米国戦艦大和        太平洋の天使となれ

みにみ

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太平洋の天使

太平洋の天使

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朝鮮半島の沖合では、戦艦大和の巨大な主砲が
北朝鮮軍の堅固な沿岸陣地を次々と粉砕し
国連軍に希望をもたらしていた。
しかし、敵もまた、この「地獄からの使者」を排除すべく
ありとあらゆる手段を講じて反撃してきた。
執拗な砲撃、神出鬼没な特攻艇、そしてソ連製航空機による波状攻撃は
大和と乗組員たちを極限状態へと追い詰めた。
この苛烈な戦場において、大和の運命、ひいては国連軍の命運を分けたのは
艦長であるパーカー少佐と、特務指揮官・徳永栄一特務中尉
二人の間に築かれた完璧な連携と絶対的な信頼であった。


戦況が激化し、大和が絶え間ない攻撃に晒される中で
徳永栄一の真価は遺憾なく発揮された。
彼は、日米混成の乗組員を統括しつつも
自らの持つ日本海軍時代の緻密な知識と経験を総動員し
刻一刻と変化する戦況に対応するための的確な操艦や回避行動を
パーカー少佐に進言した。

ある夜間、大和が沿岸砲撃任務を遂行中に、米海軍の最新ソナーが
不気味なシグナルを探知した。
「魚雷接近!左舷後方より、急速接近!」
ソナー員からの緊迫した報告が艦橋に響き渡った。
敵潜水艦からの魚雷攻撃。この巨艦にとって
水中攻撃は最も警戒すべき脅威の一つだった。

艦橋全体に緊張が走り、米軍の操舵員たちは反射的に回避行動に移ろうとする。
しかし、徳永は、即座に、そして冷静に状況を判断した。
「少佐、面舵いっぱいです! 艦の慣性を利用し
 この角度で回避すれば、魚雷のコースを逸らせます!」
彼の声は、緊迫した艦橋の中で、驚くほど明確に響き渡った。

大和は、その巨大な船体が持つ独特の慣性や
機関の反応速度を徳永は熟知していた。
彼は、他の米軍操舵員には理解できないような
ミリ単位の操艦指示を出すことができたのだ。一般的な大型艦艇の操艦では
急激な回避行動はかえって危険を招くこともあるが
徳永は、大和の持つポテンシャルを最大限に引き出すための
唯一無二の最適解を瞬時に導き出した。彼の指示は、単なる操艦技術を超え
まるで大和の船体そのものと会話しているかのような
深い一体感と知識に基づいていた。それは、大和建造時から
彼女と共に育ち、その魂を知り尽くした者だけが為せる「神業」であった。

彼の言葉は、艦橋の米軍士官たちにとって、一見すると直感に反するものに聞こえることもあった。だが、徳永の顔に浮かぶ揺るぎない確信と、これまで彼が示してきた数々の的確な判断が、米軍士官たちの不信感を拭い去るに十分だった。特に、パーカー少佐は、徳永の言葉に絶対的な信頼を置いていた。


パーカー少佐は、徳永の進言を微塵も疑うことなく
即座に採用した。彼の決断力は驚くほど迅速であった。
「面舵いっぱーい! 急速転舵!」
パーカーの命令は、徳永の言葉を正確に反映し
艦橋のクルーに淀みなく伝えられた。操舵員は即座に面舵を切り
機関部は全力で艦を旋回させるために出力を調整した。
大和の巨大な船体が、ゆっくりと、しかし確実に対水面を切り裂いていく。
艦全体が大きく傾き、艦橋のクルーたちは手すりにしがみついた。

魚雷は、大和の左舷をかすめるように通過し、艦尾で巨大な水柱を上げた。
間一髪の回避成功だった。艦橋全体に、安堵のため息が漏れた。
パーカーは、深く息を吐き、徳永に視線を送った。
徳永は、静かに頷き返した。言葉はなかったが
二人の間に通じる、確かな信頼感がそこにあった。

この成功は、単なる個々の能力の高さを示すものではなかった。
二人の間には、もはや国籍や立場を超えた、完璧な連携プレイが確立されていた。
 かつての敵国の将校と、その艦の全てを知り尽くす日本人特務指揮官。
彼らの間には、日米という国境を越え、異なる文化
異なる軍事思想を超越した、互いへの絶対的な信頼が築かれていた。
この信頼こそが、緊迫した戦場において
大和という巨大な兵器を動かす原動力となっていたのである。

同様に、ソ連製航空機による執拗な空襲に対しても
徳永の助言は極めて有効だった。Tu-2爆撃機やMiG-15戦闘機が
編隊を組んで襲い来る中、徳永は、日本海軍が培ってきた
対空戦闘のノウハウ、特に艦隊防空における艦の配置や
対空砲火の最適な集中方法、そして敵機の侵入経路を予測しての
回避行動をパーカー少佐に進言した。

「少佐、敵編隊は北西からの進入です。このままでは、太陽を背にした
 急降下攻撃を受ける可能性があります。面舵に舵を取り
 敵機に艦の側面を向けることで、対空砲火の集中を最大化できます!」
パーカーは、即座に彼の進言を受け入れ、大和は増強された対空火器と共に
猛烈な弾幕を形成した。ボフォース40㎜機関砲や
九八式長10cm連装高角砲が火を噴き
敵機は次々と煙を上げながら墜落していった。

その結果、大和は、間一髪で魚雷を回避し、ソ連製航空機による執拗な空襲も
増強された対空火器と徳永の助言による的確な回避行動によって
大きな損害を出すことなく切り抜けていった。 
幾度となく危機を乗り越えるたびに、艦内の日米乗組員たちの間には
得も言われぬ連帯感が生まれていった。
彼らは、互いの命を預け合う中で
国籍や過去のしがらみを超えた、深い絆を育んでいたのである。

大和は、この幾多の危機を乗り越える中で
単なる兵器以上の存在へと昇華していった。
その圧倒的な火力は、閉塞感に覆われ、疲弊しきっていた国連軍に
具体的な突破口と希望をもたらした。大和の46センチ主砲の砲撃によって
これまで難攻不落とされていた多くの敵陣地が破壊され
陸上部隊の進撃が大きく進展した。その存在は
戦場の流れを根本から変える「切り札」として、国連軍の誰もが認めるものとなっていた。

そして、その強靭な防御力は、兵士たちに安心感を与えた。
彼らは、大和がそこにいる限り、敵の攻撃から自分たちが守られていると感じた。
砲撃支援を受けた陸上部隊の兵士たちは
大和の巨体を遠望するたびに、安堵のため息を漏らしたという。
「ヤマトがいる。これで大丈夫だ。」彼らの間では
いつしかそんな言葉が交わされるようになった。

米兵たちは、いつしか大和を「太平洋の天使」と呼び始めた。
それは、かつて敵国の象徴であり、恐るべき存在であった巨艦が
今、絶望的な状況下の国連軍に希望をもたらし、多くの命を救うための船として
新たな意味を持つようになった瞬間であった。
皮肉なことに、大和の再生は、日米の軍事協力の象徴となり
朝鮮戦争における自由世界の希望の光となったのだ。

徳永とパーカー、そして日米の乗組員たちは、この「天使」を動かすために
国境を越えて一つになっていた。彼らの絆は、戦火の中でさらに深まり
大和の鋼鉄の咆哮は、もはや単なる爆音ではなく、遠く離れた故郷と
苦しむ人々への「希望の歌」となって、朝鮮半島の空に響き渡ったのである。

大和の艦橋には、相変わらず星条旗が翻っていたが
その旗の下には、異なる国の兵士たちが、同じ目的のために肩を並べていた。
彼らの協力は、単なる戦術的な成功に留まらず、かつての敵同士が
共通の理念のために力を合わせるという
新たな時代の到来を予感させるものであった。
そして、大和は、その象徴として、朝鮮半島の海を力強く進み続けていた。
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