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エピローグ~二人の幸せ~
謎の冒険者
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「もちろん、俺の幸せはマリベルさんの側にしかありません」
「でも、フェルさん…フェルナンドさんは貴族で魔導騎士団の団長で、その容姿で、王都へ帰ったらどんな女性だって選り取り見取りじゃないですか」
「でも俺はマリベルさんがいいです。どんな女性も、たとえ王妃様や王女様だって、俺には案山子と同じにしか見えません」
「案山子…それは他所で言わないほうがいいです」
「そうですか?」
「私、両親もいなくて…」
「俺も、本当の親は最初からいません。それに、マリベルさんのご両親は今はいなくても立派な人だったってことは、誰もが認めている。胸を張っていいです」
マリベルの父は、副ギルド長のマルセルの不正を知り、憲兵に告発する前に自首するように諭そうとして殺された。
「お父様が掴んだ証拠が、彼の死後、俺のもとに届けられました。その頃俺は遠征に行っていて、帰ってきた時にはもう遅かった」
副ギルド長が血眼になって探していたものは、彼のお金のことを記した帳簿だった。それはフェルの手にあった。
「帳簿と一緒に、『後を頼みます』という手紙が入っていました。それを俺は副ギルド長たちの悪事の後始末だけでなく、マリベルさんのことを託してくれたんだと思っています」
「副ギルド長たちは?」
魔物たちを殲滅している時、私に掛けた魔法で私の異常を感知したフェルは、その時掴んでいた魔物を持ったまま転移して来たのだった。
魔物の遺体と血に塗れ、プリシラは気が狂いエミリオと副ギルド長は何とか気が狂れるまではいかなかったものの、茫然自失となり、今は憲兵に拘束されているそうだ。
これまで行った不正に加え、殺人に死亡偽装などの公文書偽造、そして誘拐。罪はかなり重いだろう。
ちなみに魔物の氾濫は異例の早さで鎮められた。
フェルが圧倒的力で殆どのボス級の魔物を殲滅し、軍と冒険者、魔導騎士団の被害は歴史上でも最少と言われる程だ。
まだ魔物は残っているらしいが、一週間もしないうちに決着はつくということだった。
「それで、他に貴女が不安に思うことは?俺からすれば全て杞憂にしか過ぎませんけど。身分については、アベルがラストラス家の養女にすると言っています。俺に義兄《にい》さんと呼ばせたいらしい。昔も今もこれからも、俺にとっての一番はマリベルさんで、マリベルさんの幸せが最優先です」
「私の幸せは、好きな人とずっと一緒にいることです」
「それは…」
「もちろん、私の『恋人』は一人しかいません。これからもずっと」
繋いでいた手を引き寄せると、フェルが体を傾け顔を近づけてきた。
「では、これから本当の契約を交わしていいですか? 期限はもちろん無期限で」
「よろしくお願いします」
マリベルがそっと目を閉じると、すぐに柔らかい唇が覆いかぶさってきた。
その後、ラストラス副団長の義理の妹になったマリベルと、団長フェルナンド=オーギルの結婚式が王都で行われた。式には王太子殿下も参列し、それは盛大だった。
花婿は終始花嫁しか目に入っておらず、参列者への挨拶は花嫁の義兄が行うという自体となったが、誓いの言葉だけは、力強く「一生命に変えても幸せにします」と、大聖堂に響き渡る声で叫んだという。
フェル=カラレスは冒険者としてはC級のまま、その記録はいつの間にか抹消された。
今では彼の記録はどこにもない。
ただ、人々の記憶に僅かに残り、時折酒の席で話題に上った。
本当にいたのか、それとも都市伝説か。
暫くの間、彼のことは消えた謎の冒険者として語られた。
「でも、フェルさん…フェルナンドさんは貴族で魔導騎士団の団長で、その容姿で、王都へ帰ったらどんな女性だって選り取り見取りじゃないですか」
「でも俺はマリベルさんがいいです。どんな女性も、たとえ王妃様や王女様だって、俺には案山子と同じにしか見えません」
「案山子…それは他所で言わないほうがいいです」
「そうですか?」
「私、両親もいなくて…」
「俺も、本当の親は最初からいません。それに、マリベルさんのご両親は今はいなくても立派な人だったってことは、誰もが認めている。胸を張っていいです」
マリベルの父は、副ギルド長のマルセルの不正を知り、憲兵に告発する前に自首するように諭そうとして殺された。
「お父様が掴んだ証拠が、彼の死後、俺のもとに届けられました。その頃俺は遠征に行っていて、帰ってきた時にはもう遅かった」
副ギルド長が血眼になって探していたものは、彼のお金のことを記した帳簿だった。それはフェルの手にあった。
「帳簿と一緒に、『後を頼みます』という手紙が入っていました。それを俺は副ギルド長たちの悪事の後始末だけでなく、マリベルさんのことを託してくれたんだと思っています」
「副ギルド長たちは?」
魔物たちを殲滅している時、私に掛けた魔法で私の異常を感知したフェルは、その時掴んでいた魔物を持ったまま転移して来たのだった。
魔物の遺体と血に塗れ、プリシラは気が狂いエミリオと副ギルド長は何とか気が狂れるまではいかなかったものの、茫然自失となり、今は憲兵に拘束されているそうだ。
これまで行った不正に加え、殺人に死亡偽装などの公文書偽造、そして誘拐。罪はかなり重いだろう。
ちなみに魔物の氾濫は異例の早さで鎮められた。
フェルが圧倒的力で殆どのボス級の魔物を殲滅し、軍と冒険者、魔導騎士団の被害は歴史上でも最少と言われる程だ。
まだ魔物は残っているらしいが、一週間もしないうちに決着はつくということだった。
「それで、他に貴女が不安に思うことは?俺からすれば全て杞憂にしか過ぎませんけど。身分については、アベルがラストラス家の養女にすると言っています。俺に義兄《にい》さんと呼ばせたいらしい。昔も今もこれからも、俺にとっての一番はマリベルさんで、マリベルさんの幸せが最優先です」
「私の幸せは、好きな人とずっと一緒にいることです」
「それは…」
「もちろん、私の『恋人』は一人しかいません。これからもずっと」
繋いでいた手を引き寄せると、フェルが体を傾け顔を近づけてきた。
「では、これから本当の契約を交わしていいですか? 期限はもちろん無期限で」
「よろしくお願いします」
マリベルがそっと目を閉じると、すぐに柔らかい唇が覆いかぶさってきた。
その後、ラストラス副団長の義理の妹になったマリベルと、団長フェルナンド=オーギルの結婚式が王都で行われた。式には王太子殿下も参列し、それは盛大だった。
花婿は終始花嫁しか目に入っておらず、参列者への挨拶は花嫁の義兄が行うという自体となったが、誓いの言葉だけは、力強く「一生命に変えても幸せにします」と、大聖堂に響き渡る声で叫んだという。
フェル=カラレスは冒険者としてはC級のまま、その記録はいつの間にか抹消された。
今では彼の記録はどこにもない。
ただ、人々の記憶に僅かに残り、時折酒の席で話題に上った。
本当にいたのか、それとも都市伝説か。
暫くの間、彼のことは消えた謎の冒険者として語られた。
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