米国戦艦大和        太平洋の天使となれ

みにみ

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太平洋の天使

朝鮮半島展開

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横須賀での短い寄港を終えた戦艦大和は
その巨大な船体に新たな使命を宿し、米海軍主力艦隊の一員として
戦火に包まれた朝鮮半島沖へと一路、針路を取った。
冷たい冬の太平洋の波を蹴立て、大和とそれに続く
「ミズーリ」、「ニュージャージー」をはじめとする護衛艦隊は
戦場の地平線を目指して力強く進んでいった。艦隊の司令部は
大和の投入が戦況を大きく打開すると確信しており、その期待は高まる一方だった。


1950年12月、朝鮮半島は、極めて厳しい局面を迎えていた。
9月に行われた仁川上陸作戦は、国連軍の戦況を劇的に好転させ
北朝鮮人民軍を壊滅状態に追い込んだ。国連軍は勢いを取り戻し
一気に北進を続け、鴨緑江にまで到達する勢いだった。
このまま戦争は年内にも終結するかに見えた。

しかし、その楽観的な見方は、すぐに打ち砕かれることになる。
10月下旬、突如として中国人民志願軍が参戦し、戦況は一変した。
数百万規模の兵力を擁する中国軍の参戦は、国連軍の計算を完全に狂わせた。
彼らは、圧倒的な兵力と、山岳地帯を利用した奇襲戦術で国連軍を押し戻し始めた。

さらに、朝鮮半島の冬は、国連軍にとって想像を絶する過酷さだった。
零下20度を下回る気温、降り積もる雪、そして凍結した地形は
兵士たちの士気を奪い、補給線を寸断した。凍傷による負傷者が続出し
装備の故障も相次いだ。このような冬季の厳しい気候は
国連軍の作戦行動を著しく困難にしていたのである。

国連軍は、中国軍の圧倒的な物量と、冬将軍の猛威にさらされ
再び戦況は膠着し、厳しい局面を迎えていた。各地で激しい戦闘が繰り広げられ
特に東部戦線では、地形の険しさから、国連軍の進撃は完全に停滞していた。
兵士たちの間には、疲労と絶望感が漂い始めていた。


この厳しい局面において、国連軍の進撃を最も阻んでいたのは
北朝鮮軍・中国軍が朝鮮半島の沿岸部、特に東海岸沿いの
山岳地帯に構築した強固な沿岸陣地であった。彼らは
日本の植民地時代に旧日本軍が構築した要塞や
第二次世界大戦中にソ連から供与された技術を基盤に
数年にわたって地下壕やトーチカ群を築き上げていた。

これらの陣地は、単なる塹壕ではなかった。

山岳地帯に掘られた地下壕
花崗岩質の堅固な山肌をくり抜き
何層にもわたるトンネルが掘られていた。
内部には、指揮所、兵舎、弾薬庫、医療施設までが備えられ
外部からの砲爆撃に耐えうるように設計されていた。
入り口は巧妙に偽装され、上空からは発見することが困難だった。

分厚いコンクリートで補強されたトーチカ群
沿岸部に点在するトーチカは、何メートルもの分厚いコンクリートと鉄筋で補強され
直接命中弾にも耐えうるほどの防御力を持っていた。
機関銃や対戦車砲が据え付けられ、海上からの上陸部隊や
内陸からの進攻部隊に対して、死角のない射撃を行えるように配置されていた。

巧妙な偽装陣地と伏兵
敵は、欺瞞戦術にも長けていた。本物の陣地を隠蔽し
偽の砲座や偽装網を設置することで、国連軍の航空偵察や砲撃を誘導し
真の防御拠点を守っていた。また、予想外の場所からゲリラ部隊が
奇襲を仕掛けてくることもあり、国連軍は常に神経をすり減らしていた。

国連軍は、これらの陣地を突破するために、陸上からの砲撃
航空機による爆撃、そして艦艇による艦砲射撃を試みていた。
しかし、既存の艦砲射撃では、容易に破壊できない代物だった。
米海軍の主力であるアイオワ級戦艦の40センチ砲弾も
その装甲貫徹力は優れていたが、地中深く掘られた地下壕や
分厚いコンクリートのトーチカ内部まで到達し、破壊するほどの威力はなかった。
砲弾は地表で炸裂し、クレーターを作るものの
敵の防御構造を完全に破壊するには至らなかったのだ。
航空機による爆撃も、天候に左右されやすく
また、山岳地帯の狭い目標をピンポイントで破壊することは困難だった。

国連軍の兵士たちは、堅固な敵陣地を前に、多大な犠牲を払っていた。
突破口を見つけられず、戦線は膠着し、撤退を余儀なくされる部隊も出ていた。
前線からの報告は、日増しに深刻さを増し、司令部には焦燥感が募っていた。


この絶望的な状況下で、国連軍司令部は
大和の存在に唯一の希望を託した。
その背景には、大和の46センチ主砲が持つ、世界唯一の破壊力があった。

圧倒的な破壊力: 大和の46センチ主砲は
その口径において世界のどの艦砲をも凌駕していた。
一発の砲弾の重さは1.5トンにも及び、これまでの艦砲弾とは
比較にならない運動エネルギーを持っていた。

零式通常弾の特質: 特に、大和の主砲で用いられる零式通常弾は
対艦戦闘だけでなく、対地砲撃においても極めて有効な特性を持っていた。

地中貫徹力: この砲弾は、その圧倒的な質量と堅牢な構造により
土壌やコンクリート、岩盤を深く貫通する能力に優れていた。
米軍の40センチ砲弾が地表で炸裂するのに対し、零式通常弾は
敵の地下壕やトーチカの内部まで食い込み、そこで炸裂することが期待された。
これにより、敵の防御構造の深部に致命的な打撃を与えることが可能となる。

炸薬量の多さ: そして、その砲弾内部に充填された炸薬量は
米軍の同口径の砲弾と比較しても格段に多かった。
目標の内部で炸裂した際の爆発力は凄まじく、内部にいる敵兵を一網打尽にし
補給物資や通信設備などもろとも吹き飛ばすことができる。

司令部では、大和の46センチ主砲が、これまでの艦砲では歯が立たなかった
敵の堅固な沿岸陣地や地下壕を、文字通り「根こそぎ」
破壊することができると見込んでいた。その破壊力は
物理的な効果だけでなく、敵兵の士気を完全に打ち砕く心理的な効果も期待された。

パーカー少佐は、横須賀を出港する際、徳永特務指揮官と有賀特務大佐に語りかけた。
「徳永中尉、有賀大佐。我々が向かう戦場は
 想像以上に厳しい。
 しかし、この艦と貴方方の知識が、戦況を打開する唯一の希望だ。」
徳永は静かに頷き、有賀は無言で前方を見据えていた。
彼らの瞳には、大和の持つ潜在能力への確信と
この困難な任務を必ず成し遂げるという決意が宿っていた。

大和は、その巨体を揺らしながら、荒れる冬の海を切り裂いていく。
艦隊は、戦場の空気が次第に重くなっていくのを肌で感じていた。
遠くから聞こえる砲声、そして時に見上げる空を通過する偵察機の姿が
戦場への距離が縮まっていることを告げていた。
大和の艦橋では、レーダーが回転し、通信機器からは緊迫した情報が飛び交っていた。
朝鮮半島沖の戦場は、すでに大和の到着を待っていた。
そして、大和の46センチ主砲が、再びその鋼鉄の咆哮をあげる時が
刻一刻と近づいていたのである。
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