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第57話 さてと、再び地下2階です。

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 テシテシ、テシテシ、ポンポン、毎朝恒例の朝起こしだ。柔らかい感触に満足しながら目を開けてから挨拶を交わした後に、ジェミニが話してきた。


「アイスさん、一つお願いがあるのですが、いいですか?」


「お願い? 珍しいね、一体何かな?」


「お願いというのはですね、今日は3階へ降りずにまた2階へと行って欲しいです。」


「また2階へ? 何かあるのかな?」


「はい、昨日は蜂さん達を助けて蜂蜜をもらったあとこちらに戻ってしまいましたよね?」


「そうだね。階段の場所もわからなかったし、時間的に、ね。」


「それは承知してるですが、あの蜂さん、まだアイスさんに伝えたいことがあったようです。」


「そうなの? なるほど、ジェミニがそう言うんなら間違いないね、今日は階段の場所もわかっていることだし転送魔法も使えるから大丈夫か。わかった、ジェミニのそのお願いを聞きましょうかね。」


「ありがとうです!!」


 そう言ってジェミニは嬉しそうに跳びはねていた。うん、やはり可愛いな。この仕草を見るだけでもお願いを聞く価値があるってものだ。


 ジェミニの話を聞いた後、朝食の準備をする。今日は女性陣の襲撃はなかった。合流した後で聞いた話だけど、昨日のことでカムイちゃんはカムドさんにメチャクチャ怒られたらしい。朝食後にアマデウス教会で会ったときはかなりションボリした状態だった。


 合流後、今日の予定について話す。もちろんジェミニのお願いを聞いて今日も地下2階へと行くためだ。特に反対意見は出なかったので、今日は再び地下2階へと足を運ぶことにした。また、それならばと昨日に引き続き地下1階から進むことになった。理由は言うまでもなく豆柴達だ。ダンジョンの目玉にしてもいいのだけど、できればフロストの町に連れて行きたいと思っている。何か手がありそうな気がするが、無理に出して死んでしまっては無意味、というより損失は計り知れない。


 とりあえずそれは置いといて、ダンジョンへと入る。地下1階はいつも通りだ。2つめの部屋に入ると、豆柴達が出迎えてくれた。いつ見ても癒やされる。ただ、少し違和感を感じた。豆柴達は部屋に近づかないとこちらに寄ってこないのだ。2日に渡ってモフッたり、好物であろう骨を与えているにも関わらずだ。そういえば、食事は必要ないにしても、豆柴達はこの2つめの部屋から出ようとしない。この辺に何か解決策があるかも知れない。この件はラヒラス達に相談してみますか。


 豆柴達をひとしきり愛で、骨を与えたりして少しの時間楽しんだ後、この場所を後にする。残りの道中はいつも通りの結果だ。ダンジョントラッパー達を倒して骨を回収して地下2階へと降りる。


 地下2階へと降りて、ハニービーの巣へと進んでいく。途中で巨大な虫達が襲ってきては蹴散らしを繰り返してどうにか巣へと近づいていくと、昨日と同じような光景がそこにはあったので、昨日と同じようにキラーホーネットの集団を殲滅する。今回もまた、ハニービーの女王蜂と思われるモコモコの蜂がこちらにやってきた。何かを伝えようとしているのはわかるが、生憎私達にはわからないが、ジェミニには通じているようだ。厳密にはマーブルもわかっているそうだ。でも、マーブルの場合はある程度のことはわかるが、細かい内容については流石に私でもわからない。というわけでジェミニから話を聞く。


「アイスさん、この蜂さんが言うには、最近キラーホーネットの巣から異常な数の蜂たちが生まれてきており、連日こちらだけでなく、いろんな所を攻めているそうです。その巣を潰すのを手伝って欲しいそうです。」


「なるほど。本来なら生態系の問題もあるけど、ここはダンジョンだからね。わかった。引き受けましょうかね。みんなもそれでいいかな?」


「もちろんですわ! 全ては蜂蜜のために!!」


 アンジェリカさんを始めとして女性陣はやる気である。マーブル達も賛成しているから大丈夫だね。


「アイスさん、この蜂さんがキラーホーネットの巣へと案内してくれるそうです。」


「わかった。それじゃあ、ついていくとしましょうか。」


 女王蜂についていくこと1時間ちょい。途中でも虫達の襲撃は度々あったが、問題なく撃退ないし殲滅していった。少し驚いたのは、この女王蜂も結構強い事だった。私の知っている女王蜂は巣から全く出ることなく卵を産み続ける一生を送るだけという認識だったが、どうやらこの世界は違うそうだ。卵も産むけど、ある程度強さを見せつけないと女王蜂として存在できないそうだ。また、種類によっては複数の女王蜂が存在するそうで、その場合は役割が分けられているらしい。ちなみにハニービーは女王蜂は1体のみだそうだ。


 そんな話をジェミニを通じて聞きながら更に進んでいくと、キラーホーネットが襲いかかってきた。恐らく巣に近づいてきているのだろう。今回はフレンドリーファイアの心配がないので、投擲術で倒していた。まだ巣には到着していないが、襲ってくるキラーホーネットの数が次第に増えてきていたので、間違いなく巣には近づいてきている。ちなみに襲ってくる数が多すぎるので、マーブルやルカさんなんかは範囲攻撃の魔法で対応している。


 ある程度殲滅すると、襲ってくるキラーホーネットがいなくなったので、そのまま先を進んでいくと巣が見つかった。


「なんだこれ?」


 思わず出てきた言葉がこれである。普通は巣は大きな塊が1つ存在するだけで、仮に多くても2つか3つあるくらいのはず。しかし、ここで見たのはぶっちゃけ、ブドウ一房のオブジェだ。そりゃ、こんだけの数が集まっている巣であれば、毎日襲撃もしてくるだろうよ。ハニービーの女王蜂もこれには驚いているようだ。


 キラーホーネットの斥候だろうか、こちらに近づいてきて「カチカチ」という音を立てて警告している。以前の世界の私では、その忠告に従って引き返したのだろうが、今は違う。ハニービーの女王蜂の頼みでここに来ているのだ。引き返す理由がない、というわけで、アルスリを使うまでもなく普通にその斥候めがけて氷をぶつける。刺さったら爆発するタイプのやつにしてある。その斥候は一瞬にして爆発した。それに釣られたのか、巣から多数のキラーホーネットが出てきてこちらに襲ってきた。


 先程からさんざん蹴散らしてきたとはいえ、面倒なことに変わりは無い、ということで、巣の四方を中心にして水術で温度を徐々に下げてやる。襲ってきたキラーホーネット達は、体が動かなくなり次々に墜落していく。って、これどう見ても巣の体積とキラーホーネット達の数が合わないんですが、、、。あ、どうでもいいですか? そうですか、、、。


 巣から出てこなくなったので、そこらに固まっているキラーホーネット達を潰したりしているが、いかんせん数がもの凄いので、マーブルにお願いして風魔法で一気に潰してもらう。ドロップ品の刃などはすでに馬鹿みたいに手に入っているのでこれ以上必要ない。


 念のため気配探知の範囲を絞って確認すると、巣の中にはまだ気配が感じられた。巨大な存在が1体、先程のキラーホーネットよりも2周りほど大きい存在が6体ほど。巨大な存在はキラーホーネットの女王蜂と思える存在だ。ということは、大きめのこの6体はさしずめガードといったところかな。


「皆さん、まだ巣の中には何体か存在しておりますので、これを殲滅しようと思います。ただ、水術を解かないと出てこないようです。というわけで、水術を解く前に作戦を説明しようと思います。」


「わかりましたわ。アイスさん、指示を!」


 アンジェリカさんがそう言うと、みんなが横一列にならんだ。カムイちゃんは、わかってきたのか、同じように並んだ。ハニービーの女王蜂は何か戸惑っていたけど、それは仕方がない。そのハニービーの女王蜂は何を思ったのか私の頭の上に止まる。私も少しビックリしたが、女王蜂のモコモコは案外心地よかった。これもいいモフモフだな。さてと、モフモフに浸るのはここまでにして、改めて指示を伝えますかね。


「作戦ですが、奥に女王蜂がおりますので、私はそれを倒しに行きます。女王蜂の他に護衛が6体ほどいますので、皆さんはその護衛をそれぞれ倒してもらいます。恐らく1人ずつで十分だと思いますが、カムイ隊員の護衛として、ライム隊員とオニキス隊員が務めて下さい。」


 全員が敬礼でもって応える。


「では、作戦開始です!」


 そう言って、私は水術を解く。水術を解くと思ったより早く護衛の6体は巣から出てきた。幸いにも出現場所は高い場所ではなかったので、私でも入っていけそうかな、と思っていたら、巣の一部が破壊されて巨大な存在が出現した。なんじゃこりゃーーー!! 5メートルくらいの大きさの蜂だ。流石に飛べなくはなっているが、さてと、どう攻めたものかね、、、。


 そんなことを考えているそばで、マーブル達はそれぞれ護衛達と戦っている、というよりこちらから離れるように仕向けてくれていた。恐らく護衛ごときでは相手にならないくらい差があるのだろう、カムイちゃんは少々苦戦しているみたいだけど、ライムとオニキスが守ってくれているから大丈夫だろう。それよりも問題はこの巨大な女王蜂だね。ここは懐に入り込んで攻めますかね、何か針が結構あってやりづらい部分もあるけど。って、普通は一カ所じゃないのか? 何で五カ所に針があるんだ? まあ、いいや。どうにかなるでしょ。心配なのは頭に止まっているモフモフに攻撃がいくことかな。とはいえ避難させようとしても、そっちを狙うだろうし、ここは止まっててもらうのがいいのかな、、、。よし、そうしよう。


「女王蜂さんや、しっかりとつかまっててね。離れたら守り切れないから。」


 女王蜂にそう言うと、女王蜂はぎゅっとしがみついた。うん、こっちの言うことは理解できているんだね。では、攻撃開始だ。


 懐に入り込もうと前進すると、巨大な女王蜂は体を前に倒してきた。何かこうなると蜂というよりは蟻だな。でも、やることは変わらない。一番いいのは頭を潰すことだけど、正直届かないからそれは無理だ、いや、どうせドロップは期待できないから、足から潰していきますかね。ということで、一本ずつ足を凍らせては、手技や足技で破壊していく。全ての足を潰すと、巨大な女王蜂はある意味芋虫みたいな形となっていた。いや、一本だけでも体を支えられていたのは逆に凄いことだよな。


 頭が無防備になったが、その頭が厄介だった。自由自在に動くんだよね。これ一体どうなっているんだろうとか思いつつもアゴの攻撃を避けつつも攻撃を繰り出していく。避けては攻撃を続けること10分くらい、頭の動きもかなり鈍くなってきていた。よし、トドメと、攻撃を繰り出そうと思ったら、頭のモフモフが飛び出して巨大な女王蜂の頭に乗って、その頭に針を突き刺す。ほとんどボロボロだった巨大な女王蜂は抵抗すらできずになすがままの状態だった。


 さらに針を突き刺したまましばらく時間が経つと、巨大な女王蜂は倒されて巨大な羽と、アゴの部分の刃と、ある意味槍として使えそうな長さの毒針を残して消えた。そういえば、ダンジョンだったねここ。もう少し戦闘らしい行動をとりたかったけど、大きすぎて懐に入って殴る蹴るしかできなかったのは仕方がない。


 とりあえずドロップ品を回収してみんなの所に向かう。女王蜂はというと、再び頭の上のモフモフに戻っていた。カムイちゃんは結構苦戦したようだが、無事に倒せたようだ。他のメンバーは全く相手になっていなかったらしく、むしろ物足りないと言わんばかりだった。


 カムイちゃんの息が整ってからハニービーの巣へと戻ることにした。ここからは女王蜂の案内で巣へと戻るのだが、女王蜂に変化が起こったようだ。何とカタコトではあるが、言葉を話せるようになっていた。


「アリガトウ、コレデ、ミンナ、アンシン。」


 どうやら、キラーホーネットの女王蜂を倒したことで、大きく成長したようだ。


 ある程度進んで、ハニービーの巣の戻り方がわかった女性陣達は話せるようになったハニービーを次々に抱きかかえては話しかけていた。


 帰りの道中では何故か知らないけど、虫達の襲撃はなかったのでのんびりしたものだった。無事巣に到着すると、女王蜂はこちらに向くと、こう話した。


「タスケテクレテ、アリガトウ。マタ、イツデモキテ。ミツ、タクサンヨウイシテ、マッテル。」


 こう言うと、護衛らしき蜂達が、瓶をまたいくつかこちらに渡してくれて、それを確認した女王蜂は巣に戻っていった。


「ジェミニ、これでこの階は大丈夫かな?」


「多分大丈夫だと思うです。アイスさん、ワタシの我が儘に付き合ってもらってありがとうです!」


「水くさいよ、家族なんだから、頼りたいときは遠慮なく頼ってよ。」


「ありがとうです!!」


 そう言うと、ジェミニは私に飛びついてきた。うん、モフモフ。負けじとマーブルとライムもこちらに飛びついてきたので、しっかりと受け止めてモフモフを堪能する。あ、ライムはプニプニだったね。それを見ていた女性陣は羨ましそうにこちらを見ていたが、これはいつものことだからガマンしてもらおう。何か対抗するかのように、アンジェリカさんはオニキスをプニプニし始めた。オニキスは嬉しそうだ。ある意味オニキスが羨ましいと思ったのは男の悲しい性かな。


 どちらにせよ、蜂蜜が十分手に入るようになったのは収穫だった。豆柴の問題はもう少し先になりそうだけど、こちらも解決していきたい。


 そんなことを思いつつ、フロストの町へと戻って今日は解散した。
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