【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします

七夜かなた

文字の大きさ
20 / 91

20 学園祭①

それからジュストが帰ってくるたびに、学園での生活についてアレコレ尋ねた。
それこそしつこいくらいに。
手紙も頻繁にやり取りしていたが、それでも直に話を聞くのはやっぱり違う。

「ギャレットのために、色々頑張ってるよ」

僕に話して聞かせるためにも、自慢の兄でいるためにも、ジュストは勉強に剣の稽古にと努力を続けているという。
元々出来る子が頑張ったら、それはもう尋常じゃないくらい伸びる。

学期の初めての試験はほぼ満点。剣術でも学年でステファンと一、二を争っているらしい。
話に聞くとステファンも怠けているわけではないが、どちらかと言えば緩く努力している程度。なのにジュストと互角とは、ステファンは、さすが主人公補正だ。

レーヌは僕が他の特進の人たちは? と尋ねた時に時折名前が出てくるくらい。

会話もプライベートなことは一切なく、課題を与えられてクジでペアになったとか、その程度。
そこから何かに発展するでもない。

僕の死亡フラグは折れたが、レーヌとの恋愛フラグも立つ気配がない。

「王太子殿下の側近候補になりました」

相変わらず休みの日の朝早く帰ってきて、朝から一緒に朝食を取っていると、いきなりジュストが報告した。

三人で食べかけていた手を止めて、ジュストを見た。

「報告が遅くなってすみません、父上」

怒られると思ったのかジュストが申し訳無さそうに言った。

「い、いや、謝る必要はない」
「そうよ、とても名誉なことですもの。でも、あまりに淡々と話すから、ちょっと意味を理解するのに時間がかかったわ」

嫌味でも何でもなかったが、母上の言葉には激しく同意する一同であった。

王太子の側近候補は、特進に入るより難しいそうだ。
特進は王立学園の生徒であれば、誰彼問わず試験で選ばれる。
その身分は関係ない。
学園の中では爵位より成績で評価されることが多い。
座学でも剣術でも、芸術でもとにかく成績重視。
でも、王太子殿下の側近候補となると、家柄や人格も考慮に入ってくる。

家柄は候補になる絶対条件とは言えないが、そこを考慮するのは、その人の品格に関わってくるからだそうだ。
それでも最終は、本人がどこまで国や王族に尽くせるかの自覚と忠誠心によるらしい

「す、すごいね」

父上から王太子殿下の側近候補について講釈を聞かされ、感嘆の声を漏らした。

「まだ候補です。ステファンや、特進の何人かもいて、最終何人が選ばれるのかもまだ決まっていません」
「しかし、候補になるだけでも凄いことだ」
「ですが、俺は今はモヒナート家の養子ですが、元は孤児です。品格という点では他の人たちの足元にも及びません」

そのことが原因で最終は外されるかも知れない。だからこの件に関して、ジュストは喜んで話すことが出来なかったのだと言った。

「あ、兄上は僕の自慢の兄上です。血の繋がりは関係ありません。それが原因で外されるなら、側近なんてならなくていいです」

ジュストが実の兄ではない。前世の記憶があるので最初から知っていたが、周りはそれを知らない。
それを両親から聞いたのはジュストが学園に入る少し前だった。

「王制を敷き、貴族の立場を考えるならそれも仕方ないが、ギャレットの言うことも一理ある。側近になるのは名誉なことだが、その件で外されるなら無理にならなくていい。ならなくても、私はお前を責めないよ」
「何も今外されたと決まっているわけではありませんでしょ」
「それはそうだな」
「兄上が側近にならなくても、候補になっただけでも凄いことだよ。僕はそれだけでも兄上を尊敬する」
「ありがとうギャレット、ありがとう父上母上。俺のこと、そんな風に受け入れてくれて」

ジュストは安堵し微笑む。
もし側近にならなかったら、責められるだろうかというジュストの不安は、綺麗サッパリ無くなった。
血がつながっていたって、家族がすべて仲がいいとは限らない。
小説ではギャレットである僕が、両親の愛を独り占めしたくて、出来のいい義兄のジュスト嫉妬し、彼を虐め抜いた。
その結果、彼の心も体も傷だらけになり、唯一分かり合えたと思ったヒロインへの執着愛が、激増する。
しかし、惜しみ無く愛情を与えられた今のジュストは、自身に満ち溢れていて、眩しい程だった。
感想 15

あなたにおすすめの小説

『断罪予定の悪役令息ですが、冷酷第一王子にだけ求婚されています』

常陸之介寛浩📚️書籍・本能寺から始める
BL
あらすじ 侯爵家の嫡男ルシアンは、ある日、自分が前世で遊んでいたBLゲームの世界に転生していることに気づく。 しかも役どころは、ヒロインに嫉妬して破滅する“断罪予定の悪役令息”だった。 このまま物語通りに進めば、婚約者候補への嫌がらせや数々の悪行を理由に社交界から追放。家は没落し、自身も悲惨な末路を迎える。 そんな未来を回避するため、ルシアンは決意する。 目立たず、騒がず、誰とも深く関わらず、特に本来の攻略対象である第一王子には絶対に近づかない、と。 けれど、なぜか本来は誰にも心を許さず冷酷無慈悲と恐れられている第一王子アルベールが、ルシアンにだけ異様に執着してくる。 人前では冷ややかなまま。 なのに二人きりになると、まるで逃がすつもりなど最初からないと言わんばかりに距離を詰め、甘く、重く、求婚めいた言葉を囁いてくるのだ。 「君がどれほど逃げようとしても、私だけは君を離さない」 断罪を避けたいだけなのに、王子は人前で彼を庇い、社交界では“第一王子の寵愛を受ける悪役令息”という噂まで広がり始める。 さらに、ルシアンを陥れようとする貴族たち、王位争い、侯爵家に隠された事情まで絡み、物語はゲーム本来の筋書きから大きく外れていって――。 これは、破滅するはずだった悪役令息が、冷酷第一王子のただ一人の執着相手になってしまう、 甘くて重くて逃げられない、宮廷逆転溺愛BL。

儚げ侯爵令息の怠惰な檻 ~前世が社畜だったので、公爵様の重すぎる溺愛が極上の福利厚生に見える~

千葉琴音
BL
前世で過労死した社畜男子が転生したのは、触れたら折れそうな超・美少年。 目指せ、究極の光合成ライフ! でも、隣にいるハイスペック公爵様の愛が、ちょっと(かなり)重すぎて……!?

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います