215 / 266
213 あてにならない
しおりを挟む
ウィリアムさんが用意してくれた部屋で待つ間は退屈しなかった。
師匠のかつての部下の方々や師匠をひと目みたいと次から次へ人がやってきて、色々な話をしていってくれた。
口数は多くない師匠も、今日はかなり饒舌な方だ。
「お待たせしました」
一時間ほどしてウィリアムさんが私たちが待つ部屋に来たのは、ちょうど誰もいなくなった時だった。
「ハレス卿の家には帰りが少し遅くなると伝令を送っておいたよ」
「ありがとうございます。それで、何かわかりましたか?」
「わかったのは、あの男がどこの誰かということくらいかな」
私たちの前の椅子に腰を下ろし残念そうにウィリアムさんが話をした。
私たちの後を尾行していた男の名はフレッドと言うらしい。
「楽をして大儲けできることばかりを探しているような 、特にこれと言ったことのない街のチンピラだった。踊り子の件もいつも出入りしている酒場で出会った初対面の男から持ちかけられたそうだ。酒を奢ってくれたから気を良くして軽い気持ちで引き受けたようだ。二人が聞いたとおり見つかったら酒場に伝言を残し落ち合うということだった」
「なぜその踊り子を探しているのかはわからないということだな」
「そうです。どうしますか」
「俺はもう騎士団を辞めた一般人だ。判断はお前たちに任せると言いたいところだが、このまま泳がせて相手の目的を探るのが先決だな」
訊ねるウィリアムさんに師匠が答えた。
「踊り子が見つかったと言ってあの男にその相手と接触させるのですね」
泳がすという事で思い当たった話を告げる。
「今のところ誰かがお前を……踊り子クレアを探している。そのために人を雇い、舞屋を見張っているだけで、実害もない。単に仕事を頼みたいだけということもある。申し訳ないないが今の段階で騎士団が動くことはできない」
「わかっています」
警察だって事件が起こらなければすぐには動けない。向こうの目的もわからないのに事件扱いもできない。
「あの男は人を尾行したりしたことも場合によれば犯罪だと疑われる行為だと注意して家に返す。探している踊り子の消息について、心当たりがあると言って向こうに渡りをつけてもらう。目的がわかれば本人を連れてくるとでも伝えるが、どうする?」
「そのうち業を煮やした輩が『月下の花』に無茶なことをしてくる可能性もある。まずは相手の目的を探ることだな」
このまま踊り子クレアは謎のままでもいいかと思ったが、クレアを探す何者かがどこまで真剣に探しているのかわからない中で、唯一クレアと繋がりのあるティータさんたちの舞屋に強引なことをしてくる可能性もあると言われ、ここで何とかしなければならないと悟った。
ウィリアムさんの話は可能性のひとつだとわかっている。
ティータさんたちの顔を思い浮かべ、ぎゅっと拳を握る。
「俺も協力する。一人で突っ走るなよ」
「わかっています。無茶はしません」
「無茶はしないというお前の言葉ほどあてにならないものはない」
師匠の言葉がぐさりと突き刺さった。
師匠のかつての部下の方々や師匠をひと目みたいと次から次へ人がやってきて、色々な話をしていってくれた。
口数は多くない師匠も、今日はかなり饒舌な方だ。
「お待たせしました」
一時間ほどしてウィリアムさんが私たちが待つ部屋に来たのは、ちょうど誰もいなくなった時だった。
「ハレス卿の家には帰りが少し遅くなると伝令を送っておいたよ」
「ありがとうございます。それで、何かわかりましたか?」
「わかったのは、あの男がどこの誰かということくらいかな」
私たちの前の椅子に腰を下ろし残念そうにウィリアムさんが話をした。
私たちの後を尾行していた男の名はフレッドと言うらしい。
「楽をして大儲けできることばかりを探しているような 、特にこれと言ったことのない街のチンピラだった。踊り子の件もいつも出入りしている酒場で出会った初対面の男から持ちかけられたそうだ。酒を奢ってくれたから気を良くして軽い気持ちで引き受けたようだ。二人が聞いたとおり見つかったら酒場に伝言を残し落ち合うということだった」
「なぜその踊り子を探しているのかはわからないということだな」
「そうです。どうしますか」
「俺はもう騎士団を辞めた一般人だ。判断はお前たちに任せると言いたいところだが、このまま泳がせて相手の目的を探るのが先決だな」
訊ねるウィリアムさんに師匠が答えた。
「踊り子が見つかったと言ってあの男にその相手と接触させるのですね」
泳がすという事で思い当たった話を告げる。
「今のところ誰かがお前を……踊り子クレアを探している。そのために人を雇い、舞屋を見張っているだけで、実害もない。単に仕事を頼みたいだけということもある。申し訳ないないが今の段階で騎士団が動くことはできない」
「わかっています」
警察だって事件が起こらなければすぐには動けない。向こうの目的もわからないのに事件扱いもできない。
「あの男は人を尾行したりしたことも場合によれば犯罪だと疑われる行為だと注意して家に返す。探している踊り子の消息について、心当たりがあると言って向こうに渡りをつけてもらう。目的がわかれば本人を連れてくるとでも伝えるが、どうする?」
「そのうち業を煮やした輩が『月下の花』に無茶なことをしてくる可能性もある。まずは相手の目的を探ることだな」
このまま踊り子クレアは謎のままでもいいかと思ったが、クレアを探す何者かがどこまで真剣に探しているのかわからない中で、唯一クレアと繋がりのあるティータさんたちの舞屋に強引なことをしてくる可能性もあると言われ、ここで何とかしなければならないと悟った。
ウィリアムさんの話は可能性のひとつだとわかっている。
ティータさんたちの顔を思い浮かべ、ぎゅっと拳を握る。
「俺も協力する。一人で突っ走るなよ」
「わかっています。無茶はしません」
「無茶はしないというお前の言葉ほどあてにならないものはない」
師匠の言葉がぐさりと突き刺さった。
1
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる