン20ミリ機関砲に頼っていた

ミッチャーが艦橋で叫んだ。

「対空砲火を集中しろ!敵機を近づけるな!」

各艦の対空砲が一斉に火を噴き、空が曳光弾と爆発で埋め尽くされた
信濃の彗星一機が至近弾の衝撃波に巻き込まれ、翼を折って墜落
千代田の天山も高角砲の弾幕に捉えられ、爆発して破片を撒き散らした
合計31機(彗星10機、天山10機、零戦5機、零式爆戦6機)が対空砲に撃墜され海面に散った
しかし、残った151機は果敢に突入し、敵艦隊の心臓部へ迫った。

彗星一二型甲50機が、回避行動を取る敵空母に照準を合わせた
翔鶴の彗星隊長が無線で指示を出した。

「目標敵空母 投下準備!」

高度5,000メートルから急降下を開始した彗星一編隊が
ワスプの甲板を狙った。12発の五十番対艦爆弾が投下され
うち6発が命中。最初の2発が飛行甲板を突き破り、格納庫内で爆発した
炎が燃料庫に飛び火し、準備中のヘルキャットとアベンジャーが誘爆
ミッドウェー海戦での赤城、加賀、蒼龍の悲劇を彷彿とさせる火災がワスプを包んだ
甲板から黒煙が立ち上り、艦体が傾き始めた
消火員が消火に奔走したが、爆発は止まらず、格納庫は地獄と化した。

「ワスプ被弾!」

「Sit!回避行動を続けろ」

同じ状況が他の空母にも波及した
バンカーヒルの甲板に彗星の爆弾4発が命中し、格納庫内で誘爆が発生
ホーネットIIには3発、ヨークタウンIIには5発が命中し、それぞれ火災と爆発が艦を蝕んだ
4つの空母から黒煙が立ち上り、トラック沖の空を焦がした
ミッチャーはワスプの艦橋で、混乱する艦隊を見下ろし、歯を食いしばった。

「正規空母群五隻のうち四隻がジャップの旧式機にやられるだと…くそっ、対空火力を強化しろ!」

しかし、正規空母の一隻で旗艦のエンタープライズは辛うじて直撃を免れ、対空砲火を維持した。


彗星隊の攻撃が空母を壊滅状態に追い込む中
天山艦攻42機は機数の少なさを補うため、目標を絞った攻撃を敢行した
攻撃隊長が無線で指示を出した。

「ワスプとプリンストンを狙う。隊を4つに分け、2隊ずつ突入だ!」

ワスプはすでに火災で混乱しており、プリンストンは無傷で回避運動を続けていた
プリンストンを攻撃した2隊(天山20機)は、軽空母の俊敏な動きと集中した対空火力に阻まれ
全滅した。40ミリ機関砲の弾幕が天山を次々と撃墜し、低空で魚雷を投下する隙を与えなかった。

一方、ワスプを攻撃した2隊(天山22機)は、火災で弱った艦の隙を突いた
低空に降下し、魚雷3本を右舷に命中させた
水柱が上がり、ワスプの艦体が大きく揺れた。魚雷の爆発で機関室が浸水し
艦は航行不能に陥った。攻撃隊長が無線で報告した。

「ワスプに魚雷3本命中!敵空母、停止!」

しかし、この攻撃で天山10機が対空砲火に撃墜され、残存機は編隊を組み直して撤退を開始した。


11時15分、日本攻撃隊の攻撃が終わり、残存128機が米艦隊上空を離れた
ワスプは格納庫の誘爆と魚雷のダメージで戦闘不能
バンカーヒル、ホーネットII、ヨークタウンIIも火災と爆発で大きな損傷を負った
プリンストンは無傷だったが、艦隊全体の航空戦力は壊滅的打撃を受けた
日本側は彗星一二型甲23機、天山29機、零戦14機、零式爆戦6機を失い
合計72機の損失を被ったが、敵空母4隻を事実上無力化した戦果は大きかった。

信濃の艦橋では、航空隊からの連絡を聞いた阿部が頷いた。

「よくやった。敵の航空戦力を叩いたぞ。だが、反撃が来る。準備を急げ。」

山田が無線で各艦に連絡した。

「全艦、対空戦闘準備。敵の攻撃が迫っている!」

米艦隊のエンタープライズでは、ミッチャーが生き残った艦載機を再編成し、反撃を準備していた。

「まだ終わっていない。日本艦隊を叩く。攻撃隊を再発進させろ!」

トラック沖海戦は、第一次攻撃の成功で日本側が一時的に優勢を握ったが
米軍の反撃がすぐそこに迫っていた。両軍の次の動きが、戦局を決定する鍵となる
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