この恋、保障できますか?

美也

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慌ただしい週始めとなったので、すっかり会社に来るまで忘れていた。
今日はスノーさんとの打ち合わせが入ってたのだ。

この前の会食時、新しい広告の発注が決まって我社にお越し頂く事になっていた。
スノー営業部長と私の義息子、参上。

「どうもお久しぶりです~」

会議室の入口で出迎えて白々しく挨拶。お通し途中に、彼はこそっと。

「今朝ぶりです(ボソッ)」
「(ビクッ)!」

義息子よ… 
着替えてから出勤すると早く出たのに、
なぜそのままなんだ!?

そして私の朝トーストも咥えて行ったのに、
なぜ不機嫌なのよ!?

息子の不可解行動に頭を悩ます、
世のお母さん方!お察しします (T^T)

ガックリの着席。
そこへ後輩のお茶出しが。
「ありがとう」
ぐるっと回って、彼の後ろで立ち止まる。

「あれ?(クンクン)
 永井さん、凄く良い香りしますね」

「「!?!?」」

「シャンプーかな?柔軟剤かな?」

「「(ギクッ)!(ヤベ)!」」

あ"~
私のハーブシャンプーを使っていたのか!?
ちっさいのにお高いのよ!
そうじゃないっ

「でも、さっきも同じ香りが…」

クンクンしながら後輩が戻ってくる。

おいぃ、お前は警察犬なのか?
どっちも当たってるよぉ。

「やっぱり!関さんと同じ!…え?」

「「「 え!?(全員)」」」

凍てつく空気。
ど、ど、どうしよう~
ここでバレたら、社会的制裁の集中攻撃!?

私は視線を独り占めしてしまって、反発する言葉を声に出せない。

「…うっ」

「彼女と同じの使ってるんじゃない
 ですか?」

ツンで一答を投じる永井さん。
そして、「あ~」な納得の皆さん。

その表情は… 
ありえない。関さんなんて。

心の声、
漏れてますよ。

内心、シュンのホッ。

「やっぱお前彼女できたの?
 ユーコさんて、スマホ見たぞ」

ドキッ… 
多分それ、私や。

営業部長さんが永井さんにニヤニヤと問いかける。

「どんな彼女さんですか?知りたーい」

後輩よ、
鼻も口も塞いでくれるか?

「…年上の、世話焼きな、優しい人です
 (チラッ)」

ばちっと、目が合う。
ドキドキッ… なぜ見る!?

永井さんは無愛想に呟いて、私に視線をよこした。

「いやーん。ラブい~」

「お前、惚れてんなっ」

部長にポンポン肩叩かれながら…チラッと。
また永井さんの瞳は私の方に動いた。
だから、なぜよく見る!?

ドッ、ドッ、ドッ、ドッ。
落ち着け、私。
彼女ではない。
心臓に悪いぞ、老化が進む。

「さ、さぁそろそろ始めましょうか…
 (ビックゥ)!?」

なんなの!?
じーっと熱い視線を送ってくる。

見ないでって、恥ずかしいのよ。

あなたに見つめられると、
心の内まで見透かされそうで!

・・・どうにかこうにか、
彼のレーザービームを外し打ち合わせ終了。

はあぁぁ...身が持たん。
誰か電気ショックをかけてくれ。

「調子悪そうっスね?(ボソッ)」

「(ドキーッ)!?」

いつの間にか、隣に擦り寄ってきて耳打ち。

あー、
本当に同じ香りだと気付かないもんだ。

「部長さんは!?」 

「挨拶行ってます」

「また呪文唱えてるんスか?」

「何で?」

「ちょっと、そう見えて」

「(お前のせいだよ!)違うよ」

「じゃあ、痔が悪化したとか?」

「違うっ!(グイグイ来るなぁ…)」

「あー、折り入って相談があるんですけど」

「(近いっ)ちょっ、一旦離れて…」

ヒソヒソ話をするうちに、永井さんと私の距離が段々詰まってきて手でガードする。

「永井!」

「「!!」」

戻ってきた営業部長さんが彼を呼んで、
「先帰ってデザイナーに話といて」
と、早く出ろの手で合図する。

「じゃあ改めて(コソッ)」

だから近いって…
永井さんはやっと離れて帰って行った。

「どーもぉ」

部長さんにニコニコで寄って来られて。私はホッとしたのも束の間、速攻営業スマイルマスク装着。

「お疲れ様です~」

「先日は良くして頂いて~(コソッ)
 あの後、女のコいるお店連れてって
 貰っちゃいました」

「あぁ~」

会食後キャバクラか。道理で。
珍しく課長が、ウチの部長連れてきたと思った。

広告媒体の変更で、経費安く契約が右肩上がり。
上層部で評価高いと聞いた。
ウチの部長の面子を立てたのが、スノーさんて訳だ。

「お互いウィンウィンですね」

「えぇもぅ。あの時、
 永井も誘ったんですけど…
 関さんひとりになるからって、
 何かされました?」

「ゴォホッ!? …いえ、何も?」

もしかして永井さん…
私の体調不良、気付いてた?

「あ~良かった。さっきも永井が、
 何かご迷惑かけてるかなぁって」

あ、さっきの牽制を見てたのか。

「ぶっきら棒で営業向きじゃないんです
 けど、社内じゃオールラウンダーで
 経験積ませてます」

「へ?アシスタントではない?」

「運営陣でもおかしくないですね。
 経営コンサルできるし。K大の特待生だったんです」

すごっ。めっちゃ頭いいやん。

「無愛想で今どきって感じだけど、
 なかなかの苦労人で」

風呂なしアパートだもんね…

長い目で見てやってください!
部長さんがヘコヘコするので、ペコペコを返して今日の打合せは終了。

部長さんがお父さん役をしてるのね…
放っておけない、可愛いがりたい、
そんな感覚かな。
なんとなく同感してしまった。

私も似たような感情を永井さんに抱いていたから。
でも私の保障はあと、残り1回…



ピンポーン

「はーい。はい。はい。(ガチャ)あれ?」

「こんばんわ。
 この辺の水廻り点検してるモン
 なんですけど…」

業者さんぽい作業服の兄ちゃん達。
永井さんから連絡があったので、てっきり彼かと思ってドアを開けた。

「え?あー、そうなの?でもねぇ…」

他の部屋で水漏れあったので、特別料金で点検するって。
怪しくない?

「何やってんの?」

「「「 !!! 」」」

永井さん、登場。
相変わらず今日も愛想は無いですね。

「弟さんかな?水漏れの点検で…」

「こんな夜分におかしいっしょ?
 入口に停めてある車、アンタらの?
 社名入ってないし、ガラスは全面スモーク
 張りだし」

「「「 え??? 」」」

被せ気味にたたみ掛けてる。
眼つきがいつもより鋭い。

え?永井さん…
その黒縁メガネと佇まいといいソックリに見えてきたんだけど…

コ○ンくんモード!?
わあ、わー、赤の蝶ネクタイ着けてみる!?

「一応、ナンバーも写真に撮っておいた
 けど?」

彼がスマホをチラつかせると、兄ちゃん達がヒソヒソ…
「もう遅いんで帰りまーす!」
って、スタコラサッサ行っちゃった。

「…いらっしゃいませ?」

「(キッ)!」

「(ビクッ)!」

(・_・;) えー、、、
こんなはずじゃなかったのに。

テーブルにお茶を出しまして、正座。

「馬鹿なの?
 バカなんじゃない?
 馬鹿なんだね」

容赦ないな~。自己解決しての断定。
開口一番に全力のダメ出し。

「何で確認もしないでドア開けるの?
 オートロックもないし、
 インターホンカメラも付いてないのに。
 点検のふりして壊して高額請求とか。
 二人がかりで何かされたらどうするの?」

ぐうの音も出ません。
ただただ小さくなるばかり。

彼はため息をついて、お茶を飲み干した。

「で、それはなんスか?」

テーブル上のあからさまな、大きい贈答品が気になったよう。

「今夜で保障が最後なので、
 御礼も兼ねて高級ハムのセットを…」

まぁ、苦労人だとも聞いてしまったし。
若い子には肉だよね!テッパンと。
でも…

「そちらは?」

彼も手土産らしい紙袋を持参している。
急に分が悪そうに、中身を見せた。

「希少なウイスキーです」

おおっ!本物だ。
コレも相当お高いやつだよ?

「どなたに?」

「関さんに」

「なんで?」

「折り入って相談が、って…」

「あーあー。
 え? …嫌な予感しかしない」

殺気立っていた彼の口調が徐々に弱々しくなって、高価な手土産もあるとなると…
次に来る厄介そうな物は受け取りたくない。

私はしかめっ面でイヤイヤと首を横に振って見せたが、永井さんは仕方無いとばかりに強引に押しきった。

「嫌でも全部説明します!先日の雨で、
 ついにアパートの屋根が半壊状態に
 なりまして、取り壊しが決定されました。
 つきましては、新居の初期費用を抑えたい
 ので、このままここでシェアさせて
 貰えないでしょうかっ」

「(ポカン)」

えー… 
100文字以内の模範回答きたね。

うん。わかったわかった。
それでこの前、じーっと見てきたのかぁ。

「……嫌だよ!?」

「そこをなんとか!
 …それでご提案なんですがっ」

え、何が始まるの?
私のお断りをさらっと受け流す。

「先程、関さんは危機管理がなってないと
 証明されたので… 俺の、
 安心見守りサービス&警備保障のついた、
 シェア契約というのはいかがでしょうか?
 もちろん家賃も払います。ロフト代」

「へぇ、凄いお得…ってこら!
 何そのALS○Kみたいな高齢者サービス!」(←隠せてない)

「お得です」

いつもの眼力で彼は私を真っすぐに捕らえて放さない。

自信たっぷりに見つめるなってぇ。
これは…
何十年経っても、ふりだしに戻るとゆう…
ループ!?

「…初代様では?」

「ないです!」

サイテー野郎もチラつくが、お父さんな営業部長さんも脳裏に浮かんで。

えー、ん~、どうしよう??
駄目押しは… ウイスキー。

「…契約、します」

ボトルの贈呈式によって、
この保障付きZ世代年下男との同居は、
始まってしまったのだ。





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