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第十三章
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命の消えたバーレーンに抱き起こされていたクリスティアーヌの体がドサリと寝台に落ちる。
「クリスティアーヌ」
慌てて向こう側から駆け寄り彼女の身を起こすが、彼女は何の反応もしない。目は開いているのにまるで意識がなく、目尻や頬には幾筋もの涙が乾いた跡があり、彼女がどれ程の苦しみを味わったのかと考えると胸が張り裂けそうになる。
「あ、アレックスさまぁぁぁぁ!」
バーレーンにさっきまで抱かれていた女が意識を取り戻し、起き上がって串刺しになったのを見て叫んだ。
「ああああーーー」
女がこちらに向かって裸のまま素手で立ち向かおうとして、ナタリーがそれを取り押さえる。
「彼女に何をした?これはどういうことだ?」
ナタリーに上から押さえつけられ、俯せになって下から女が睨み付ける。
「その女はアレックス様の香と体液を注がれて息をしているだけの人形よ!いい気味よ……夢の中で……ずっと、生き続ければいいわ」
憎悪にまみれた瞳で毒を吐く女の首筋にナタリーが手を当て気絶させる。
「★☆×▲□★」
ぼーっとしたままクリスティアーヌが何かを話しているが、意味不明というよりは、何処かの外国の言葉のようにも聞こえる。
「奥様……」
「閣下、大丈夫ですか、女性の叫び声が聞こえましたが奥様ですか!」
扉の向こうからギオーヴたちが心配して声をかける。
「大事ない。クリスティアーヌは見つけた。叫び声は別の者だ」
叫び声でも何でも聞きたかったが、今はこうして温かい体に触れることだけでも感謝しなければならない。
「馬車の手配をしろ。それと一人我が家へ走り、寝室の用意と医師の手配をしろ」
「畏まりました!」
バタバタと扉の向こうで何人かが指示を受け走って行く。
彼女の生気のない体を横たえ、自分の上着を脱いで巻き込む。
「閣下、これも」
「すまない」
ナタリーも自分の上着を脱いで腰から下に巻き付ける。
「ギオーヴ……入ってこい」
二人で彼女の体に服を巻き付けてからギオーヴたちに声をかける。
「う……」
串刺しにされて上を向いたまま絶命しているバーレーンと裸で俯せになっている女を見て、入ってきたギオーヴたちが一瞬たじろぐのを見ながら、クリスティアーヌの体を抱き抱える。
「その男はカメイラ国から手配が出ている、アレックス・バーレーンだ。モーシャスが匿っていた。その女は……恐らくケイトリンという女だ。そっちは気絶しているだけだ」
バーレーンの背中から流れた血が刃を伝い寝台には既に血溜まりが出来ている。
焚き染められていた香は薄くなっているが、長時間いると頭がおかしくなりそうだ。
「奥様は……」
自分の胸に引き寄せ彼らには顔は見えないが、だらりと力なく垂れた腕を見てギオーヴたちが心配して訊ねる。
ぎゅっと抱き締める腕に力を込めて顔を見下ろすが、彼女の瞳は相変わらず虚ろだった。
「バーレーンが何か薬を盛ったようだ。カメイラに使者を送って、その辺りも情報を集めなくてはなるまい」
ナタリーに気絶させられる前に女は、この香とバーレーンの体液がどうのと言っていた。
カメイラが何か隠しているのか、そのことも探る必要がある。
横抱きに彼女を抱え玄関口に辿り着くと、馬車が丁度走り込んできた。
既に事態はこちらが掌握し、全員がそこに集まっていた。
「閣下」
びしりとアッシュハルクが敬礼する。
「奥方様は?」
抱き抱えられている彼女を見て、彼が様子を訊ねる。
「何とか無事だ」
無事と言えるのかどうかわからないが、生きてはいる。後は医者にみせてみないことにはわからない。
「後は任せていいか?」
馬車に乗り込みギオーヴやアッシュハルクを振り返る。
「もちろんです。お任せください」
「頼もしい部下がいて安心だ」
「もったいないお言葉です」
膝にクリスティアーヌを乗せ、できるだけ揺れないよう馬車を走らせたので通常よりも到着に時間がかかってしまった。既に早馬で報せを受けたダレクたちが段取りを終え、スベンだけでなくベイル氏まで待ち構えていた。
「これは……何か我々の知らないものの中毒ですね」
スベンが言いベイル氏も頷く。
「わからない?」
「王宮の医者団にも確認しますが、使っていたのはカメイラの者だと言うなら、そちらにも問い合わせした方がいいでしょう」
「その件は既に指示を出してある。それで、彼女は?彼女は正気に戻るのか?」
「取りあえず、中毒の一般的な処置はしまます。煙を吸ったのと口から何かを飲まされたようですから、胃を洗浄します。それから……」
「それから?」
ベイルが言い澱み、スベンと顔を見合わす。
「何だ?何かあるのか?」
「ご夫君には辛いことですが……」
「何だ?」
「…………下からも物質を入れられた可能性があります」
申し訳なさそうにベイルが言う。それが何を意味するのかわからないわけではない。
ーここまでやってようやく取り戻した奥方がもう他の男のお手付きになっていたら?それでも取り戻したいか。
ウェストに言われた言葉が甦った。
「クリスティアーヌ」
慌てて向こう側から駆け寄り彼女の身を起こすが、彼女は何の反応もしない。目は開いているのにまるで意識がなく、目尻や頬には幾筋もの涙が乾いた跡があり、彼女がどれ程の苦しみを味わったのかと考えると胸が張り裂けそうになる。
「あ、アレックスさまぁぁぁぁ!」
バーレーンにさっきまで抱かれていた女が意識を取り戻し、起き上がって串刺しになったのを見て叫んだ。
「ああああーーー」
女がこちらに向かって裸のまま素手で立ち向かおうとして、ナタリーがそれを取り押さえる。
「彼女に何をした?これはどういうことだ?」
ナタリーに上から押さえつけられ、俯せになって下から女が睨み付ける。
「その女はアレックス様の香と体液を注がれて息をしているだけの人形よ!いい気味よ……夢の中で……ずっと、生き続ければいいわ」
憎悪にまみれた瞳で毒を吐く女の首筋にナタリーが手を当て気絶させる。
「★☆×▲□★」
ぼーっとしたままクリスティアーヌが何かを話しているが、意味不明というよりは、何処かの外国の言葉のようにも聞こえる。
「奥様……」
「閣下、大丈夫ですか、女性の叫び声が聞こえましたが奥様ですか!」
扉の向こうからギオーヴたちが心配して声をかける。
「大事ない。クリスティアーヌは見つけた。叫び声は別の者だ」
叫び声でも何でも聞きたかったが、今はこうして温かい体に触れることだけでも感謝しなければならない。
「馬車の手配をしろ。それと一人我が家へ走り、寝室の用意と医師の手配をしろ」
「畏まりました!」
バタバタと扉の向こうで何人かが指示を受け走って行く。
彼女の生気のない体を横たえ、自分の上着を脱いで巻き込む。
「閣下、これも」
「すまない」
ナタリーも自分の上着を脱いで腰から下に巻き付ける。
「ギオーヴ……入ってこい」
二人で彼女の体に服を巻き付けてからギオーヴたちに声をかける。
「う……」
串刺しにされて上を向いたまま絶命しているバーレーンと裸で俯せになっている女を見て、入ってきたギオーヴたちが一瞬たじろぐのを見ながら、クリスティアーヌの体を抱き抱える。
「その男はカメイラ国から手配が出ている、アレックス・バーレーンだ。モーシャスが匿っていた。その女は……恐らくケイトリンという女だ。そっちは気絶しているだけだ」
バーレーンの背中から流れた血が刃を伝い寝台には既に血溜まりが出来ている。
焚き染められていた香は薄くなっているが、長時間いると頭がおかしくなりそうだ。
「奥様は……」
自分の胸に引き寄せ彼らには顔は見えないが、だらりと力なく垂れた腕を見てギオーヴたちが心配して訊ねる。
ぎゅっと抱き締める腕に力を込めて顔を見下ろすが、彼女の瞳は相変わらず虚ろだった。
「バーレーンが何か薬を盛ったようだ。カメイラに使者を送って、その辺りも情報を集めなくてはなるまい」
ナタリーに気絶させられる前に女は、この香とバーレーンの体液がどうのと言っていた。
カメイラが何か隠しているのか、そのことも探る必要がある。
横抱きに彼女を抱え玄関口に辿り着くと、馬車が丁度走り込んできた。
既に事態はこちらが掌握し、全員がそこに集まっていた。
「閣下」
びしりとアッシュハルクが敬礼する。
「奥方様は?」
抱き抱えられている彼女を見て、彼が様子を訊ねる。
「何とか無事だ」
無事と言えるのかどうかわからないが、生きてはいる。後は医者にみせてみないことにはわからない。
「後は任せていいか?」
馬車に乗り込みギオーヴやアッシュハルクを振り返る。
「もちろんです。お任せください」
「頼もしい部下がいて安心だ」
「もったいないお言葉です」
膝にクリスティアーヌを乗せ、できるだけ揺れないよう馬車を走らせたので通常よりも到着に時間がかかってしまった。既に早馬で報せを受けたダレクたちが段取りを終え、スベンだけでなくベイル氏まで待ち構えていた。
「これは……何か我々の知らないものの中毒ですね」
スベンが言いベイル氏も頷く。
「わからない?」
「王宮の医者団にも確認しますが、使っていたのはカメイラの者だと言うなら、そちらにも問い合わせした方がいいでしょう」
「その件は既に指示を出してある。それで、彼女は?彼女は正気に戻るのか?」
「取りあえず、中毒の一般的な処置はしまます。煙を吸ったのと口から何かを飲まされたようですから、胃を洗浄します。それから……」
「それから?」
ベイルが言い澱み、スベンと顔を見合わす。
「何だ?何かあるのか?」
「ご夫君には辛いことですが……」
「何だ?」
「…………下からも物質を入れられた可能性があります」
申し訳なさそうにベイルが言う。それが何を意味するのかわからないわけではない。
ーここまでやってようやく取り戻した奥方がもう他の男のお手付きになっていたら?それでも取り戻したいか。
ウェストに言われた言葉が甦った。
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