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35話
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ほんの一瞬だけ、魔法使いの手のひらと魔法陣とを渡すように閃光が走るのが見えた。まるでチェレンコフ放射を彷彿とさせる光──いや、それ以上の莫大なエネルギーの放射を予感させる狂気的な輝き。これまでも魔法が発動される瞬間を目にしたことは何度かあったが、これほどまでに網膜を焦がすものはなかった。というか、果たして魔法陣を起動するためにこれほどの量のエネルギーが必要とされるのか。
追憶する私を他所に、上下を魔法陣で挟まれた暗黒空間が次第に背景を透かし始める。場が不安定ですぐに蒸発してしまうというのは本当らしい。二つの魔法陣の発光が収まる頃には、既にそこには見慣れた、当たり前の空間が鎮座していた。
私だって学問を愛する者のうちの一人として、魔法学についての学術書、いわゆる〈魔術書〉を何冊かは読んだことがある。確かそこには、魔法陣の主な役割は周辺の魔力を吸収および放出する際に掛かる身体への負荷を大幅に肩代わりすることである、といったような内容が記されていたはず。つまり〈魔力媒介〉が主役というわけだ。魔法陣自体の一般的な構成としては、そういった性質の発現を命令する部分を核として、最終的な魔法の作用を発動させる部分を核の円周に付随させ、最後に、核に向けてスイッチの役割をする部分を結べば完成らしい。そうしてやっと、魔力吸収-魔法効果の発動-魔力放出、という一連の流れを司る基礎基盤が満たされる。もちろん、魔法効果の発動を司る部分については魔力調整を含む複雑化の可能性が認められる……というか必要性がある。
だとすれば、だ。魔法陣を起動させる者に求められるのは、スイッチを押すという行為のみのはずである。スイッチにもいくつか種類はあるらしいが、それにしても、さっき魔法使いが用いたような莫大なエネルギーがその部分に求められるものだろうか。いや、そうは考えにくい。だとすればあの輝きは──。
まさか、魔理沙から魔法陣へ、ではなくて、魔法陣から魔理沙へと伸びたのか?
ちらりと魔理沙の腕に目をやると、そこは悲惨な状態だった。肘から下が今にも皮膚が破裂しそうなくらい酷く腫らして、白んだ肉の表面を血が滲んでいる。女性らしくすらりと伸びた指の面影はとうに無く、関節は愚か、付け根の位置すらガタガタにズレていた。やがて数秒も経たないうちに指先だった部分から出血が始まると、腫れた肉に埋もれていた爪が、ゲル状になった血肉に文字通り押し出されて弾け飛び、床に落ちる。ぶちゅぶちゅと身の毛も弥立つような音を立てながら体液が溢れ出しては床を赤く染める。
「いま、治そう。とりあえず鎮痛薬を打つから……ええと、どこだっけか」
私は視線を逸らすように彼女に背を向けて、背負っていたリュックサックを床に降ろし中に腕を突っ込んだ。それからガサゴソ始めようとしていたところ、魔法使い本人から声をかけられた。
「いや、いいよ。治癒魔法で十分だ」
動揺が激しいわけではないが、軽く覚悟を決めてから改めて惨状へと顔を向ける。つい今しがた腫れていた腕は既に消失しており、その代わり、躊躇なく切断された肘より下では骨が露出して、床に落ちた血肉から再度生成された筋肉がその表面を覆い尽くすところだった。順々に脂肪や皮膚が巻き付けられると、あっという間に腕は元通りになった。
「問題ない。なんとなく、こうなることは予測はできていたから、きちんと人体の構造についても勉強して治癒のイメージも固めておいたんだよ」
「予測してたって……これが初回だったの?」
「まあな。それよりどうだ、魔女粒子を観測した感想は?」
魔法使いは腕を振ったり伸ばしたりしながら、先程の惨状が何でもなかったかのように尋ねてくる。……思い出しても愉快な光景ではない。私もあまり考えないようにしよう。
「正直びっくりしてるよ。まさか光を完全に吸収するなんて」
「惜しいな。正確なことは分からないが、恐らく光を〈破壊〉してるんだよ。光は波として現れた素粒子の働きだから、強い相互作用が崩壊して場に穴があいているんだと思う」
「重力の特異点みたいなことではなくて?」
「場に穴が空くという点に注目すればそれはあり得るかもしれないが、確かな関係性はまだ分からない。解明されていない物理現象が芋蔓式にいくつも関連して、一つの系となって魔法場が現れているのかもしれないしな」
「魔法場から、この宇宙の基礎的な力が滲み出ている可能性が伺えるわけか。……待て、強い相互作用を崩壊させられるほどのエネルギーを、どうやってそこに封じ込めている?」
「空間そのものに働く反作用だよ。純魔石──中心においてあった魔女粒子結晶──から放射状のベクトルを持ったエネルギーが、魔法陣で区切られた空間内に作用する。それとは全く逆向きのベクトルで働く力が、魔法陣によって定められた空間の〈壁〉によって常に維持されて、文字通り空間そのものに拮抗しているんだ」
「なるほど、作用反作用の法則を魔法の概念に組み込んだのか。屁理屈にも聞こえるが、魔法に科学的根拠を求めすぎるのも野暮かな……だとしても、一つ疑問が残る。そうなると、魔力って何だよ。エネルギーは素粒子のポテンシャルとキネティックの総量であり場そのものだ。そんな場を破壊して取り出すというのなら、まるで質量保存則の破れが生じて──」
そこまで思考が巡り、はっと気が付くことがあった。
「魔法は、質量保存則から外れていないか?」
「……詳しく」(魔理沙)
「炎や水、氷、電気、それから時空操作──他にも魔法の種類は色々あるけど、どれも物理現象を発現させる力、すなわちエネルギー操作だ。エネルギーを操作するためにはさらにそのきっかけとなるエネルギーが求められるが、その因果関係を遡っていけばそれこそ特異点が生じる。……魔法を発動させるためのエネルギーは、どこから取り出している?」
二つの意味で沈黙が辺りを包む。一つは思考の加速。もう一つは思考の停止である。後者は除け者にされている巫女のものだった。
「河童、お前もそう思うか。私たち魔法使いや魔女はほとんど無意識に魔力を媒介しているから特に違和感はないけど、理論を突き詰めていけばその問題に突き当たる」
「ここに来るまでの道中、イデア論の話をしていたね。思い当たる節がある、異変が解決したら実験してみよう」
「思い当たる節?」(霊夢)
「今は言っても仕方ない。とにかく……ええと、なんだっけ。ブレスレット? についてもう少し詳しく聞かせてよ」
私が左手首を擦りながらそう言うと、魔理沙は「こっちだ」と言ってまた別の部屋へと私を案内した。そこはまさしく「研究室《ラボ》」と呼ぶにふさわしい風貌の部屋で、テーブルの上には資料やメモ書きなんかが大量に溢れている。
そのうちの一枚を手にとって壁に貼り付け、魔理沙は話し始めた。
「まず第一に、時空魔法の解除はさっき見せたような区切られた空間の内側──便宜上〈暗黒領域〉と呼ぼうか──で行う。それで、魔法陣を起動したときに私の腕が被爆したのは記憶に鮮明だろう。場の崩壊は、魔力を媒体にして対象と対象とを結びつけるんだ。時空魔法を解除する際、暗黒領域の内側に駐屯する者、暗黒領域を出入りする可能性のある者がいる。生身で入れば即死だ。だから、暗黒領域の内側で、身体を覆うように通常の空間を貼り付ける必要がある。だがそれだと、魔法解除の操作で実際に魔法を使う私みたいな奴は、結局、魔力を介して暗黒領域と身体とが結ばれてしまうだろう。それだと意味がない。だから……」
魔理沙は一気に理論構築を説明してから、壁に貼り付けてあったブレスレットの構造図に指を移して結論を言った。
「純魔石を一部砕いて加工し、ブレスレットに取り付けて、魔力のトンネル効果を用いた術式転移を行う」
トンネル効果……?
「トンネル効果が魔法場理論の中にも登場するの?」
「実証は済んでないが理論上は発現するらしい。量子場では魔女粒子自体が不安定で、観測できるだけの条件を揃えられないが、魔法場の中で……つまり暗黒領域の内側でなら魔女粒子の働きが正確に現れる」
「……それで?」
「対象の座標を設定した術式を、純魔石に向かって発動する。通常の空間では働かない魔法の力は、魔女粒子にぶつかった瞬間に魔法場の存在に引っ張られて、ポテンシャル障壁を透過する。……と、思われる」
「不確かだなぁ」
「実験してみないと、そりゃあ事実は定かじゃないよ」
私は机の上に散乱した資料と壁に貼られた理論とを何度も往復し、自分の頭の中にある現代科学理論と擦り合わせながら吟味する。
物理理論的な側面を多く示しておきながら、その実は量子の場から乖離した一つの独立可能な系としての魔法。ポテンシャル障壁を越える仕組みだって、エネルギー準位のイメージに親《ちか》しいながらも引き寄せ合う力のように感じる。物理法則を内包した、もっと高次の概念──やっぱり、魔法は〈この世界〉の想像可能性を表象するものなのか? そう、まるでプラトンが唱えたイデアみたいに。まぁとにかく──。
「とにかく、ブレスレットの開発には魔法学と工学の知識が必要なのは分かったよ。そこで、魔法使いの力を貸してもらいたい。私一人では魔法学の知識に欠けるからね」
「もちろん、構わない。はじめからそのつもりだ」
「ん、了解したよ。それじゃあ──」
私は鞄から球状の装置を取り出すと、起動して空中へと放り投げた。黒い硝子面の内側から赤い二次元レーザーが照射され、辺りの資料をくまなくスキャンする。床も、机上も、壁も。すべて。
「私のラボに帰ろう」
スキャンを済ませた球が忠実に私の手のひらに戻ってくる。黒光りする硝子球の内側に閉じ込められた〈脳〉が放つ熱が、手のひらをじんわりと侵食していった。
追憶する私を他所に、上下を魔法陣で挟まれた暗黒空間が次第に背景を透かし始める。場が不安定ですぐに蒸発してしまうというのは本当らしい。二つの魔法陣の発光が収まる頃には、既にそこには見慣れた、当たり前の空間が鎮座していた。
私だって学問を愛する者のうちの一人として、魔法学についての学術書、いわゆる〈魔術書〉を何冊かは読んだことがある。確かそこには、魔法陣の主な役割は周辺の魔力を吸収および放出する際に掛かる身体への負荷を大幅に肩代わりすることである、といったような内容が記されていたはず。つまり〈魔力媒介〉が主役というわけだ。魔法陣自体の一般的な構成としては、そういった性質の発現を命令する部分を核として、最終的な魔法の作用を発動させる部分を核の円周に付随させ、最後に、核に向けてスイッチの役割をする部分を結べば完成らしい。そうしてやっと、魔力吸収-魔法効果の発動-魔力放出、という一連の流れを司る基礎基盤が満たされる。もちろん、魔法効果の発動を司る部分については魔力調整を含む複雑化の可能性が認められる……というか必要性がある。
だとすれば、だ。魔法陣を起動させる者に求められるのは、スイッチを押すという行為のみのはずである。スイッチにもいくつか種類はあるらしいが、それにしても、さっき魔法使いが用いたような莫大なエネルギーがその部分に求められるものだろうか。いや、そうは考えにくい。だとすればあの輝きは──。
まさか、魔理沙から魔法陣へ、ではなくて、魔法陣から魔理沙へと伸びたのか?
ちらりと魔理沙の腕に目をやると、そこは悲惨な状態だった。肘から下が今にも皮膚が破裂しそうなくらい酷く腫らして、白んだ肉の表面を血が滲んでいる。女性らしくすらりと伸びた指の面影はとうに無く、関節は愚か、付け根の位置すらガタガタにズレていた。やがて数秒も経たないうちに指先だった部分から出血が始まると、腫れた肉に埋もれていた爪が、ゲル状になった血肉に文字通り押し出されて弾け飛び、床に落ちる。ぶちゅぶちゅと身の毛も弥立つような音を立てながら体液が溢れ出しては床を赤く染める。
「いま、治そう。とりあえず鎮痛薬を打つから……ええと、どこだっけか」
私は視線を逸らすように彼女に背を向けて、背負っていたリュックサックを床に降ろし中に腕を突っ込んだ。それからガサゴソ始めようとしていたところ、魔法使い本人から声をかけられた。
「いや、いいよ。治癒魔法で十分だ」
動揺が激しいわけではないが、軽く覚悟を決めてから改めて惨状へと顔を向ける。つい今しがた腫れていた腕は既に消失しており、その代わり、躊躇なく切断された肘より下では骨が露出して、床に落ちた血肉から再度生成された筋肉がその表面を覆い尽くすところだった。順々に脂肪や皮膚が巻き付けられると、あっという間に腕は元通りになった。
「問題ない。なんとなく、こうなることは予測はできていたから、きちんと人体の構造についても勉強して治癒のイメージも固めておいたんだよ」
「予測してたって……これが初回だったの?」
「まあな。それよりどうだ、魔女粒子を観測した感想は?」
魔法使いは腕を振ったり伸ばしたりしながら、先程の惨状が何でもなかったかのように尋ねてくる。……思い出しても愉快な光景ではない。私もあまり考えないようにしよう。
「正直びっくりしてるよ。まさか光を完全に吸収するなんて」
「惜しいな。正確なことは分からないが、恐らく光を〈破壊〉してるんだよ。光は波として現れた素粒子の働きだから、強い相互作用が崩壊して場に穴があいているんだと思う」
「重力の特異点みたいなことではなくて?」
「場に穴が空くという点に注目すればそれはあり得るかもしれないが、確かな関係性はまだ分からない。解明されていない物理現象が芋蔓式にいくつも関連して、一つの系となって魔法場が現れているのかもしれないしな」
「魔法場から、この宇宙の基礎的な力が滲み出ている可能性が伺えるわけか。……待て、強い相互作用を崩壊させられるほどのエネルギーを、どうやってそこに封じ込めている?」
「空間そのものに働く反作用だよ。純魔石──中心においてあった魔女粒子結晶──から放射状のベクトルを持ったエネルギーが、魔法陣で区切られた空間内に作用する。それとは全く逆向きのベクトルで働く力が、魔法陣によって定められた空間の〈壁〉によって常に維持されて、文字通り空間そのものに拮抗しているんだ」
「なるほど、作用反作用の法則を魔法の概念に組み込んだのか。屁理屈にも聞こえるが、魔法に科学的根拠を求めすぎるのも野暮かな……だとしても、一つ疑問が残る。そうなると、魔力って何だよ。エネルギーは素粒子のポテンシャルとキネティックの総量であり場そのものだ。そんな場を破壊して取り出すというのなら、まるで質量保存則の破れが生じて──」
そこまで思考が巡り、はっと気が付くことがあった。
「魔法は、質量保存則から外れていないか?」
「……詳しく」(魔理沙)
「炎や水、氷、電気、それから時空操作──他にも魔法の種類は色々あるけど、どれも物理現象を発現させる力、すなわちエネルギー操作だ。エネルギーを操作するためにはさらにそのきっかけとなるエネルギーが求められるが、その因果関係を遡っていけばそれこそ特異点が生じる。……魔法を発動させるためのエネルギーは、どこから取り出している?」
二つの意味で沈黙が辺りを包む。一つは思考の加速。もう一つは思考の停止である。後者は除け者にされている巫女のものだった。
「河童、お前もそう思うか。私たち魔法使いや魔女はほとんど無意識に魔力を媒介しているから特に違和感はないけど、理論を突き詰めていけばその問題に突き当たる」
「ここに来るまでの道中、イデア論の話をしていたね。思い当たる節がある、異変が解決したら実験してみよう」
「思い当たる節?」(霊夢)
「今は言っても仕方ない。とにかく……ええと、なんだっけ。ブレスレット? についてもう少し詳しく聞かせてよ」
私が左手首を擦りながらそう言うと、魔理沙は「こっちだ」と言ってまた別の部屋へと私を案内した。そこはまさしく「研究室《ラボ》」と呼ぶにふさわしい風貌の部屋で、テーブルの上には資料やメモ書きなんかが大量に溢れている。
そのうちの一枚を手にとって壁に貼り付け、魔理沙は話し始めた。
「まず第一に、時空魔法の解除はさっき見せたような区切られた空間の内側──便宜上〈暗黒領域〉と呼ぼうか──で行う。それで、魔法陣を起動したときに私の腕が被爆したのは記憶に鮮明だろう。場の崩壊は、魔力を媒体にして対象と対象とを結びつけるんだ。時空魔法を解除する際、暗黒領域の内側に駐屯する者、暗黒領域を出入りする可能性のある者がいる。生身で入れば即死だ。だから、暗黒領域の内側で、身体を覆うように通常の空間を貼り付ける必要がある。だがそれだと、魔法解除の操作で実際に魔法を使う私みたいな奴は、結局、魔力を介して暗黒領域と身体とが結ばれてしまうだろう。それだと意味がない。だから……」
魔理沙は一気に理論構築を説明してから、壁に貼り付けてあったブレスレットの構造図に指を移して結論を言った。
「純魔石を一部砕いて加工し、ブレスレットに取り付けて、魔力のトンネル効果を用いた術式転移を行う」
トンネル効果……?
「トンネル効果が魔法場理論の中にも登場するの?」
「実証は済んでないが理論上は発現するらしい。量子場では魔女粒子自体が不安定で、観測できるだけの条件を揃えられないが、魔法場の中で……つまり暗黒領域の内側でなら魔女粒子の働きが正確に現れる」
「……それで?」
「対象の座標を設定した術式を、純魔石に向かって発動する。通常の空間では働かない魔法の力は、魔女粒子にぶつかった瞬間に魔法場の存在に引っ張られて、ポテンシャル障壁を透過する。……と、思われる」
「不確かだなぁ」
「実験してみないと、そりゃあ事実は定かじゃないよ」
私は机の上に散乱した資料と壁に貼られた理論とを何度も往復し、自分の頭の中にある現代科学理論と擦り合わせながら吟味する。
物理理論的な側面を多く示しておきながら、その実は量子の場から乖離した一つの独立可能な系としての魔法。ポテンシャル障壁を越える仕組みだって、エネルギー準位のイメージに親《ちか》しいながらも引き寄せ合う力のように感じる。物理法則を内包した、もっと高次の概念──やっぱり、魔法は〈この世界〉の想像可能性を表象するものなのか? そう、まるでプラトンが唱えたイデアみたいに。まぁとにかく──。
「とにかく、ブレスレットの開発には魔法学と工学の知識が必要なのは分かったよ。そこで、魔法使いの力を貸してもらいたい。私一人では魔法学の知識に欠けるからね」
「もちろん、構わない。はじめからそのつもりだ」
「ん、了解したよ。それじゃあ──」
私は鞄から球状の装置を取り出すと、起動して空中へと放り投げた。黒い硝子面の内側から赤い二次元レーザーが照射され、辺りの資料をくまなくスキャンする。床も、机上も、壁も。すべて。
「私のラボに帰ろう」
スキャンを済ませた球が忠実に私の手のひらに戻ってくる。黒光りする硝子球の内側に閉じ込められた〈脳〉が放つ熱が、手のひらをじんわりと侵食していった。
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