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第八章 約束
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「これより、第八十二回武闘大会決勝戦を始める」
主審のデルペシュが声を張り上げる。
「時間は無制限、どちらかが戦闘不能になるか、敗北を認めるかで勝敗を決する。ただし、観覧席や周囲に甚大な被害を及ぼす攻撃を仕掛けたとこちらが判断した場合は、試合を中断させる。わかったな?」
「ねえ、そんなに危険なの?」
甚大な被害とはどういう意味なのか。
「昔、攻撃魔法で観客席が半分消失することがあった。だから、一応観客席と闘技場の間には防御魔法をかけているが、それを突き破る威力の魔法もあるからな」
ベルテの疑問に国王が答える。
「まあ、一番最近仕出かしたのは、今そこで審判をしている男だがな」
「デルペシュ卿が?」
ディランと二人驚いて国王を見ると、そうだと頷く。
「両者準備はいいか。始め!」
デルペシュの声を合図に、バーラードが火球を放った。
彼は炎と風魔法が得意らしい。
しかし、これまでは主に武器を使って戦っていた。
魔法は武器に纏わす程度だった。
「いきなり火球攻めか」
細かい炎の礫がヴァレンタイン目掛けて飛ぶ。
それを風魔法でヴァレンタインは防御しつつ、バーラードの足元の地面に穴を空ける。
それを察したバーラードがそこからポンと跳躍する。しかし、ヴァレンタインは彼が着地しようとした地面を次々にボコボコにしていき、バーラードはその度に兎のようにぴょんぴょん跳ね回る。
「クッ」
バーラードは体勢を整える間もなく、今度は風魔法を放ち、盛り上がった土の欠片をヴァレンタインに飛ばした。
再びそれを風魔法で弾き飛ばしたが、欠片を囮にして空を切ってバーラードが「やああああ」と剣を振りかぶった。
キイイイン、ガキッと鋼がぶつかり合う音がして、上から振り下ろしたバーラードの剣を、ヴァレンタインが下から弾き返した。
「おおおおお」
ヴァレンタインの反応の速さに、会場がどよめく。
弾き返えされたバーラードは、大きくのけぞったが、すぐに体勢を立て直して再度斬りかかる。
それをまたもやヴァレンタインが弾く。
そこから暫く、激しい剣戟が続いた。
「は、速い」
観ている者たちは必死で目で追いかけるが、そのあまりの速さについていけない者も出てきた。
永遠に続くかと思われる剣戟に、繰り出される魔法。炎がぶつかりあい、風が粉塵を撒き散らす。石礫が飛び、人々は目を凝らして追うのに必死だった。
ヴァレンタインやバーラードの顔や体にも無数の傷がつき、衣服が破れてボロボロになっている。
「ヴァレンタイン様、か、顔に傷が……」
「きゃあああ、いやぁ」
増えていくヴァレンタインの顔の傷を見ていた観覧者たちから、絶叫が次々と上がる。
バーラードも同じだけかそれ以上の怪我をしている。
「バーラードさまぁ、頑張ってぇ」
ヴァレンタインほどではないが、彼にも一定以上の支持者はいるらしく、ヴァレンタインに対する応援に混じって、彼の名前もチラホラ聞こえてくる。
「ヴァレンタインさまぁ~、私達『白薔薇を愛でる会』がついております、頑張ってくださぁい」
白薔薇ならぬ白いハンカチが旗のように振られる。
その中に混じって黄色いハンカチもちらほら見えるのは、バーラードの支持者だろう。
ドオンという爆音が上がり、衝撃でお腹を丸めてヴァレンタインは後方へ吹っ飛んだ。
「!!!!」
ベルテははっと息を呑む。あちこちで悲鳴があがる。
「ガハッ」
地面に片手と片膝を突いたヴァレンタインの口から血が吹き出て、すかさずそこに火球が飛んできて、ヴァレンタインは土魔法で作った壁でそれを避ける。
その隙きに彼はポーションの残りを飲んで空き瓶を放り投げた。
ポーションを飲んだことで、顔の傷が塞がっている。
口の端から流れた血をヴァレンタインが拭き取る様子がスクリーンに映り、ベルテはほっとした。
「最後の一本飲んじゃったね」
今飲んだポーションがヴァレンタインに与えられた最後の一本だった。
次に大きな怪我をすれば、再起不能と判断されてそこで敗退だ。
「でも、バーラードももう後がないわ」
彼もさっきポーションを飲んでいたので、後がないのは彼も同じだ。
暫くは二人、剣を構えたまま睨み合っていたが、先に仕掛けたのはバーラードだった。
「はああああ!」
剣を頭上高く振り上げたバーラードが、地面を蹴ってヴァレンタインに向かって斬りかかった。
主審のデルペシュが声を張り上げる。
「時間は無制限、どちらかが戦闘不能になるか、敗北を認めるかで勝敗を決する。ただし、観覧席や周囲に甚大な被害を及ぼす攻撃を仕掛けたとこちらが判断した場合は、試合を中断させる。わかったな?」
「ねえ、そんなに危険なの?」
甚大な被害とはどういう意味なのか。
「昔、攻撃魔法で観客席が半分消失することがあった。だから、一応観客席と闘技場の間には防御魔法をかけているが、それを突き破る威力の魔法もあるからな」
ベルテの疑問に国王が答える。
「まあ、一番最近仕出かしたのは、今そこで審判をしている男だがな」
「デルペシュ卿が?」
ディランと二人驚いて国王を見ると、そうだと頷く。
「両者準備はいいか。始め!」
デルペシュの声を合図に、バーラードが火球を放った。
彼は炎と風魔法が得意らしい。
しかし、これまでは主に武器を使って戦っていた。
魔法は武器に纏わす程度だった。
「いきなり火球攻めか」
細かい炎の礫がヴァレンタイン目掛けて飛ぶ。
それを風魔法でヴァレンタインは防御しつつ、バーラードの足元の地面に穴を空ける。
それを察したバーラードがそこからポンと跳躍する。しかし、ヴァレンタインは彼が着地しようとした地面を次々にボコボコにしていき、バーラードはその度に兎のようにぴょんぴょん跳ね回る。
「クッ」
バーラードは体勢を整える間もなく、今度は風魔法を放ち、盛り上がった土の欠片をヴァレンタインに飛ばした。
再びそれを風魔法で弾き飛ばしたが、欠片を囮にして空を切ってバーラードが「やああああ」と剣を振りかぶった。
キイイイン、ガキッと鋼がぶつかり合う音がして、上から振り下ろしたバーラードの剣を、ヴァレンタインが下から弾き返した。
「おおおおお」
ヴァレンタインの反応の速さに、会場がどよめく。
弾き返えされたバーラードは、大きくのけぞったが、すぐに体勢を立て直して再度斬りかかる。
それをまたもやヴァレンタインが弾く。
そこから暫く、激しい剣戟が続いた。
「は、速い」
観ている者たちは必死で目で追いかけるが、そのあまりの速さについていけない者も出てきた。
永遠に続くかと思われる剣戟に、繰り出される魔法。炎がぶつかりあい、風が粉塵を撒き散らす。石礫が飛び、人々は目を凝らして追うのに必死だった。
ヴァレンタインやバーラードの顔や体にも無数の傷がつき、衣服が破れてボロボロになっている。
「ヴァレンタイン様、か、顔に傷が……」
「きゃあああ、いやぁ」
増えていくヴァレンタインの顔の傷を見ていた観覧者たちから、絶叫が次々と上がる。
バーラードも同じだけかそれ以上の怪我をしている。
「バーラードさまぁ、頑張ってぇ」
ヴァレンタインほどではないが、彼にも一定以上の支持者はいるらしく、ヴァレンタインに対する応援に混じって、彼の名前もチラホラ聞こえてくる。
「ヴァレンタインさまぁ~、私達『白薔薇を愛でる会』がついております、頑張ってくださぁい」
白薔薇ならぬ白いハンカチが旗のように振られる。
その中に混じって黄色いハンカチもちらほら見えるのは、バーラードの支持者だろう。
ドオンという爆音が上がり、衝撃でお腹を丸めてヴァレンタインは後方へ吹っ飛んだ。
「!!!!」
ベルテははっと息を呑む。あちこちで悲鳴があがる。
「ガハッ」
地面に片手と片膝を突いたヴァレンタインの口から血が吹き出て、すかさずそこに火球が飛んできて、ヴァレンタインは土魔法で作った壁でそれを避ける。
その隙きに彼はポーションの残りを飲んで空き瓶を放り投げた。
ポーションを飲んだことで、顔の傷が塞がっている。
口の端から流れた血をヴァレンタインが拭き取る様子がスクリーンに映り、ベルテはほっとした。
「最後の一本飲んじゃったね」
今飲んだポーションがヴァレンタインに与えられた最後の一本だった。
次に大きな怪我をすれば、再起不能と判断されてそこで敗退だ。
「でも、バーラードももう後がないわ」
彼もさっきポーションを飲んでいたので、後がないのは彼も同じだ。
暫くは二人、剣を構えたまま睨み合っていたが、先に仕掛けたのはバーラードだった。
「はああああ!」
剣を頭上高く振り上げたバーラードが、地面を蹴ってヴァレンタインに向かって斬りかかった。
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