【本編完結】政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません

七夜かなた

文字の大きさ
148 / 266
第十一章

2★

しおりを挟む
その後、国王陛下の執務室に両殿下とともにバーレーン捜索の報告を聞くために集まった。他には宰相のルトリッツ、治安部隊のメルカフなど総勢十名が集まった。

「それでは報告を聞こうか」

陛下が議長となり報告が行われた。

バーレーンは既に国境付近にはおらず、その足取りは消えたように思われた。しかしその後の調べでどうやら密かに王都へと向かったことがわかった。

「一人ではまず王都へ入る城門を潜ることはできないでしょう」

城門は四方にある。それぞれに荷馬車が通る大門と人が通る通用門がある。夜になると出入りは厳重だが、昼間は大勢が利用するため検問は必要最低限しか行われない。それでも人は一人一人手形を確認していくので、怪しい者はすぐ見つかるが、荷物を積んだ荷馬車はひととおり確認はするだけで荷物のひとつひとつまでは確認しない。信用のある商人の荷馬車ならもっとおざなりになる。

「だとすれば荷馬車の方か……」
「今現在四方の城門を潜った荷馬車の記録を、王都に拠点を置く者の分から洗っておりますが、都に出入りする数は膨大ですからすぐにはいきませんが」
「更にカメイラの方面で手を広げている者を中心に探してはどうか?彼の者が何の伝もない者を頼るとは思えない」

「その商人はなぜバーレーンを匿うのでしょう。最早敗戦の将も同然。国にも彼の味方となる者はすでにいない筈です」
「バーレーンにはまだ利用価値がある……だから今も匿っているのではないでしょうか」
「だとするなら、まだ火種は残っていると考えられます」

また戦争が始まるかもしれない。それはこの場にいる誰もが避けたいと思っていることだ。

報告が終わり一旦は解散となり、半分はすぐに持ち場へと戻った。

「リンドバルク、その後どうだ?」

自分もその場を去ろうとしていたところに陛下に声をかけられた。

「陛下に言われたとおりヒギンスに連絡を取り、例の男と接触を試みているところです」
「そうか、そちらも引き続き頼む。バーレーンのことは国家間の問題ではあるが、そちらもことと次第によっては由々しき問題だ。また進捗があれば報告して欲しい。それで彼女はどうだ。変わりないか?」

陛下はもちろん彼女が今現在前世の人格を持って行動していることを知らない。
他にも人はいるため、他の者に不自然に思われない程度の距離を取って小声で話した。

「手紙は読みましたが、今のところ大きな変化はございません。ただ、少しずつ記憶を取り戻しつつあるようです。デビュタントの夜のことなどを語ってくれました。それについては先日の夜会でルクレンティオ侯爵家のヴァネッサ嬢から少し状況を聞いていたようです」
「ヴァネッサ……あの娘か……あちこちの夜会を渡り歩いているそうだな」
「そうですか……ずっと戦地におりましたし、王宮での先日の夜会以降、そういうものには参加しておりませんから。以前はよく警備中に話しかけられましたが」
「ふ……あの小娘の魂胆はわかりきっている。そなたを虜にでもできると思っていたのだろう」
「もしかして……彼女が近づくのをご覧になっていたのですか?」
「たまたまだ。たまたま目にしたことがある位だ。もっとも彼女だけではなく、何人かの令嬢方に未亡人、時には既婚者もそなたの目に止まろうと意識していた。それにまったく気づいていないそなたの素っ気なさが愉快だったぞ」

陛下が気づいていたなら、周りにはもっと気づかれていたということだ。自分がいかにそういうことについて鈍感だったか改めて知った。

「まったく気づいておりませんでした。以後、気を付けます。変に彼女に誤解されては困りますから」
「そう気負うな。これまで通りでよいではないか。彼女たちの無駄な努力が憐れに思えるが、どうせそなたには彼女しか目に写っておらんだろう」
「………確かに……」

少し考えて頷いて答えると、陛下が目を見開いた。

「いかがなされましたか?」
「………半分冗談で言ったのだが、まさか本気で答えるとは」
「そうなのですか?」
「お二人で何を話されているのですか?」

両殿下が近づいて訊ねた。

自分の私的な話が中心とは言え、陛下との会話の内容を自分から伝えるわけにもいかず、陛下の方をちらりと見る。

「夫婦仲良くやっているか訊いていた。どうやら卿はこれまで女性たちに色目を使われてきてもなびかなかったのは、彼女たちの意図をまったく汲んでいなかったようだ。今後も奥方以外全く目に入らないであろうと話していた」

陛下の言葉を聞いて二人が互いに目配せしあった。

「ああ……そうなのですか」
「ある意味彼女たちが可哀想になります。何を好んでこの朴念仁に」
「この顔に騙されているのでしょう」
「いや、兄上。彼女がかなり遣り手なのかもしれませんよ。今まで誰も成し得なかった偉業を達成しているのですから」

オリヴァー殿下が左肩に手を置く。そこは彼女が破瓜の痛みとともに噛んだところだ。やはり先ほど二人には見られていて、それが誰が付けたものなのか気づかれいたようだ。

しかし二人も時と場所を考慮し、それ以上のことは何も仰らなかった。私たちがそれなりに関係を築きつつあることを理解してくれていればそれでいいと思った。
しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...