装甲航空母艦信濃      南東の海へといざ参らん

みにみ

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第二次マーシャル沖海戦

エニウェトク攻防戦

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1944年10月20日、トラック諸島東方海域

連合艦隊は、第一次マーシャル沖海戦時の陣形を踏襲し
水上打撃群と機動艦隊二隊の計3艦隊に分かれてトラック泊地から出撃した
戦艦大和、武蔵を中核に、空母信濃、翔鶴、瑞鶴、大鳳、隼鷹、飛鷹、瑞鳳、龍鳳が
航空戦力を展開。重巡洋艦高雄、愛宕、摩耶、軽巡洋艦矢矧、駆逐艦らが護衛についた。
信濃の艦橋では、艦長の阿部俊雄大佐が海図を睨み、索敵機の報告を待った。

「米軍の艦隊はクェゼリン攻略後、まだこの海域にいるはずだ。」

この日、日本海軍はトラック基地から二式飛行艇
信濃から未だ試作状態の高速艦上偵察機彩雲を投入し
トラック東方300マイルの海域を徹底的に索敵した
しかし、米軍の任務部隊――正規空母ホーネットII、プリンストン、フランクリン
軽空母4隻、戦艦コロラド、メリーランドなどを含む強大な艦隊は
巧みに雲に隠れ終日捕捉できなかった
信濃の通信室では、索敵機からの報告が届くたびに緊張が高まった。

「敵艦隊未発見。燃料半分、引き返す。」

阿部の苛立ちは募った。

「敵はどこだ…このままでは艦隊が不意打ちを食らう。」

副長の山田義雄中佐が海図を指差し、進言した。

「艦長、索敵範囲を400マイルに拡大し、夜間索敵も検討すべきです。」

阿部は頷き、通信士に命じた。

「全部隊に通達。索敵範囲を400マイルに拡大
 夜間索敵を準備。敵を見つけ次第、座標を報告しろ。」

艦橋では、通信士が無線を調整し、索敵機との連絡を維持
彩雲の偵察員が雲の切れ間を縫って低空飛行を試みたが
米軍艦隊の影すら捉えられなかった。阿部は海図に目を落とし、米軍の行動を推測した。

「クェゼリンを落とした米軍は、トラックを次に狙う
 雲を利用して接近しているはずだ。」

しかし、索敵機の燃料が尽き、次々と帰還。夕暮れが迫る中、成果はゼロだった。

通信室で、山田が新たな報告を伝えた。

「艦長、二式飛行艇がトラック東方350マイルで雲の濃い海域を確認
 米軍が潜んでいる可能性があります。」

阿部は即座に反応した。

「その海域に彩雲を集中させろ。夜間索敵の準備も急げ。」

だが、夜間索敵の準備は整わず、この日の捜索は成果を上げなかった
連合艦隊はトラック東方沖合で待機を続け
米軍の次の動きを予測できない状況に、阿部の焦りは深まった。

「トラックを守るには、敵の位置を掴まねばならん
 明日こそ捕捉する 夜間索敵を怠るな」

翌21日、午前7時
エニウェトク島の静寂は、米海兵隊約8,000人の上陸とともに破られた
戦艦コロラドとメリーランドの16インチ砲が、島の海岸線を徹底的に破壊
砲弾が砂浜を抉り、コンクリートのトーチカが崩れ、椰子の木が炎に包まれた
日本守備隊3,000人(指揮官:高田中佐)は
コンクリートのトーチカに立て籠もり
重機関銃や速射砲を乱射。米軍の第一波の揚陸艇5隻が爆発し、海兵隊員200人以上が死傷した。

高田中佐はトーチカの指揮所で、無線を握り、部下を鼓舞した。

「敵を海岸で叩け!一歩も引くな!トラックに時間を稼ぐんだ!」

守備隊の兵士たちは、銃眼から機関銃を撃ち
砂浜に上陸する米兵を次々と倒した
守備隊の若い兵士、田中一等兵は、トーチカで機関銃を操作しながら叫んだ。

「トラックのために、死んでも撃つぞ!」

しかし、米軍の艦砲射撃は止まず
F6Fヘルキャットのロケット弾攻撃がトーチカを直撃
コンクリートが崩れ、田中のいたトーチカは瓦礫と化した
彼を含む10人の兵士が即死し、守備隊の機関銃陣地は次々と沈黙
高田は無電でGFに報告した。

「此方エニウェトク守備隊 敵大部隊上陸
 敵艦隊ノ支援在リ 攻撃願ウ」

信濃の通信室で、艦長の阿部俊雄大佐は高田からの無電を聞いた
海図を睨み、即座に応答した。

「高田中佐、よく耐えた。航空隊を向かわせる
 艦載機の4分の1、100機を投入。陸上部隊を支援する!」

阿部は副長の山田義雄中佐に命じた。

「零戦、彗星、天山を準備。エニウェトクの守備隊を援護し、米軍の進撃を止めろ。」

山田は頷き、通信士に指示を伝えた。信濃の飛行甲板では
整備員たちが急ピッチで航空機を準備し、エンジンの轟音が響いた。


10月21日、午前10時。エニウェトク上陸の報を受けた日本海軍航空隊は
母艦の甲板を蹴って緊急出撃
零戦五二型甲40機、彗星一二型甲30機、天山一二甲型30機の計100機が
エニウェトクへ向かった
零戦の隊長宮野大尉はコックピットで操縦桿を握り隊列を率いた
その二番機には、林勇二飛曹が続き、操縦桿を握り締めた。宮野は機上無線で号令をかけた。

「全機、エニウェトクへ突撃!制空権を握り、敵上陸部隊を叩く!」

林は無言でバンクで答えた

午前11時、航空隊はエニウェトク上空に到着
米軍のF6Fヘルキャットはクェゼリン攻略に集中しており
エニウェトク上空の制空権は一瞬で日本側が握った
零戦40機が上空を制圧し、彗星30機が250kg爆弾を投下
海岸線に集結していた米海兵隊の陣地が爆発に包まれ、揚陸艇や食糧庫が炎上した
米軍の上陸部隊は800人以上の死傷者を出し進撃が一時停止
宮野は低空飛行を行い、米軍の砲陣地に機銃掃射を浴びせ、米兵を散らせた。

「これでいい!敵を叩け!」

林は宮野の右翼で20ミリ機関砲を連射
米軍の対空陣地を破壊し、砂浜に集まる海兵隊員を追い詰めた。彗星の隊長が無線で報告した。

「敵陣地に直撃!上陸部隊、混乱中!追加攻撃を!」

爆装した天山30機が第二波の爆撃を行い、揚陸艇9隻を破壊
爆弾が海面に炸裂し、巨大な水柱が上がった
エニウェトクの海岸は、爆煙と炎に覆われ高田中佐は崩れかけたトーチカから無線で叫んだ。

「航空隊、よくやった!これでトラックに時間が稼げる!」

守備隊の兵士たちは、航空隊の攻撃に勇気づけられた
残存する機関銃陣地から、米軍の揚陸艇に最後の射撃を浴びせた


しかし、米軍は迅速だった
エニウェトクでの日本航空隊の攻撃を確認した米艦隊は
ただちに残存艦載機部隊を発艦させ、撤退する日本艦載機隊を追った
F6Fヘルキャット60機、SB2Cヘルダイバー50機、TBFアベンジャー40機――計150機が
トラック泊地の連合艦隊に向け進撃を開始。米軍の任務部隊は
正規空母ホーネットII、プリンストン、フランクリンを中心に
戦艦コロラド、メリーランドの護衛下でトラック東方200マイルに展開していた

信濃の艦橋で、阿部は米軍の接近の報を受けた。通信士が叫んだ。

「艦長、敵艦載機100以上、艦隊に接近中!方位270度、距離100km!」

阿部は海図を叩き、命令した。

「総員戦闘配置!零戦隊、迎撃準備!トラックを守るぞ!」

信濃の飛行甲板では、整備員たちが急いで零戦を準備
エンジンの轟音が泊地に響き、対空砲の銃身が空を向いた。阿部は山田に指示した。

「目標は第一斉射で 6機撃墜かな」

林勇二飛曹は、エニウェトクから帰還したばかりの零戦で
再び出撃準備に入った。コックピットで
トラック沖海戦で散った佐々木健次少佐の笑顔を思い出した。操縦桿を握り締め、林は呟いた。

「俺が母艦を守る。絶対に負けねえ!」

宮野大尉は林の隣で零戦を準備し、手信号で激励した。

「林、トラックは俺たちが守るF6Fを叩け!」

米軍の艦載機150機は、トラック泊地への攻撃を目前に、雲間を縫って接近していた
日本連合艦隊は、戦艦大和、武蔵、空母信濃を中心に迎撃態勢を整えた
零戦隊は高度8,000フィートで待機し、進出してきた瑞鶴の零戦隊が迎撃の先鋒を担った
島風、時雨、雪風の駆逐艦が艦隊の外縁で対空砲火を準備
摩耶の防空巡洋艦としての対空火力が、敵機を迎え撃つ準備を整えた。

信濃の艦橋で、阿部は海図と無線を注視した
米軍の艦載機の進撃速度から、攻撃は数分以内に始まると予測された
通信士が新たな報告を伝えた。

「敵機視認!計150!」

阿部は頷き、艦隊全体に通達した。

「全艦対空戦闘用意」

エニウェトクの守備隊は、航空隊の支援で一時的に米軍の進撃を遅らせたが
島の命運は風前の灯だった。高田中佐はトーチカの瓦礫の中で
残存兵士を率いて最後の抵抗を続けた
海上では連合艦隊が米軍の艦載機150機を迎え撃つ準備を整え
戦いの火蓋が切られようとしていた。宮野と林の零戦は空ででエンジンを唸らせ
太平洋の空を守る決意に燃えていた。
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