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第四章 騎士団の洗礼
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「ふう」
上着を脱いで、紫紋はベッドに倒れ込んだ。
ベッドの硬さは中程度。普段布団で寝ている紫紋としては、畳が恋しい。
「異世界って、まじかよ」
怒涛の一日だった。いや、ここに召喚されたのは夜だったから、もっと経っているかも知れない。
スマホは当然ながら圏外。
「俺に、聖力? 魔法って本当か?」
自分の両手を持ち上げ、手首を捻りながらその手を見る。実感はわかないが、ファビアン副神官とのやり取りは確かに現実に起ったことだ。
「疲れた」
このまま眠ってしまいたいところだが、着ている服を脱がないと皺になる。それに出来ればゆっくり風呂に入りたい。
のろのろと起き上がって、その場で服を全部脱ぎ捨て素っ裸になり、浴室に向かおうとした。
「カドワキ…わ!」
突然ピエールが入ってきた。
「わ」
「な、なんでは、はだ…」
「何って、今からお風呂と思って」
突然人が入ってきたので驚いたが、銭湯などで慣れているので、その点は慣れている。
なので大事な場所は見えていないが、隠すつもりもなく紫紋はピエールの前に裸体をさらけ出した。
「それで、何か用か?」
「そ、その…浴室の使い方を…やり方がわからないかと…」
ピエールは顔を赤くして目を逸らしながら答えた。
「あ、そうなのか。それは悪い。じゃあ、今から教えてもらえるか?」
そう言って紫紋は先に浴室へと歩いて行く。
「えっと、明かりは…」
入ってすぐの所の壁に、部屋の入り口にあったのと同じ魔石を見つけ、そこに軽く触れてみる。
「……あれ?」
しかし明かりはすぐには点かない。
「何をしている。魔力を流さないと反応しないぞ」
イラッとした声が背後からする。
「うん、それはわかるが…どうやって魔力って流す?」
「魔石に触れれば勝手に流れる」
「そうなんだが…」
頭ではわかるが、そのやり方がわからない。
何しろ人生でこれまで魔力なんて樹にしたこともない。
「こうするんだ」
苛立った声がして、背中に人の体がぶつかり、背後からまわってきた手が、魔石に触れている紫紋の手に重なる。
「ほら、お腹からこの手の先まで魔力が流れるのを意識して」
「わかった」
目をつぶり、紫紋はお腹に意識を集中する。
そしてそこから血液が酸素を運ぶイメージで、手の先へて流す。
すると、パッと明かりが点った。
「点いた!」
ガス灯を初めて見た人のように、天井に点いた明かりに紫紋は叫んだ。
「当たり前だ」
ピエールにとっては普通のことなので、こんなことで驚く紫紋が変に思えるのかも知れない。
浴室は温泉旅館の個室についたお風呂という感じで、そこにユニットバスのように便器が置かれている。
「浴室のここにあるのが水の魔石と火の魔石。ここに流す魔力を調整する」
浴槽の側に跪き、ピエールが二つの魔石ついて説明する。
慣れている彼は、軽くタッチするだけで簡単にお湯と水が出た。
「それからあっちは便器。排泄したら横の魔石に魔力を流すと、底に溜まったものが風魔法で飛ばされる」
「風魔法…」
紫紋は浴槽の魔石に触れてみたが、やはり彼のようにはいかない。少し集中すれば出来るが、どうしても時間がかかった。
「止めるにはどうしたら?」
「魔石が働いている状態で、もう一度触れる。その時に魔力は必要ない。魔石は魔力に反応するから、それで止まる」
「なるほど」
紫紋は魔石を交互に触れ、水を出したり止めたりを試した。
「大丈夫そうだな」
「ああ、助かる、ありがとうな」
浴槽の縁で並んで座り込む、ピエールの肩に手を置き、お礼を言う。
裸で体育座りが様にならないが。
「面倒を見ろという団長の命令だからな。任務だから」
「そうか、それでもありがとう」
重ねてお礼を言うと、ピエールはプイッと顔を背けてしまった。よく見ると耳が赤い。
「そういえば、もう一人お兄さんがいるよな」
「アーマド兄上のことか?」
その話題を出すと、彼は再びこちらを向いた。
「そう。宰相だってね」
「歴代最年少の大抜擢だ」
「そうだったんだ。凄いな」
「そうだ。凄いんだ。ファビアン兄上も、副神官だし、兄上たちは素晴らしい。私だけ…私だけが…」
そこで彼の顔が曇った。
どうやら優秀な兄二人のことは誇りだが、それに比べて自分が劣るという思いが、少なからずあるらしい。
「腕は確かで、騎士としても優秀ですって、副神官が言っていたぞ。副神官は君のことを誇りに思っているようだ」
慰めるつもりはなかったが、隠す必要もないので、それを伝えた。
「ファビアン兄上がか?」
「そうだ」
「本当に、本当か?」
「こんなことで嘘を言っても仕方がないだろ?」
そう言うと、確かにとピエールは頷いた。
「でも兄上は、家族のことを他人にあまり話さないんだ。アーマド兄上が宰相だから、色々便宜を図ってもらってるって、変な勘繰りをする者もいるから」
「それは、いきなり異世界に来て、騎士団で暮らす俺のことを心配して、言ってくれたのだと思う。頼りになるから、何かあったら頼れ、ということなんだろう」
「頼りに…なる? 私が? 兄上はそう思ってくれている?」
「いい家族だな」
「ふん、そんなこと、お前に言われなくてもわかっている」
憎まれ口を叩いているが、尻尾があったらきっとフリフリしているだろう。
「ヘクチッ」
紫紋はクシャミをしたりなかなかにいい話をしていると思うが、やはり裸の体育座りでは、絵面がヤバかった。
上着を脱いで、紫紋はベッドに倒れ込んだ。
ベッドの硬さは中程度。普段布団で寝ている紫紋としては、畳が恋しい。
「異世界って、まじかよ」
怒涛の一日だった。いや、ここに召喚されたのは夜だったから、もっと経っているかも知れない。
スマホは当然ながら圏外。
「俺に、聖力? 魔法って本当か?」
自分の両手を持ち上げ、手首を捻りながらその手を見る。実感はわかないが、ファビアン副神官とのやり取りは確かに現実に起ったことだ。
「疲れた」
このまま眠ってしまいたいところだが、着ている服を脱がないと皺になる。それに出来ればゆっくり風呂に入りたい。
のろのろと起き上がって、その場で服を全部脱ぎ捨て素っ裸になり、浴室に向かおうとした。
「カドワキ…わ!」
突然ピエールが入ってきた。
「わ」
「な、なんでは、はだ…」
「何って、今からお風呂と思って」
突然人が入ってきたので驚いたが、銭湯などで慣れているので、その点は慣れている。
なので大事な場所は見えていないが、隠すつもりもなく紫紋はピエールの前に裸体をさらけ出した。
「それで、何か用か?」
「そ、その…浴室の使い方を…やり方がわからないかと…」
ピエールは顔を赤くして目を逸らしながら答えた。
「あ、そうなのか。それは悪い。じゃあ、今から教えてもらえるか?」
そう言って紫紋は先に浴室へと歩いて行く。
「えっと、明かりは…」
入ってすぐの所の壁に、部屋の入り口にあったのと同じ魔石を見つけ、そこに軽く触れてみる。
「……あれ?」
しかし明かりはすぐには点かない。
「何をしている。魔力を流さないと反応しないぞ」
イラッとした声が背後からする。
「うん、それはわかるが…どうやって魔力って流す?」
「魔石に触れれば勝手に流れる」
「そうなんだが…」
頭ではわかるが、そのやり方がわからない。
何しろ人生でこれまで魔力なんて樹にしたこともない。
「こうするんだ」
苛立った声がして、背中に人の体がぶつかり、背後からまわってきた手が、魔石に触れている紫紋の手に重なる。
「ほら、お腹からこの手の先まで魔力が流れるのを意識して」
「わかった」
目をつぶり、紫紋はお腹に意識を集中する。
そしてそこから血液が酸素を運ぶイメージで、手の先へて流す。
すると、パッと明かりが点った。
「点いた!」
ガス灯を初めて見た人のように、天井に点いた明かりに紫紋は叫んだ。
「当たり前だ」
ピエールにとっては普通のことなので、こんなことで驚く紫紋が変に思えるのかも知れない。
浴室は温泉旅館の個室についたお風呂という感じで、そこにユニットバスのように便器が置かれている。
「浴室のここにあるのが水の魔石と火の魔石。ここに流す魔力を調整する」
浴槽の側に跪き、ピエールが二つの魔石ついて説明する。
慣れている彼は、軽くタッチするだけで簡単にお湯と水が出た。
「それからあっちは便器。排泄したら横の魔石に魔力を流すと、底に溜まったものが風魔法で飛ばされる」
「風魔法…」
紫紋は浴槽の魔石に触れてみたが、やはり彼のようにはいかない。少し集中すれば出来るが、どうしても時間がかかった。
「止めるにはどうしたら?」
「魔石が働いている状態で、もう一度触れる。その時に魔力は必要ない。魔石は魔力に反応するから、それで止まる」
「なるほど」
紫紋は魔石を交互に触れ、水を出したり止めたりを試した。
「大丈夫そうだな」
「ああ、助かる、ありがとうな」
浴槽の縁で並んで座り込む、ピエールの肩に手を置き、お礼を言う。
裸で体育座りが様にならないが。
「面倒を見ろという団長の命令だからな。任務だから」
「そうか、それでもありがとう」
重ねてお礼を言うと、ピエールはプイッと顔を背けてしまった。よく見ると耳が赤い。
「そういえば、もう一人お兄さんがいるよな」
「アーマド兄上のことか?」
その話題を出すと、彼は再びこちらを向いた。
「そう。宰相だってね」
「歴代最年少の大抜擢だ」
「そうだったんだ。凄いな」
「そうだ。凄いんだ。ファビアン兄上も、副神官だし、兄上たちは素晴らしい。私だけ…私だけが…」
そこで彼の顔が曇った。
どうやら優秀な兄二人のことは誇りだが、それに比べて自分が劣るという思いが、少なからずあるらしい。
「腕は確かで、騎士としても優秀ですって、副神官が言っていたぞ。副神官は君のことを誇りに思っているようだ」
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「ファビアン兄上がか?」
「そうだ」
「本当に、本当か?」
「こんなことで嘘を言っても仕方がないだろ?」
そう言うと、確かにとピエールは頷いた。
「でも兄上は、家族のことを他人にあまり話さないんだ。アーマド兄上が宰相だから、色々便宜を図ってもらってるって、変な勘繰りをする者もいるから」
「それは、いきなり異世界に来て、騎士団で暮らす俺のことを心配して、言ってくれたのだと思う。頼りになるから、何かあったら頼れ、ということなんだろう」
「頼りに…なる? 私が? 兄上はそう思ってくれている?」
「いい家族だな」
「ふん、そんなこと、お前に言われなくてもわかっている」
憎まれ口を叩いているが、尻尾があったらきっとフリフリしているだろう。
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