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episode.6
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12月25日のクリスマス。電車を降りるとホームの階段を駆け上がる……真白が待ってるから1秒でも早く会いたくて。
去年はクリスマスに約束をしていたのにバイトで会えなかった。その後、あの事件が起きて……もう思い出したくもない。
今日は絶対に真白と会って恋人らしいデートをするんだ、ガチで!
真白は駅まで送ってもらい電車でここまで来ると言った。俺は東京から真白の乗ってくる私鉄の終着駅へ。
もう電車移動もできるなんて、真白の回復力本気でパない!
改札を出ると辺りを急いで見回して……真白、真白……見っけ!
背筋の伸びた立ち姿ですぐに発見した。恋しい彼女のもとへ急いで……ゴールでガッツポーズ、みたいに両腕を広げ真白にハグをする。
「葵く……わっ」
「はぁっ、はぁ、待たせてごめんっ。チュッ、大丈夫だった?」
「……あんまり、だいじょぶじゃないよ、人前でっ」
「え? ごめん、早くどっか座れるトコ行こう!」
髪を押さえてキョドる真白の手を繋いで移動する。真白が動き疲れないよう常に気をかけて、映画を観たらカフェで休憩。
ブランケットを借りてテラス席で椅子を並べ、クリスマスプレゼントを交換した。
俺はちょっとオトナぶってネックレスを真白の首にかけてあげたが……身につけた真白のほうが……急に大人っぽく見えてドキッとした。
惚れ惚れして見つめていると、今度は真白が俺の首にマフラーを巻いてくれる。紺色の網目模様がふんわり温かい……手編みか、これ!?
「真白が編んだの!?」
「うん。初めてだから何回か失敗してほどいた」
「わ~、毎日しよ。寝るときも巻いて眠る」
「あはっ、葵くん、寒がりだから」
また……真白を、好きになった。
もっと好きになって、たぶん、明日には溢れてるんだよ……きっと。
もう離したくないくらい、好きでいっぱいで。
真白の右手にそっと指を絡め……ほどけないように全部の指を繋ぎ合わせた。
そして、大好きの気持ちをキスで―――真白の手に伝える。
この手でいつも……幾つもの幸せを生み出し……心の奥まで温めてくれる。
その特別な手を、俺はまた―――確かめてしまうんだ。
一編み一編みどれだけの時間を編み続けたのか、酷使したであろう彼女の手を心配して……。
それでもう、わかっているんだ。
なんとも無い真白の手は……絵を描くこと、だけを避けていると―――。
「真白……よかったら俺に……絵を描かない、理由を教えてほしい」
ビクッ、とその手は震えて静止した。
真白の瞳も脅えているような、揺れる眼差しで俺を見つめる。
それでも俺は……ふたりで羽ばたくこれからの未来を―――あきらめられない。
奇跡の虹を分け合ったように、俺の寂しさを真白の涙で癒してくれたように。
真白に悩みがあるなら、俺も一緒に考えさせてくれない?
どこか痛いところがあるなら、俺にも分けて欲しいんだ!
真剣に、精一杯。どんな事も受け止めるから。
真白から視線をそらさず見つめ続けた。
心と心が……繋がり合えたのか……真白の揺れる瞳がぴたりと落ち着く。すると、真白は和らげな顔を作り俺に語りかけた。
「ごめん、て言わないでね……」
「……うん。言わない」
真白は俺の返事にニコリとして―――「私ね、オーラが見えてたの」。
そう言った。……オーラ?
俺は予測していなかった言葉に少し戸惑う。
「……んーと、幸せオーラってよく言うそれ? 気分とか気のエネルギーって感じ?」
「たぶんそれ……私は、色でオーラが見えてた」
人や花に虫など生物全般のオーラを真白は色で捉えていたと語る。明るい色から暗い色まであり、気持ちや体調と色調は同調していたらしい。
「葵くん、共感覚ってわかる?」
「あ、なるほど! 通常の知覚に別の感覚が同時に働くって事だ」
昔聞いた話に、数字は隊を組んでるとか人型があるとか言ってたヤツが居た。すげぇ秀才だったから、真白の共感覚も才能の一部なんだろう。
真白の絵が燦いて色彩鮮やかなのは、本当にそう見えてたからで……真白の眼力には目算の能力と、オーラが見える共感覚もあったわけだ。
「ちょっと待って……俺のオーラってどんな?」
「……あはっ、いつも疲れてて青ざめてる感じ。あ、そういえば、えっと」
「何、何っ?」
「白いオーラを出してた時があって、公園で倒れてた夜にね……」
「あー、真白が助けに来てくれた時だ。え、おかしかった?」
「うっ、嬉しかった、よ。白いオーラを出す人を見たのは3人目で、たぶん私の色? だから、両親以外に見たのは初めて、でした……」
「……ちょっと待っ、俺ぇ、バレバレじゃん? 恥ずっ」
えー、今更知るとへこむ。あの時の俺、強がってたのに本人に好きな気持ちダダ漏れしてるとか。
空いた手を額について失態を悔やんでいると、真白が繋いでいた俺の手を両手で包んだ。
「葵くんが、私の手をずっと気にしてくれてた事わかってたのに……。私はありのままを描いてきただけだから……あの事件があって……」
「っ!?」
真白が濁した、絵を描かない理由。
不甲斐ない俺はその真意をようやく理解した。
俺の、せいだ……
「……それで、オーラが、見えなくなった?」
俺の最後の確認に真白は……コクリ、とうなずいた。真白は事件のせいで共感覚を失ったんだ―――。
「……今だから言える私の見解だけど、生まれつき共感覚はあって、父の怪我で黒いオーラを見てから他の色を強く感じるようになったと思う。……美術室に怒った男が突然入ってきた時、黒いオーラを放ってたから怖くて……握った刃で結局自分を傷つけた……いっぺんに強い刺激と感覚と働いて、私の共感覚は燃え尽きたんだ、ってそう思ってる。だから……今は、新しい絵の描き方を探してるところなの」
「……っ、ぐっ」
ごめん、を言えなくて―――。
俺のほうが真白に気遣われて……もう心配要らない、とその微笑みで伝えてくれて……。
そっと抱きしめることしか、俺にはできなかった。
真白の秘密を知り、どうして心の奥に扉を作ったのかを知った。
お父さんの消えない傷と俺の消えない過ち、そして、それに苦しんだ自分を―――真白は隠していたんだ。
言いたかったのに、俺のために言えずにいた真白へ……謝る以外に何がしてあげれるのだろう……。
ごめんの言葉を飲み込んで、我慢しながら考えた。
「……真白、これからはイイ事だけじゃなくて、悪いと思ってる事も教えて? 俺もちゃんと伝えるから、ね?」
「……うん、わかった。約束する」
真白がもう迷わなくてもいいように……。
これからは真っ直ぐ、おっきな青空に向かってさ。ふたりで、羽ばたいて行こう―――。
クリスマスデートのタイムリミットが来て、真白を鉄道の改札まで送り届ける。だけど……真白と繋いだ手を、俺はどうしても離せなかった。
「やっぱり真白の駅まで、俺も一緒に乗ってくわ!」
「えっ? 葵くん、明日の朝スイスに出発でしょ!? 荷造りしてないって大丈夫!?」
そんなのどうでもよかった。1秒でも長く真白と居たくて……絶対に手を離さないで電車に乗った。座席にふたり並んで寄り添い、沈みかけた夕陽と懐かしい風景を眺めながら次の約束を交わす。
「先の話だけど、真白の誕生日、大学は春休みで長く一緒に過ごせるから……東京、来る?」
「行ってみたい!」
「なら……日帰りはできないよ? まだ真白の体に無理させたくないし、心配だし、帰したくな……くなると思うし……」
「…………行くっ」
真白が繋いだ手をぎゅっとして強い視線を送ってくる。一緒にいたい、同じ気持ちなんだと嬉しくて……真白の手にキスをして俺は応えた。
少しずつ計画を立てようと話をして真白と別れ、俺は東京に戻ると翌日スイスへ父さんと出発した。
ただでさえ遠距離恋愛で会いたくても会えないのに、海外まで飛んだらもう真白が恋しくて。
機内でスマホの中の恋人を見つめていたら……隣の座席の父さんにもバレた。
「……葵の彼女?」
「うん。高校の同級生」
「あぁ、そのマフラーも彼女からのプレゼント?」
「そーだよ。……先に言っとくけど、全然暑くないから」
「ははっ、後手に回ってしまった」
少し真白と家族の話をして、父さんも機会があれば挨拶をしたいとの意向だった。スイスのおじさん家で新年を迎えた日、真白とのビデオ通話で父さんに紹介すると家族皆の挨拶大会に発展。
なんだか大家族になったみたいで、すげぇ良かったなぁ……。
そんな余韻に浸りスイスの思い出にして、日本に戻るんだろうと予測していた前日、父さんとおじさんが俺に大事な話があると呼んだ。
この休暇中に今度おじさんが入院して手術を受ける話は聞いたけれど……?
「兄さんの術後は父さんが仕事のサポートをする予定だったんだが、新規プロジェクトを急遽請負ってできそうにないんだ。それで、葵、やってみない?」
「えっ、俺?」
「そう。やはりサポートなしに僕の会社がもたない。葵が手伝ってくれたらとても助かる」
おじさんは主に海外進出の企業コンサルティングをしている。サポートだとしても大学生に務まるだろうか。
それに編入の目標もあって、真白のことも……。
すぐに考えはまとまらず、日本に帰ってから返事をしたいと答えた。
今回父さんが俺にスイスへ同行を求めたのは、しばらくおじさん達に会っていないからという理由とは別の意図があったんだ。
父親として俺が成長するきっかけを与えたいのだろう。
突然訪れた岐路に戸惑いながら俺は日本へ―――。
まず大学の後期試験と単位の目処はついた。もしスイスに行くなら2年から休学、半年か一年で日本に戻れそうだ。編入と職務だったら働いた方が経験になる。実働しながら勉学という方法も……あぁ。
早く自分は社会経験を積んで自立したい、気持ちが強い事に気づいた。
でも、真白は……どうなる?
俺がスイスに行ったら今よりも会えなくなって……。真白を支えたい気持ちが宙に浮いてしまった。
そんな時、昔の記憶が蘇る。真白と一緒に山に登った日の事。俺の18の誕生日、緑の中をふたりで歩きながらした会話だ。
『海外は行ったことある?』
『ない』
『俺ん家は夏休み毎年スイス行ってた。真白も気に入ると思うよ~、自然のコントラスト半端ないから。いつか連れてってやりたいなぁ』
いつか……、それ、来たんじゃないか?
俺達は山でその話をした後に、奇跡の虹を見て希望を手にした。あの時と同じように……希望に満ちた世界が目の前に出現したみたい。
真白と歩む未来が、キラキラ燦いて見えたんだ!
去年はクリスマスに約束をしていたのにバイトで会えなかった。その後、あの事件が起きて……もう思い出したくもない。
今日は絶対に真白と会って恋人らしいデートをするんだ、ガチで!
真白は駅まで送ってもらい電車でここまで来ると言った。俺は東京から真白の乗ってくる私鉄の終着駅へ。
もう電車移動もできるなんて、真白の回復力本気でパない!
改札を出ると辺りを急いで見回して……真白、真白……見っけ!
背筋の伸びた立ち姿ですぐに発見した。恋しい彼女のもとへ急いで……ゴールでガッツポーズ、みたいに両腕を広げ真白にハグをする。
「葵く……わっ」
「はぁっ、はぁ、待たせてごめんっ。チュッ、大丈夫だった?」
「……あんまり、だいじょぶじゃないよ、人前でっ」
「え? ごめん、早くどっか座れるトコ行こう!」
髪を押さえてキョドる真白の手を繋いで移動する。真白が動き疲れないよう常に気をかけて、映画を観たらカフェで休憩。
ブランケットを借りてテラス席で椅子を並べ、クリスマスプレゼントを交換した。
俺はちょっとオトナぶってネックレスを真白の首にかけてあげたが……身につけた真白のほうが……急に大人っぽく見えてドキッとした。
惚れ惚れして見つめていると、今度は真白が俺の首にマフラーを巻いてくれる。紺色の網目模様がふんわり温かい……手編みか、これ!?
「真白が編んだの!?」
「うん。初めてだから何回か失敗してほどいた」
「わ~、毎日しよ。寝るときも巻いて眠る」
「あはっ、葵くん、寒がりだから」
また……真白を、好きになった。
もっと好きになって、たぶん、明日には溢れてるんだよ……きっと。
もう離したくないくらい、好きでいっぱいで。
真白の右手にそっと指を絡め……ほどけないように全部の指を繋ぎ合わせた。
そして、大好きの気持ちをキスで―――真白の手に伝える。
この手でいつも……幾つもの幸せを生み出し……心の奥まで温めてくれる。
その特別な手を、俺はまた―――確かめてしまうんだ。
一編み一編みどれだけの時間を編み続けたのか、酷使したであろう彼女の手を心配して……。
それでもう、わかっているんだ。
なんとも無い真白の手は……絵を描くこと、だけを避けていると―――。
「真白……よかったら俺に……絵を描かない、理由を教えてほしい」
ビクッ、とその手は震えて静止した。
真白の瞳も脅えているような、揺れる眼差しで俺を見つめる。
それでも俺は……ふたりで羽ばたくこれからの未来を―――あきらめられない。
奇跡の虹を分け合ったように、俺の寂しさを真白の涙で癒してくれたように。
真白に悩みがあるなら、俺も一緒に考えさせてくれない?
どこか痛いところがあるなら、俺にも分けて欲しいんだ!
真剣に、精一杯。どんな事も受け止めるから。
真白から視線をそらさず見つめ続けた。
心と心が……繋がり合えたのか……真白の揺れる瞳がぴたりと落ち着く。すると、真白は和らげな顔を作り俺に語りかけた。
「ごめん、て言わないでね……」
「……うん。言わない」
真白は俺の返事にニコリとして―――「私ね、オーラが見えてたの」。
そう言った。……オーラ?
俺は予測していなかった言葉に少し戸惑う。
「……んーと、幸せオーラってよく言うそれ? 気分とか気のエネルギーって感じ?」
「たぶんそれ……私は、色でオーラが見えてた」
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「葵くん、共感覚ってわかる?」
「あ、なるほど! 通常の知覚に別の感覚が同時に働くって事だ」
昔聞いた話に、数字は隊を組んでるとか人型があるとか言ってたヤツが居た。すげぇ秀才だったから、真白の共感覚も才能の一部なんだろう。
真白の絵が燦いて色彩鮮やかなのは、本当にそう見えてたからで……真白の眼力には目算の能力と、オーラが見える共感覚もあったわけだ。
「ちょっと待って……俺のオーラってどんな?」
「……あはっ、いつも疲れてて青ざめてる感じ。あ、そういえば、えっと」
「何、何っ?」
「白いオーラを出してた時があって、公園で倒れてた夜にね……」
「あー、真白が助けに来てくれた時だ。え、おかしかった?」
「うっ、嬉しかった、よ。白いオーラを出す人を見たのは3人目で、たぶん私の色? だから、両親以外に見たのは初めて、でした……」
「……ちょっと待っ、俺ぇ、バレバレじゃん? 恥ずっ」
えー、今更知るとへこむ。あの時の俺、強がってたのに本人に好きな気持ちダダ漏れしてるとか。
空いた手を額について失態を悔やんでいると、真白が繋いでいた俺の手を両手で包んだ。
「葵くんが、私の手をずっと気にしてくれてた事わかってたのに……。私はありのままを描いてきただけだから……あの事件があって……」
「っ!?」
真白が濁した、絵を描かない理由。
不甲斐ない俺はその真意をようやく理解した。
俺の、せいだ……
「……それで、オーラが、見えなくなった?」
俺の最後の確認に真白は……コクリ、とうなずいた。真白は事件のせいで共感覚を失ったんだ―――。
「……今だから言える私の見解だけど、生まれつき共感覚はあって、父の怪我で黒いオーラを見てから他の色を強く感じるようになったと思う。……美術室に怒った男が突然入ってきた時、黒いオーラを放ってたから怖くて……握った刃で結局自分を傷つけた……いっぺんに強い刺激と感覚と働いて、私の共感覚は燃え尽きたんだ、ってそう思ってる。だから……今は、新しい絵の描き方を探してるところなの」
「……っ、ぐっ」
ごめん、を言えなくて―――。
俺のほうが真白に気遣われて……もう心配要らない、とその微笑みで伝えてくれて……。
そっと抱きしめることしか、俺にはできなかった。
真白の秘密を知り、どうして心の奥に扉を作ったのかを知った。
お父さんの消えない傷と俺の消えない過ち、そして、それに苦しんだ自分を―――真白は隠していたんだ。
言いたかったのに、俺のために言えずにいた真白へ……謝る以外に何がしてあげれるのだろう……。
ごめんの言葉を飲み込んで、我慢しながら考えた。
「……真白、これからはイイ事だけじゃなくて、悪いと思ってる事も教えて? 俺もちゃんと伝えるから、ね?」
「……うん、わかった。約束する」
真白がもう迷わなくてもいいように……。
これからは真っ直ぐ、おっきな青空に向かってさ。ふたりで、羽ばたいて行こう―――。
クリスマスデートのタイムリミットが来て、真白を鉄道の改札まで送り届ける。だけど……真白と繋いだ手を、俺はどうしても離せなかった。
「やっぱり真白の駅まで、俺も一緒に乗ってくわ!」
「えっ? 葵くん、明日の朝スイスに出発でしょ!? 荷造りしてないって大丈夫!?」
そんなのどうでもよかった。1秒でも長く真白と居たくて……絶対に手を離さないで電車に乗った。座席にふたり並んで寄り添い、沈みかけた夕陽と懐かしい風景を眺めながら次の約束を交わす。
「先の話だけど、真白の誕生日、大学は春休みで長く一緒に過ごせるから……東京、来る?」
「行ってみたい!」
「なら……日帰りはできないよ? まだ真白の体に無理させたくないし、心配だし、帰したくな……くなると思うし……」
「…………行くっ」
真白が繋いだ手をぎゅっとして強い視線を送ってくる。一緒にいたい、同じ気持ちなんだと嬉しくて……真白の手にキスをして俺は応えた。
少しずつ計画を立てようと話をして真白と別れ、俺は東京に戻ると翌日スイスへ父さんと出発した。
ただでさえ遠距離恋愛で会いたくても会えないのに、海外まで飛んだらもう真白が恋しくて。
機内でスマホの中の恋人を見つめていたら……隣の座席の父さんにもバレた。
「……葵の彼女?」
「うん。高校の同級生」
「あぁ、そのマフラーも彼女からのプレゼント?」
「そーだよ。……先に言っとくけど、全然暑くないから」
「ははっ、後手に回ってしまった」
少し真白と家族の話をして、父さんも機会があれば挨拶をしたいとの意向だった。スイスのおじさん家で新年を迎えた日、真白とのビデオ通話で父さんに紹介すると家族皆の挨拶大会に発展。
なんだか大家族になったみたいで、すげぇ良かったなぁ……。
そんな余韻に浸りスイスの思い出にして、日本に戻るんだろうと予測していた前日、父さんとおじさんが俺に大事な話があると呼んだ。
この休暇中に今度おじさんが入院して手術を受ける話は聞いたけれど……?
「兄さんの術後は父さんが仕事のサポートをする予定だったんだが、新規プロジェクトを急遽請負ってできそうにないんだ。それで、葵、やってみない?」
「えっ、俺?」
「そう。やはりサポートなしに僕の会社がもたない。葵が手伝ってくれたらとても助かる」
おじさんは主に海外進出の企業コンサルティングをしている。サポートだとしても大学生に務まるだろうか。
それに編入の目標もあって、真白のことも……。
すぐに考えはまとまらず、日本に帰ってから返事をしたいと答えた。
今回父さんが俺にスイスへ同行を求めたのは、しばらくおじさん達に会っていないからという理由とは別の意図があったんだ。
父親として俺が成長するきっかけを与えたいのだろう。
突然訪れた岐路に戸惑いながら俺は日本へ―――。
まず大学の後期試験と単位の目処はついた。もしスイスに行くなら2年から休学、半年か一年で日本に戻れそうだ。編入と職務だったら働いた方が経験になる。実働しながら勉学という方法も……あぁ。
早く自分は社会経験を積んで自立したい、気持ちが強い事に気づいた。
でも、真白は……どうなる?
俺がスイスに行ったら今よりも会えなくなって……。真白を支えたい気持ちが宙に浮いてしまった。
そんな時、昔の記憶が蘇る。真白と一緒に山に登った日の事。俺の18の誕生日、緑の中をふたりで歩きながらした会話だ。
『海外は行ったことある?』
『ない』
『俺ん家は夏休み毎年スイス行ってた。真白も気に入ると思うよ~、自然のコントラスト半端ないから。いつか連れてってやりたいなぁ』
いつか……、それ、来たんじゃないか?
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