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79 自分の気持ち①
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王太子殿下と行動を共にシェルテーレに到着してから、時折視線を感じた。
王太子殿下の側近としてシェルテーレの王宮に足を踏み入れた時も、何人かの者がこちらを見て一瞬驚いた顔をした。
それが瞳のことだとわかっていた。
イベルカイザでは特に気にすることはなかったが、すぐ隣にありながら、この国では「赤い瞳」に対する忌避感を肌で感じる。
王太子殿下の行動は常に注目の的。そこに自分が加わることで、シェルテーレ内で更に目立つことになる。
今度のシェルテーレの訪問にはもうひとつ隠された目的があった。
それがベルン辺境伯領による横領の調査だった。
そのため、ステファンは居残りと称して別で動き、自分たちはその目を逸らすためにも注目されるべきだった。
「おにいちゃん、だいじょーぶ?」
いつの間にか眠っていたらしい。
向かいの檻の中から、やせ細って腕が枯れ枝のようになり、目だけがギョロギョロした少年が声をかけてきて気が付いた。
「大丈夫だ」
体の傷は今は乾き、血が止まっていることを確認して微笑んだ。
「君たちこそ、大丈夫か?」
「うん…お腹は…空いてるけど…」
自分もここに来て水以外何も口にしていない。あの子たちはカビが生えて固くなったパンを与えられていたようだった。
「相変わらず、ここは最低だな」
あいつはどこかに行ったようだ。
シャイユカルド教の幹部だった男。もしかしたら今でも幹部かも知れない。すっかり年を取り、髪も真っ白になっていたが、変わらず狂気に満ちた目をしている
「ギャレット…」
以前は心を閉ざすことで何とか耐えた。
今回は閉ざすわけにはいかない。だから大切な存在を思い続けることで、耐え抜こうと思った。
ギャレットとの出会いが、ジュストの運命の新たな道を切り開いた。
あの日から、ジュストはギャレットのために生きようと思った。
しかし、子育て(弟育て)は思うようにいかなかった。
ギャレットの望みを何でも叶えてやりたいと、彼の望むままに聞き入れてきたが、そのせいでギャレットはすっかり我儘放題になった。
しかし、そんな我儘も、すべて受け入れてしまうほどに彼はギャレットのことを愛しく思っていた。
そんなギャレットが変わった。ある時、ジュストの持つ剣を貸してくれとギャレットはいつものように我儘を言ってきた。しかし、さすがにこれは危険だと突っぱねると、ギャレットは火が付いたように泣き出した。そして無理矢理ジュストから剣を奪おうとして転んで頭をぶつけた。
変わったのはその時からだった。
我儘は鳴りを潜め、代わりにやたらとジュストを褒め称えるようになった。
あまりの変わり様と、褒められ慣れていないこともあって、ジュストは戸惑った。
ステファンとの関係も、ギャレットが変わったことで変化した。
三人で、途中からカレンも生まれて四人になり、楽しい日々が続いた。
しかし、ジュストは時折記憶の底に閉じ込め、忘れている過去に悩まされるようになった。
そして、ギャレットへの思いが、兄としてのそれとは違うのではないかという疑問も湧いた。
それが確定になったのは、ギャレットが精通を迎えた時、初めてのことに戸惑い、涙目になってこちらを見る表情を見て、胸が疼いた。
そして、お風呂の中で頬を赤らめ自慰に及んだ彼の姿を見て、自分の体が反応したのがわかった。
友人達が令嬢たちを見て、色々言っているのを聞いて、共感出来なかったのは、自分が性的に遅れているからだと思った。
自分はモヒナート家に引き取られ、モヒナートの家名を名乗っていても、出自はどこの誰ともわからない。
そんな自分が誰かと夫婦になり、子供を設けてもいいのだろうかという思いもあった。
しかし、そうではなかった。
かと言ってステファンや他の令息たち、王太子殿下に対しては友愛以上の気持ちは感じないし、彼らの裸を見ても、何とも思わない。
ギャレットにだけ、反応するのは、自分が彼を弟ではなく、そういう対象として意識しているからだと気づいた。
この先、自分はギャレットしかほしくない。ギャレットだけがいればいい。
しかし、ギャレットはそうではない。
この想いは自分だけのもの。ましてや彼に応えて貰おうとは思わない。
そんな時、レーヌ=オハイエに意外なことを言われた。
「あなたは、私の兄かもしれない」
王太子殿下の側近としてシェルテーレの王宮に足を踏み入れた時も、何人かの者がこちらを見て一瞬驚いた顔をした。
それが瞳のことだとわかっていた。
イベルカイザでは特に気にすることはなかったが、すぐ隣にありながら、この国では「赤い瞳」に対する忌避感を肌で感じる。
王太子殿下の行動は常に注目の的。そこに自分が加わることで、シェルテーレ内で更に目立つことになる。
今度のシェルテーレの訪問にはもうひとつ隠された目的があった。
それがベルン辺境伯領による横領の調査だった。
そのため、ステファンは居残りと称して別で動き、自分たちはその目を逸らすためにも注目されるべきだった。
「おにいちゃん、だいじょーぶ?」
いつの間にか眠っていたらしい。
向かいの檻の中から、やせ細って腕が枯れ枝のようになり、目だけがギョロギョロした少年が声をかけてきて気が付いた。
「大丈夫だ」
体の傷は今は乾き、血が止まっていることを確認して微笑んだ。
「君たちこそ、大丈夫か?」
「うん…お腹は…空いてるけど…」
自分もここに来て水以外何も口にしていない。あの子たちはカビが生えて固くなったパンを与えられていたようだった。
「相変わらず、ここは最低だな」
あいつはどこかに行ったようだ。
シャイユカルド教の幹部だった男。もしかしたら今でも幹部かも知れない。すっかり年を取り、髪も真っ白になっていたが、変わらず狂気に満ちた目をしている
「ギャレット…」
以前は心を閉ざすことで何とか耐えた。
今回は閉ざすわけにはいかない。だから大切な存在を思い続けることで、耐え抜こうと思った。
ギャレットとの出会いが、ジュストの運命の新たな道を切り開いた。
あの日から、ジュストはギャレットのために生きようと思った。
しかし、子育て(弟育て)は思うようにいかなかった。
ギャレットの望みを何でも叶えてやりたいと、彼の望むままに聞き入れてきたが、そのせいでギャレットはすっかり我儘放題になった。
しかし、そんな我儘も、すべて受け入れてしまうほどに彼はギャレットのことを愛しく思っていた。
そんなギャレットが変わった。ある時、ジュストの持つ剣を貸してくれとギャレットはいつものように我儘を言ってきた。しかし、さすがにこれは危険だと突っぱねると、ギャレットは火が付いたように泣き出した。そして無理矢理ジュストから剣を奪おうとして転んで頭をぶつけた。
変わったのはその時からだった。
我儘は鳴りを潜め、代わりにやたらとジュストを褒め称えるようになった。
あまりの変わり様と、褒められ慣れていないこともあって、ジュストは戸惑った。
ステファンとの関係も、ギャレットが変わったことで変化した。
三人で、途中からカレンも生まれて四人になり、楽しい日々が続いた。
しかし、ジュストは時折記憶の底に閉じ込め、忘れている過去に悩まされるようになった。
そして、ギャレットへの思いが、兄としてのそれとは違うのではないかという疑問も湧いた。
それが確定になったのは、ギャレットが精通を迎えた時、初めてのことに戸惑い、涙目になってこちらを見る表情を見て、胸が疼いた。
そして、お風呂の中で頬を赤らめ自慰に及んだ彼の姿を見て、自分の体が反応したのがわかった。
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自分はモヒナート家に引き取られ、モヒナートの家名を名乗っていても、出自はどこの誰ともわからない。
そんな自分が誰かと夫婦になり、子供を設けてもいいのだろうかという思いもあった。
しかし、そうではなかった。
かと言ってステファンや他の令息たち、王太子殿下に対しては友愛以上の気持ちは感じないし、彼らの裸を見ても、何とも思わない。
ギャレットにだけ、反応するのは、自分が彼を弟ではなく、そういう対象として意識しているからだと気づいた。
この先、自分はギャレットしかほしくない。ギャレットだけがいればいい。
しかし、ギャレットはそうではない。
この想いは自分だけのもの。ましてや彼に応えて貰おうとは思わない。
そんな時、レーヌ=オハイエに意外なことを言われた。
「あなたは、私の兄かもしれない」
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