蒼空のアリア

みにみ

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序章

旧世界

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物語は、人類が経験した最大の悲劇
核戦争後の世界がどのようにして再構築されたのかという
壮大な歴史の概説から幕を開ける。かつて地球を覆い尽くしていたのは
輝かしいハイテク文明だった。その文明は、高度な科学技術と
無限の可能性を秘めていたが、同時に人類の愚かさをも内包していたのだ。
そして、その愚かさが臨界点に達した時
文明は一瞬にして核の炎によって焼かれ、すべてが灰燼に帰した。
摩天楼は溶解し、煌びやかな都市は放射能に汚染された瓦礫の山と化し
地球の生態系は深刻な打撃を受けた。人類が築き上げた英知の結晶は
自らの手によって、あっけなく破壊されたのだ。

この絶望的な状況の中で、奇跡的に生き残った人々はごくわずかだった。
彼らは焼け野原となった大地を彷徨い、飢えと渇き
そして放射能という見えない脅威に常に晒されていた。
肌の色も、話す言葉も、信じる神も異なる人々が
ただひたすらに生き残るために手を取り合ったのだ。
かつての国境線や民族の壁は意味をなさず、彼らは集落を作り
互いに助け合いながら、次世代へと命を繋ぐことに必死だった。
それは、まさに人類の存続をかけた、壮大な、そして過酷なサバイバルだったのだ。

長い、途方もない年月が流れた。数え切れないほどの世代がその命を紡ぎ
その過程で、かつての荒廃した大地には再び文明の萌芽が見え始めた。
点在していた原始的な集落は、徐々に発展し、人々が集い
知識を共有する小さな村へと成長していった。彼らは
旧世界の遺跡から得られた断片的な情報や、口頭伝承として伝えられた知識
そして自らの経験から、失われた技術を少しずつ掘り起こし
新たな技術を生み出していった。道具はより精巧になり、生活は豊かになっていったのだ。

しかし、その文明の再興は、皮肉なことに
人類が持つ古くからの悪癖をも同時に復活させた。
かつて国境線という概念が消滅し、民族間の対立が一時的に影
を潜めたはずの世界に、再び国家という枠組みが形成されたのだ。
人々は自らの共同体を「国」と呼び、その領域を主張し始めた。
そして、その国を守るという大義名分のもと
あるいは隣国を支配しようとする野心のもと、軍隊が生まれるのも時間の問題だった。

初期の軍隊の戦術や装備は、まるで旧世界の
歴史書から飛び出してきたかのような、原始的な様相を呈していた。
兵士たちは、手製の粗末な鎧を身につけ、錆びついた剣や
先を研ぎ澄ませた槍を手に、互いに肉弾戦を繰り広げたのだ。
密集した陣形を取り、鬨の声を上げながら敵陣に突撃する光景は
まさに前近代の戦場そのものだった。だが、人類の技術進歩は
その原始的な時代を驚くほど速く過去のものとした。
剣と槍による白兵戦の時代はあっという間に終わりを告げ、次の時代が到来した。
それは、遠距離からの攻撃を可能にする弓矢の時代だった。
熟練した弓兵の放つ矢の雨は、敵の隊列を乱し、戦場に混乱をもたらした。
さらに、巨大な石を飛ばし、敵の防衛線を粉砕する投石器も開発され
戦場の様相は大きく変化していったのだ。

技術の発展は、まるで坂道を転がり落ちるように止まらなかった。
旧世界の遺跡から発見された資料や、新たな科学的発見によって
銃が誕生した。金属の塊の弾丸を火薬の爆発力で射出するその革新的な兵器は
瞬く間に戦場の主役となったのだ。銃の登場は、戦術を根本から変えた。
個々の兵士の火力が格段に向上し、遠距離からの精密な射撃が可能になったことで、
かつての密集陣形は無意味と化した。
次に現れたのは、巨大な破壊力を持つ大砲だった。
遥か遠く離れた場所から敵陣を砲撃できる大砲は
堅固な要塞戦において絶大な威力を発揮し、城壁をも粉砕する
破壊力で戦場の地形すら変え得る存在だった。
そして、海上での覇権を争うため、重厚な装甲に覆われ
巨大な大砲を搭載した軍艦が建造された。黒煙を吐きながら海上を自在に移動し
轟音を響かせながら大砲を撃ちまくる軍艦は、まさに移動する海の要塞だったのだ。
これにより、制海権の概念が生まれ、海上交易路の確保が国家の存亡を左右するまでになった。

しかし、これらの陸海を制する兵器の発展をもってしても
戦争の様相は完全なものではなかった。真の革命は
最終的に空から訪れたのだ。戦争の規模が拡大し
より広範な領域を支配する必要性が生まれたとき
人々は広大な空に目を向けた。もはや、陸や海だけを制すれば
良いという時代ではなかった。上空を制する者が、戦場全体を支配する。
陸海の兵力展開、物資輸送、情報収集
そのすべてを円滑に進めるためには、空からの脅威を排除し
あるいは空からの優位を確立する、「制空権」の確保が不可欠であることが
戦争の経験から痛感されるようになったのだ。

そして、その制空権を確保するための兵器として
航空機が驚くほどの速さで発展していった。初期の簡易な偵察機は
敵の陣地や兵力配置を上空から確認するだけの存在だったが
すぐにその戦略的価値が認識された。やがて、敵の偵察機を撃墜し
自国の空を守るための戦闘機が開発され、さらに敵の施設や
軍隊を上空から破壊する爆撃機も登場した。航空機は
たった数十年で、戦争の主役の一角を担う存在へと目覚ましい進化を遂げたのだ。

旧世界が滅びてからわずか400年。
人類は、かつての過ちを繰り返すかのように
再び空を舞台にした激しい戦いの時代へと足を踏み入れていた。
この世界の物語の主人公は、その空を舞い、戦いの運命を切り開く
扶桑皇国の皇国海軍航空機隊、第403飛行隊「小春隊」一番機パイロット
最上サツキなのだ。彼女は、この新たな時代の空を
自らの愛機「狂燕」と共に駆け抜けていくことになる。
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