8 / 8
Special episode.
しおりを挟む『 白羽根をひろげ青空へ 』
桜の花びらが青空を舞う、春色に染まった東京。俺達は現在、成田空港にいる―――。
「……葵くん、私のパスポート、何かおかしい?」
「え? あぁ、つい見入っちゃって。MASHIRO……KANZAKI。おんなじ名字でさぁ、眺めてるだけで夫婦間めちゃくちゃ実感してる」
真白と結婚できた事が改めて感慨深く、その証明であるパスポートの名前を見ながら歩いていたら、心配そうな声が隣から届いて視線を向けた。
上目で見つめる愛しい顔。それで視界がいっぱいになるとさらに頬が緩んで、止めどなく愛しさがこみ上げる。俺はニヤけたまま当人に向かって惚気てしまった。
すると真白は瞳を大きくして俺を見つめた後に、おかしいのが俺の方だと気づいたのか、くすっと笑って嬉しそうに目を細めた。
可愛らしさにますますデレが止まらなくて、パスポートを返して真白の指に自分のを絡めてぎゅっと手を繋いだ。
浮かれてる……幸せ、すぎて。
今日、真白を連れてスイスに旅立つ―――『ふたりで羽ばたきたい』俺の願いが実った。
成田からスイス・チューリッヒ空港へ。出国審査を終えて搭乗時刻までまだ1時間以上ある。これまで忙しく準備してきたから、のんびり真白とこうして手を繋いで歩くだけで……あぁ、幸せだ。
「……私もね、神崎さんって呼ばれると夫婦間すごく感じるよ。でもまだ慣れてなくて、この前も役所で何回も呼ばれちゃった、あはっ」
「ふっ。早く慣れてね~、奥さん?」
真白の顔を覗き込みながら少し茶化してみたつもりが、「……はい。頑張ります」なんて恥じらって小声で返してくるから、っ!
「ゴホッ、ゴホッ、んんっ」
「葵くん大丈夫?」
急にむせるくらい照れて、逆に俺を覗き込んできた真白に顔を隠しながらうなずいて見せた。
真白の新妻っぽい態度、やば。
俺のこと大事にしてくれてるって、感じ。
俺も精一杯頑張って、真白に頼られる存在にならないとな。
真白のこと一生俺が絶対に守っていくんだ……
「葵くん風邪引いた? 忙しくてあまり眠れてないでしょう?」
「ううん。忙しかったのは真白もでしょ? 飛行機で仮眠しよう。爆睡しちゃったら起こして?」
「ふふっ。私、葵くんの目覚まし時計係なのは、高校の時からずっと続くんだね」
「そうだよ? 俺、真白がそばにいると爆睡しちゃうんだよね。これからはずっと一緒に寝れるから安眠の予感しかないな」
スイスではおじさんの家に同居させてもらう。未熟な俺には過酷であろう本格的な仕事は真白との睡眠で乗り切る考えで、真白と過ごす時間も大切にして仕事と両立させたい。
「あ、その予測はしてなかった……スイスでは一緒のベッドで、寝るんだ?」
「当然、夫婦なんだから。え、嫌?」
俺の期待とは反対に真白が動揺し始めるので焦ったが、すぐ首を左右に振って真白は否定した。
「い、嫌じゃないよっ。私の部屋も用意してくれたって聞いたから別々なんだって思ってて……」
「あー、それはプライバシーを考慮して女性だし。小さめの部屋でベッドはないんだ」
「それで全然、嬉しいよっ」
「俺達の部屋は別にあって……一緒のベッドでいいの?」
俺が確認してみると真白は高速でうなずいた。それを見て俺はふと違和感を覚える。
何か真白に不測の事態が起きて困ってるような……同じベッドで寝るのはいいけど?
「……真白、俺、ヤラシイ事はしないよ? んー、絶対じゃないけど?」
「どっち!?」
予測より強めの圧で真白が聞くから思わず吹き出した。
「ぶはっ。安心していいよ、真白が嫌がる事はしない。欲が無いわけじゃないけど、今は、一緒に居られるだけで俺は満足だし、手を繋いでるだけで幸せだから。……チュッ」
新妻の頭の中を察知して俺は本心を伝え、繋いだ真白の手に誓いのキスをした。
何度か泊りがけの時は側で眠ったけど、東京では俺のベッドを貸したし、母さんのとこでは別々の布団だったし。真白の家ではお義母さんが客布団敷いてくれたから。
まだ、俺達は夫婦になったけど……シていない。
カップルなのに未経験で結婚とか珍しいかもだけど。でも、これが正当で、俺達の正解なんだと思っている。
正直、俺の痩せ我慢的なところもあるにはある!
同じベッドで寝るなら、普通……そうなるよね?
と真白も推測したのだろう。ほんのり耳を赤くしてうつむき、また小声になって俺に尋ねる。
「……いいの? 葵くんはそれで?」
あー、もう、心の準備期間あげたのに。
それ……早く真白の全部、俺のモンにしてもいい、って事?
ドキッ。
少し俺の心が揺れ動く。でも―――
「……さっきの言葉に補足すると、俺は真白が何より大事だから。それで、俺達がその一線を越える時も大事にしたいんだ。我慢するのが辛いからって、幸せになる為にサッと一線書くように済ますのとは違う、大事な一線だと思う。あの虹みたいにね、一生に一度の事だからさ。真白も同じでしょ?」
「あ……」
「それに怪我も治ったばっかで無理させてるし、今はスイスの生活に早く慣れる事を優先しよ?」
「そ、そっか。そうだよね!」
俺が自制心を保つ為の主軸の考えを伝えると、真白はほっとしたのか目元を柔らげ笑顔で納得する。
あ、俺の好きな表情。
またそんな可愛い顔をして俺の欲を掻き立ててくるんだから、ホント困るよ……。
「でもね真白、絶対じゃないって言ったのは……」
「ん?」
「真白が魅力的すぎたら、俺の我慢は効かないよ」
「え……?」
「あんまり俺を挑発しないように、これ以上可愛い事しないで」
「なっ、どうゆう事!?」
「とりあえずキスはいっぱいする、必然だから。俺、キス魔だし?」
「いっぱいって、ん!?」
すぐ有言実行。
真白を補給して満面笑顔の俺と、仰天顔の最愛の妻。
「ぷはっ。早く慣れてね~、奥さん?」
「……周りに人がいるのに恥ずかしいか、ん!?」
「チュッ。日本だけだよ~愛情表現隠したがるの、大好きの証なのに」
「わかってる、けどっ。が、頑張ります……」
これから、キスを頑張るって?
うつむき加減に頬を押さえる真白を見て、俺の頬はとろけそうになる。
ふと、真白に集中してた視野を広げてみると、ターミナルのガラス壁に停止中の飛行機と快晴の空が映っていた。
壁一面ガラスのキャンバスに青い空……
「真白! ちょっと止まって両手広げてみて?」
「え……、こう?」
―――!
白羽根をひろげ青空へ。
真白が着ている白シャツが羽根みたいに見えるんじゃないかと閃いたんだ。やっぱり思った通り……
幸せな世界へ、羽ばたく瞬間。
俺と真白の、ふたりで叶える未来。
「……葵くん? わぁっ、何、ん―――!?」
「―――チュッ。真白、大好き……」
俺は思わず真白を抱え上げて、強めの愛情表現を。衝動を抑えきれずに熱めの視線で見つめていると、萎れるように肩にもたれてきて真白は俺に抱きついた。
それで、まだ恥ずかしがり屋な奥さんは、頑張って俺の耳元で囁いてくれたんだ。「……私も大好きだよ」
きっと、ずっと―――。
この気持ちは永遠に続いてく。
END.
読者様に感謝をこめて。作者より
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

