ブレイブハーツ

暁月

文字の大きさ
2 / 4
第一章 旅立ち

一話 運命の少女

しおりを挟む
 誰かが自分を呼んでいる・・・。
 無意識に自分を呼ぶ声に耳を傾け、歩き出す。
 しばらく歩くと、目の前に誰かがいた。その人物は静かに語りかけた。
「・・・ルミファ。」と。

 よく晴れた青空の下、広い緑の原っぱで一人の幼い少女が寝転がっていた。
 年は十二歳前後といったところか。小柄でしなやかな華奢な体つきをしている。まだあどけなさを残す幼い顔立ちだが、どこか気品を思わせる。肩の辺りまで切りそろえた赤みをおびた金髪。まるで、夕焼け空の色のようだ。
 少女の瞼が開いた。少女の右目は太陽のように輝く金色の瞳。左目は夜明けの夜空を思わせる瑠璃色の瞳という二つの異なるオッドアイを持つ。
 目をこすりながら、大きな欠伸をする。
 「・・・なんだったんだろうなぁ。今の夢・・・。」
 少女の視界には果てしない青空と白いふわふわとした雲が流れて広がっていた。
「まぁ、いいか。あー、よく寝た。明日は学校は休みだし。何しようかなぁ。」
 少女の名はルミファ。ルミファ・スカーレット。
 一見大人しくしていれば、誰もがその可憐な容姿に見惚れる可愛いらしい美少女なのだが、この少女ルミファは幼少の頃から野山を駆け回り、木登りすることを好み、女の子の服より主に男の子の服を着ている元気いっぱいの男まさりのお転婆な女の子なのだ。
 さて、ルミファが生きるこの世界「アストリア」の成り立ちについて語ろう。
 はるか昔、アストリアに生きる人間を始めとする多くの種族は世界に満ちる根源の力「マナ」を使い、魔術、錬金術を始めとする高度な文明を築き上げ、平和と繁栄を謳歌していた。
 だが、ある時が現れた。後にと呼ばれるその者たちは、当時アストリアの最高技術であった魔術、錬金術を遥かに凌駕する力を持っていた。
 更にたちは凶暴な魔物を従え、自分たちに反抗する者たちを攻撃し、アストリアの地を破壊し尽くした。
 人々が絶望し、に降伏しようとした時、一人の救世主が現れた。
 その名は『アウラ』。彼女は類稀なる力と優れた知識を持った女賢者であった。アストリアに平和を取り戻すべく戦う彼女の元に集まった仲間たちと共にたちに戦いを挑んだ。
 アウラたちの正義、勇気、理想そして心の強さを認めたアストリアの万物に宿りし森羅万象を司るたち、アストリアの生物が長い時をかけて進化したたちもアウラたちに力を与え、更にアストリアの神とも言うべき存在と契約したアウラは長い激しい戦いの末、の長を倒し、アストリアに平和を取り戻した。
 アウラはアストリアを救った。アウラと共に戦い大精霊たちと契約した仲間たちはとして後世に語り継がれることになる。
 後にこの戦い、アウラたちの生きた時代をと呼ばれることなる。
 伝説のからはるかな時が流れ、長い歴史の中でいくつもの国が興り、そして滅んでいった。
 結果、アストリアには四つの大国が栄えている。
 の魔術と錬金術、発展させ、軍事大国と名をはせる
 東方の独自の文化と技術を持つ
 誇り高き勇猛なる騎獣民族の末裔が治める
 南の未開の大陸に築かれた
 これらをアストリア四大国と言う。
 この他にも数少ない小国が存在している。
 そして、世界の抑止力として、救世主アウラと彼女と共に戦った仲間・・・を奉る国際宗教国家によって世界の均衡は維持されていた。
 だがアストレア聖皇国の力を持ってしても、アストリア各地で争いの火種が燻り始めていた。
 さて話は戻り、少女ルミファが暮らしているのは、アストリア四大国の一つ、セレンディア帝国の領土に属しているセレンディア帝国の首都、帝都グランシェルドからはるか北西部に位置する辺境の山奥の村ラーネである。
 ラーネの西には大連峰アトラス山脈がそびえ立ち、その山脈を超えた向こうにアストリア四大国の一つ、モンゴール王国がある。
 ラーネは農業ー主に酪農、畑作ーが盛んなのどかな田舎、村は自給自足の生活を営んでいる。ラーネ一帯を治めている辺境伯は領民を思いやる領主として知られている。思いやりのある領主だからこそラーネの暮らしは平和なのである。
 そんな平和の村に暮らすルミファ。ルミファは現在、祖父母と暮らしている。
 ルミファの両親は既に他界しており、父はルミファが生まれる少し前に不慮の事故で亡くなり、母もルミファを産んですぐに亡くなってしまったと祖父に聞かされた。その後、父方の祖父母であるローエンとミルヴァのスカーレット老夫婦に引き取られ、以降ローエンの故郷であるラーネの村で暮らしてきたのだ。
 さて、ルミファは普段、家の手伝いー自宅の家事、畑仕事、おつかいーをしつつ村の学校に通い、勉強に励んでいる。
 そして、空いた時間はローエンに剣術と護身術を学んでいる。
 祖父のローエンはセレンディアの元軍人であり、自分の身は自分で守るようにと言い聞かされ、ローエンに幼い頃から鍛えられ、才能があったのか剣術と護身術の腕を上げていった。
 原っぱで昼寝をしていたルミファは、起き上がり、「うーん」と背伸びし軽く体をほぐすと、側に置いてあった愛用の木剣を手に取り、自分の家に帰るために歩き出す。   
 明日は学校が休みだから何をしようか。
 今日の夕飯はなんだろうか。
 そんな他愛もない呑気なことを考えている少女ルミファはこの時、知る由もなかった自分が大きな運命を背負うことになるだということに…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...