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第二章 想像しなかったとばっちり
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「お待たせ致しました」
ベルテがエンリエッタと共に父の待つ応接室に向かうと、そこには父とディラン、そして他に男性一人と女性が二人がいた。
「来たか」
男性と女性の一人は夫婦で、ベルクトフ侯爵夫妻だった。そして女性のもう一人はシャンティエ嬢だった。
この面々が揃っていると言うことは、アレッサンドロとシャンティエ嬢の婚約破棄後のことが議題だろう。
ただ当事者であるアレッサンドロはこの場にいない。
「エンリエッタ、ご苦労だったな」
現われたベルテの姿を見て、その出来栄えぶりに国王は満足げに頷いた。
「でしょう? でもそれほど手は加えていませんのよ。ベルテ様は元がよろしいから」
「余計なことは言わなくていい。早く座りなさい」
言われて二人はソファに腰を下ろす。
国王が一人中央に座り、一方のソファの端にエンリエッタが、その隣にディランが座り、ベルテはディランの隣だ。
エンリエッタの向かい側にベルクトフ侯爵とその妻が続き、その隣、ベルテの向かい側にシャンティエ嬢が座っている。
「姉上、かなり盛りましたね」
ディランが軽口を叩いたのを、ベルテはじろりと睨み返した。
「後一人来るまでもう暫く待て」
ベルテ達が最後だと思ったが、他にもまだ来ると聞いて、ベルテは誰だろうと小首を傾げた。
まさか正妃のアーネローゼではないだろうとは思う。
彼女は既にアレッサンドロと離宮へ移ったと聞く。
となればベルクトフ侯爵側だろうか。
ベルクトフ侯爵夫妻とシャンティエ嬢、確か彼女には兄がいる。
「申し訳ございません。早く来るように伝えたのですが…」
侯爵が頭を下げる。
「よい。夜勤明けで申し送りに時間がかかることもあると聞いている。こちらこそ、そのような時に呼び出して申し訳なかった」
「とんでもございません」
侯爵と国王の会話を聞いて、ベルテは遅れてくる人物が誰かわかった。
「まさか…」
「陛下、ベルクトフ小侯爵がいらっしゃいました」
ベルテがそう思った時、侍従が扉を開いて最後の一人の到着を告げた。
「遅くなり申し訳ございません」
侍従に続いて部屋に入ってきたのは、ベルテが思った人物だった。
「ああ、ヴァレンタイン、待っていたぞ。仕事明けにすまない」
国王が現れた人物に声をかける。
現れたのは現ベルクトフ侯爵の長男で、シャンティエの兄で、近衛騎士所属のヴァレンタイン・ベルクトフだ。
と言ってもベルテは彼と直接話したことはない。
アレッサンドロとシャンティエが婚約者だったことで、家族ぐるみで何度か顔を会わせたことはある。
普段は王宮内にある騎士の訓練場で、遠目に訓練をしているのを見かけたりするだけだ。
皆が、特に女子達が彼のことを話しているのよく聞いたし、訓練を見ていた王宮勤めの侍女たちがわあきゃあ言っていた。
とにかく彼の容姿は際立っていた。
肩の辺りまでに切り揃えたホワイトブロンドの髪は、右側が少し長いアシンメトリー。顎もシャープで鼻筋も通っている。紫の瞳を縁取る髪より少し濃い目の睫毛は、嫉妬するくらい長い。騎士団で野外訓練しているせいか少し日に焼けていて、背も高い。たったいま夜勤明けで身につけている騎士団の制服が、制服フェチでなくても垂涎ものなくらいよく似合っている。
「そこに座りなさい」
遅れた詫びを言って入口で頭を下げている彼に、国王が着席を勧めた。
「はっ」
その場で空いている席はひとつ。ベルテの斜め向かい、国王と真正面に位置する椅子にヴァレンタインは近づいた。
一部の隙きもない動作で彼はさっと椅子に座る際に、ちらりとベルテの方に視線をはしらせ、口角を僅かに上げた。
(なに? 何がおかしいの?)
夜勤明けなのに、彼の美貌は少しもくたびれた感がない。
「さて、全員揃ったところで、本題に入る。此度の我が愚息アレッサンドロとベルクトフ家の息女シャンティエ嬢との婚約についてだが、正式に婚約解消が元老院でも認められた」
元老院とは高位貴族だけでなく、有識者などからなる国政の諮問機関だ。
王室の婚姻は政治的要素も含まれているため、婚姻成立や解消などと言ったことにも、元老院に諮問を受ける。
「ベルクトフ侯爵家は過去にも王妃などを輩出した名門。しかしここ数代は互いに年回りの合う者がいなかったため、此度は久方ぶりの縁と喜んでいたが、こういう事態となった。誠に遺憾である」
「同感でございます。陛下」
国王の言葉を受けて、ベルクトフ侯爵もそれに同意した。
ベルテがエンリエッタと共に父の待つ応接室に向かうと、そこには父とディラン、そして他に男性一人と女性が二人がいた。
「来たか」
男性と女性の一人は夫婦で、ベルクトフ侯爵夫妻だった。そして女性のもう一人はシャンティエ嬢だった。
この面々が揃っていると言うことは、アレッサンドロとシャンティエ嬢の婚約破棄後のことが議題だろう。
ただ当事者であるアレッサンドロはこの場にいない。
「エンリエッタ、ご苦労だったな」
現われたベルテの姿を見て、その出来栄えぶりに国王は満足げに頷いた。
「でしょう? でもそれほど手は加えていませんのよ。ベルテ様は元がよろしいから」
「余計なことは言わなくていい。早く座りなさい」
言われて二人はソファに腰を下ろす。
国王が一人中央に座り、一方のソファの端にエンリエッタが、その隣にディランが座り、ベルテはディランの隣だ。
エンリエッタの向かい側にベルクトフ侯爵とその妻が続き、その隣、ベルテの向かい側にシャンティエ嬢が座っている。
「姉上、かなり盛りましたね」
ディランが軽口を叩いたのを、ベルテはじろりと睨み返した。
「後一人来るまでもう暫く待て」
ベルテ達が最後だと思ったが、他にもまだ来ると聞いて、ベルテは誰だろうと小首を傾げた。
まさか正妃のアーネローゼではないだろうとは思う。
彼女は既にアレッサンドロと離宮へ移ったと聞く。
となればベルクトフ侯爵側だろうか。
ベルクトフ侯爵夫妻とシャンティエ嬢、確か彼女には兄がいる。
「申し訳ございません。早く来るように伝えたのですが…」
侯爵が頭を下げる。
「よい。夜勤明けで申し送りに時間がかかることもあると聞いている。こちらこそ、そのような時に呼び出して申し訳なかった」
「とんでもございません」
侯爵と国王の会話を聞いて、ベルテは遅れてくる人物が誰かわかった。
「まさか…」
「陛下、ベルクトフ小侯爵がいらっしゃいました」
ベルテがそう思った時、侍従が扉を開いて最後の一人の到着を告げた。
「遅くなり申し訳ございません」
侍従に続いて部屋に入ってきたのは、ベルテが思った人物だった。
「ああ、ヴァレンタイン、待っていたぞ。仕事明けにすまない」
国王が現れた人物に声をかける。
現れたのは現ベルクトフ侯爵の長男で、シャンティエの兄で、近衛騎士所属のヴァレンタイン・ベルクトフだ。
と言ってもベルテは彼と直接話したことはない。
アレッサンドロとシャンティエが婚約者だったことで、家族ぐるみで何度か顔を会わせたことはある。
普段は王宮内にある騎士の訓練場で、遠目に訓練をしているのを見かけたりするだけだ。
皆が、特に女子達が彼のことを話しているのよく聞いたし、訓練を見ていた王宮勤めの侍女たちがわあきゃあ言っていた。
とにかく彼の容姿は際立っていた。
肩の辺りまでに切り揃えたホワイトブロンドの髪は、右側が少し長いアシンメトリー。顎もシャープで鼻筋も通っている。紫の瞳を縁取る髪より少し濃い目の睫毛は、嫉妬するくらい長い。騎士団で野外訓練しているせいか少し日に焼けていて、背も高い。たったいま夜勤明けで身につけている騎士団の制服が、制服フェチでなくても垂涎ものなくらいよく似合っている。
「そこに座りなさい」
遅れた詫びを言って入口で頭を下げている彼に、国王が着席を勧めた。
「はっ」
その場で空いている席はひとつ。ベルテの斜め向かい、国王と真正面に位置する椅子にヴァレンタインは近づいた。
一部の隙きもない動作で彼はさっと椅子に座る際に、ちらりとベルテの方に視線をはしらせ、口角を僅かに上げた。
(なに? 何がおかしいの?)
夜勤明けなのに、彼の美貌は少しもくたびれた感がない。
「さて、全員揃ったところで、本題に入る。此度の我が愚息アレッサンドロとベルクトフ家の息女シャンティエ嬢との婚約についてだが、正式に婚約解消が元老院でも認められた」
元老院とは高位貴族だけでなく、有識者などからなる国政の諮問機関だ。
王室の婚姻は政治的要素も含まれているため、婚姻成立や解消などと言ったことにも、元老院に諮問を受ける。
「ベルクトフ侯爵家は過去にも王妃などを輩出した名門。しかしここ数代は互いに年回りの合う者がいなかったため、此度は久方ぶりの縁と喜んでいたが、こういう事態となった。誠に遺憾である」
「同感でございます。陛下」
国王の言葉を受けて、ベルクトフ侯爵もそれに同意した。
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