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23 ジュストのトラウマ①
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レーヌは幼い頃に母親を亡くし、その後父親が妻として迎えた義母に疎まれ、成長した異母妹も一緒になって彼女を虐めた。
父親は義母に言いくるめられ、うまくいっているも思っている。
しかし、彼女の怪我に気づいたジュストは、自分と同じ境遇の彼女に親近感を覚えて、二人の仲は急速に近づく。
しかしステファンの明るさにレーヌは救われ、ステファンもまた辛い日々を送る中で健気に生きる彼女に心惹かれていく。
それがストーリーの流れだった。
ジュストに殺されまいとひたすら兄上すごい、兄上大好きと訴えてきたことで、ジュストとギャレットの仲は周りからイタイと思われるほどに、良くなった。
でも、彼女は?
ジュストがあまりにもただの同級生としてしか彼女を認識していないせいで、彼女の情報はステファン伝いに少し聞いた程度。
でも先程の反応から、彼女はジュストのことを気にかけているようだ。
それは他の女生徒たちと同じレベルだろうか。
ここまで歩いてきて、遠巻きにジュストを見る女生徒たちの視線に熱が籠もっているのを何度か見た。
初夏になるこの時期、レーヌは手首まで覆い隠す長袖を身に着けている。
日焼けを気にして肌を見せることを嫌う女性もいるので、違和感はないけど、それは他の女性と同じ理由からだろうか。
これは確かめる必要がある。
「あ、お姉さん、さっき転んで怪我でもした?」
「え?」
「ギャレット?」
「手首のところ、痣が出来ているみたい」
近づいて彼女の手を掴んで袖をたくし上げた。
普通ならセクハラまがいの行為も、まだ九歳という年齢なら許されるのではないだろうか。
「あ!」
「!!」
「まあ」
彼女の前腕には、ミミズ腫れが何本もあった。火傷にも似た痕もある。
彼女は驚きの声を上げ、ジュストは声には出なかったが目を見張り、ナディアも驚きの声を上げた。
「こ、これは違います」
慌ててギャレットの手を払い除け、袖を元に戻した。
「お、弟さんとぶつかって転んだせいではありませんので、気になさらな」
「何てこと、その傷はどうしたの!」
一番食いついたのはナディアだった。
ジュストもギャレットも押しのけ、彼女に詰め寄った。
「な、何でもありません。わ、私がそそっかしくて、良く怪我をするんです」
苦しい言い訳をしているが、明らかにそれは虐待の証拠だと思った。
「良く怪我をするって言っても、そのまま放置していてはだめよ。きちんと手当しないと」
一応彼女の怪我の説明は半信半疑ながら受け入れたナディアも、その後の手当が不充分だと主張する。
「こんなに痕が残って…ジュスト、あなた医務室へ連れて行ってあげなさいな」
ナディアが振り返り、ジュストに指示する。
「ジュスト?」
「兄上?」
ジュストを見ると、彼は表情を強張らせてその場で立ち尽くしている。
あ、これはもしかして
彼女の怪我を見て、自分の過去に受けた虐待のことがフラッシュバックで蘇ったのかもしれない。
そう思ったギャレットは、ジュストに駆け寄りその手を握りしめた。
ヒヤリと血の気の失せた手をギュッと包み込み、下から彼を見上げ声をかけた。
「兄上、大丈夫、僕を見て」
そう言うと、ジュストははっと我に返り俯いて此方を見た。
「ギャレット?」
「そうだよ。兄上」
にこりと微笑み、掴んだ彼の手を力強く握りしめた。
「ジュスト、大丈夫?」
ナディアも彼の異変に気づき声をかける。
「はい、大丈夫です」
深く息を吐き、体に込めていた力を抜いたのがわかった。
「オハイエ、医務室へ行くか?」
ナディアの言葉は聞こえていたらしく、ジュストがレーヌに尋ねた。
「いえ、いいです。今日は剣術大会で医務室の先生方も忙しいでしょうから」
「何を言っている、母上が心配して言っているんだ。」
「本当に大丈夫です、手当しても意味がありません! 放っておいてください」
レーヌは触れようとしたジュストの手をパシリと払い除けた。
父親は義母に言いくるめられ、うまくいっているも思っている。
しかし、彼女の怪我に気づいたジュストは、自分と同じ境遇の彼女に親近感を覚えて、二人の仲は急速に近づく。
しかしステファンの明るさにレーヌは救われ、ステファンもまた辛い日々を送る中で健気に生きる彼女に心惹かれていく。
それがストーリーの流れだった。
ジュストに殺されまいとひたすら兄上すごい、兄上大好きと訴えてきたことで、ジュストとギャレットの仲は周りからイタイと思われるほどに、良くなった。
でも、彼女は?
ジュストがあまりにもただの同級生としてしか彼女を認識していないせいで、彼女の情報はステファン伝いに少し聞いた程度。
でも先程の反応から、彼女はジュストのことを気にかけているようだ。
それは他の女生徒たちと同じレベルだろうか。
ここまで歩いてきて、遠巻きにジュストを見る女生徒たちの視線に熱が籠もっているのを何度か見た。
初夏になるこの時期、レーヌは手首まで覆い隠す長袖を身に着けている。
日焼けを気にして肌を見せることを嫌う女性もいるので、違和感はないけど、それは他の女性と同じ理由からだろうか。
これは確かめる必要がある。
「あ、お姉さん、さっき転んで怪我でもした?」
「え?」
「ギャレット?」
「手首のところ、痣が出来ているみたい」
近づいて彼女の手を掴んで袖をたくし上げた。
普通ならセクハラまがいの行為も、まだ九歳という年齢なら許されるのではないだろうか。
「あ!」
「!!」
「まあ」
彼女の前腕には、ミミズ腫れが何本もあった。火傷にも似た痕もある。
彼女は驚きの声を上げ、ジュストは声には出なかったが目を見張り、ナディアも驚きの声を上げた。
「こ、これは違います」
慌ててギャレットの手を払い除け、袖を元に戻した。
「お、弟さんとぶつかって転んだせいではありませんので、気になさらな」
「何てこと、その傷はどうしたの!」
一番食いついたのはナディアだった。
ジュストもギャレットも押しのけ、彼女に詰め寄った。
「な、何でもありません。わ、私がそそっかしくて、良く怪我をするんです」
苦しい言い訳をしているが、明らかにそれは虐待の証拠だと思った。
「良く怪我をするって言っても、そのまま放置していてはだめよ。きちんと手当しないと」
一応彼女の怪我の説明は半信半疑ながら受け入れたナディアも、その後の手当が不充分だと主張する。
「こんなに痕が残って…ジュスト、あなた医務室へ連れて行ってあげなさいな」
ナディアが振り返り、ジュストに指示する。
「ジュスト?」
「兄上?」
ジュストを見ると、彼は表情を強張らせてその場で立ち尽くしている。
あ、これはもしかして
彼女の怪我を見て、自分の過去に受けた虐待のことがフラッシュバックで蘇ったのかもしれない。
そう思ったギャレットは、ジュストに駆け寄りその手を握りしめた。
ヒヤリと血の気の失せた手をギュッと包み込み、下から彼を見上げ声をかけた。
「兄上、大丈夫、僕を見て」
そう言うと、ジュストははっと我に返り俯いて此方を見た。
「ギャレット?」
「そうだよ。兄上」
にこりと微笑み、掴んだ彼の手を力強く握りしめた。
「ジュスト、大丈夫?」
ナディアも彼の異変に気づき声をかける。
「はい、大丈夫です」
深く息を吐き、体に込めていた力を抜いたのがわかった。
「オハイエ、医務室へ行くか?」
ナディアの言葉は聞こえていたらしく、ジュストがレーヌに尋ねた。
「いえ、いいです。今日は剣術大会で医務室の先生方も忙しいでしょうから」
「何を言っている、母上が心配して言っているんだ。」
「本当に大丈夫です、手当しても意味がありません! 放っておいてください」
レーヌは触れようとしたジュストの手をパシリと払い除けた。
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