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第144話 さてと、ようやく、ようやくです、、、。
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前回のあらすじ:試作品が完成した。
何だかんだといろいろあったけど、とりあえずはビールが完成しホッとしている。今回出すモノは常温発酵のビールのみであり、低温発酵のビールについてはもう少し時間が必要であるので出していない。
ちなみにミードについてだけど、これは基本私しか作っていない、というよりも、領民に開放するには材料が圧倒的に足りないからだ。一般の蜂を用いた養蜂ができるようになれば違ってくるが、基本的には恵みのダンジョンでシロップ達が作ってくれるハニービーのハチミツのみである。ハチミツについてはミードよりも通常使用の方を優先している、という理由もある。
話はそれたけど、今日完成した試作品であるが、あくまで試作品のため、スガープラント入りとそうでないものの2種類を各自1杯ずつ、つまり合計2杯しか飲めない。いつ飲むかは領民達に任せている。最初に飲む領民もいれば、後で取っておく領民もおり、それぞれに性格が出ておもしろい。もちろん、マーブル達にもそれぞれ2杯分飲めることになっている。
ちなみに、ビールを飲まない領民、ぶっちゃけ、子供達+飲めない人達、もちろん私も含めてだけど、彼らについてはどうしたかといえば、ビールにしないで麦汁のまま甘味として利用する分も一緒に生産しているため、折角だからこの麦汁に水を薄めて提供していたりする。こちらも実はかなり好評なのである。
領民達の様子だけど、最初にビールを飲んだ領民からは、「エールを冷たくするとこんなに美味い飲み物になるのか!?」とか、「こんなもの飲んだら、他の酒は飲めねえ!!」とか言っており、それを見て我慢しきれなくて飲んでしまった領民もおり、大好評と言っても良いのではなかろうか。マーブル達はまだ手を付けておらずに、食べ物に夢中だ。一通り食べてから堪能しようとしているらしい。ビールに興味のあるウサギ達やコカトリス達にも飲めるように準備はしてある。ウサギ達にしても、コカトリス達にしても、飲みたがる者とそうでない者がそれぞれいるのが興味深かった。
「おう、フロスト侯爵、凄ぇもんができちまったなあ!!」
嬉しそうに話しかけてきた人物、はい、トリトン陛下です。
「どうですか、陛下? お口に合いましたか?」
「おう! 見た感じは普通のエールだが、実際飲んでみると雲泥の差があるな、これ。」
「そうですか。お気に召して頂き何よりです。」
「で、相談なんだが、これも外交に使えないか?」
「これは外交には使えませんね。」
「まじか!? これだけの味なら文句は出ねぇぞ。そうだよな? 宰相。」
「そうですね。これが普通のエールだとは気づきますまい。フロスト侯爵、他に理由がありそうですね。」
「はい、もちろん理由がありまして、これって、日持ちがしないんですよね、、、。」
理由が意外だったのか、陛下とリトン公爵は驚いた顔をしていた。
「日持ちがしない、とは、一体? エールは日持ちがよくって、気軽に飲めるのが特徴だと聞いているが、このビールは違うのか?」
「材料の問題ですね。他国で生産されているエールですが、日持ちするようにスパイスを入れたり、高温で殺菌をしたりしていると思います。その分味が犠牲になってますけどね。それとは違い、ここで作ったビールは基本的には大麦と水しか使っておらず、発酵も自然に任せております。領内では、冷却してあるので、問題なく美味しく飲めますが、領外に出てしまうとどうしてもぬるくなる上に、殺菌もまともにしておりませんので、結局は飲めなくなるんですよね。」
「なるほど。冷却などの問題が解決できれば、輸出することも可能ということでいいのかな?」
「可能か不可能か、で言えば可能ですね。ただ、そうなると輸送費が馬鹿にならないですし、そこまでして手に入れるほどのものでもないですしね。何より、、、。」
「何より?」
「領民からの要望で作ったのがこのビールですので、領民達が気軽に飲めればいいので、正直、輸出用として領外に出すことは全く考えてません。それよりも、値段を安くしてエールのように気軽に飲んで欲しいですね。ということで、ビールについてはここでしか飲めないようにするつもりです。」
「そうか。侯爵がそう考えているのなら仕方がない。少し相談なんだが、我が領でも作ることを許可して欲しいのだが、構わないかな?」
「リトン公爵の領地でですか? もちろん構いませんよ、というよりも、作り方はエールとほぼ同じですから、許可も何もないですよ。使用する材料で味や保存性が変わりますから、我が領と同じやり方をしても、同じ味にはならないでしょうし、むしろ逆にまずくなる可能性だってありますよ。」
「なるほど、確かにそれもそうか。よし、我が領でもいろいろと試してみることとするか。」
「それがいいかと思います。先日のスタンピードの影響で、ゴブリンが大量発生してくれたおかげで、上質な肥料が手に入ったことによって、トリトン帝国の畑の土は質が大いに上がったでしょうから、、、一部を除いて。」
「確かにそうかもしれないな。もしかして、侯爵は、そういった意味も含めて、あのような嫌がら、いや、御礼の品を彼らに?」
「そういうことです。まさか、全く使用せずに腐らせてアンデッドを大量発生させる事態になるとは思いませんでしたけどね。あそこまで無知蒙昧だとは思いませんでした、、、。」
「あそこの住民達には申し訳ないことをしたかもしれんが、我が国の発展を邪魔するばかりか、足を引っ張る貴族連中や、神を騙るインチキな教会連中の化けの皮を剥がすことができたのは大きかったな。そのおかげで我らは開発に着手できるようになったからな。」
と、ビールの感想についてはあまり触れてくれなかった感があったけど、外交として使おうとした辺り高評価であっただろうと勝手に思った。
トリトン陛下とリトン公爵が去った後は、今度は洞穴族の3人がやってきた。
「ご領主!! この度は我らの願いを聞き届けて頂き、誠にかたじけない!!」
近い近い! これがアンジェリカさんら戦姫であれば、多少は目の保養になってまだ我慢できるが、むさい髭面の連中がこうしてきてしまうと、ウザい以外の何物でもなかった。まあ、それだけ喜んでくれていると思いながら、表情は冷めているのが自分でもわかってしまった。
「しかし! 試作品とはいえ、物足りないですぞ!!」
「大丈夫、今量産体制ができつつあるから、そのうち好きなだけ飲めるようになると思うよ。もちろん、予算の範囲内でね。」
「ぐっ。そうでしたな。まあ、いいです、これからガンガン稼げば良いだけの話ですな! ご領主、我らにガンガン仕事を振ってくだされよ!!」
そう言いながら、洞穴族の3人は嬉しそうにこの場を離れていった。
その後も領民がこちらに来ては御礼を伝えに来てくれた。ビールだけではなく、麦汁に水を加えただけの簡単なジュースではあったが、それについても子供達が御礼を言わんばかりに飛びついてきた。マーブル達も食事を一通り終えた後、改めてビールを飲んだようで、嬉しそうにこちらに飛びついてきた。モフモフ最高である。
大好評のうちに夕食会が終了して、片付けを済ませていつもの通り、ねぐらに移動して風呂と洗濯を済ませてから床に就いた。
次の日、フェラー族長とカムドさんに加えて、冒険者ギルド長も交えて話し合いを行った。もちろんビールについての内容である。
大まかな内容として、ここで生産されたビールは、冒険者ギルド内にある酒場、我が領内にある宿屋にある食堂に加えて、路上でもビールを取り扱う領民にのみ出すことにし、料金については、エールなどの安くて気軽に飲める程度の料金に抑えること、生産量が安定するまでは、1人当たりの飲める量を制限するということで決まった。ギルドからは、金額をもう少し高くしても問題ないという意見が出てきたが、あくまで領内で気軽に飲める酒をつくったに過ぎないので、そのような感じになった。
また、ギルド長から、他領から来た冒険者の口から、この町のビールについての噂が広がり、それを目当てに冒険者が今後も増えてくるだろうから、その対策についての話し合いも行われた。
第一には治安問題であるが、それについてはあっさりと解決した。というのも、ここの領民はかなり戦闘力が高いらしく、通常の冒険者では全く相手にならないそう。一応、対策としては、問題を起こした冒険者については、今後この町に入ることはできない状態にすることが決まった。
第二の問題点は、ここで作られたビールの偽物が他領で出回ることにより、ここのビールの評判が落ちることに対する危惧のようだった。正直個人的には、別に他人がどう思っていようが全く気にならなかったけど、領民達はそうではないらしい。
ということで、ビールを入れる壺に仕掛けを作るということになった。まず、ビールの入っている壺には目印を入れることにし、常温発酵のビールについては、マーブルの足跡を、もうすぐ完成する低温発酵のビールについては、ジェミニの足跡をそれぞれつけることにした。ちなみに、我が領産のミードについては、ライムを象(かたど)った印がすでに付いている。
もちろん、足跡などをつけることだけが仕掛けではなく、それぞれ足跡の付いた壺は、実は5メートルくらいの高さから落としてもヒビ一つ入らないような強化付与が施されており、仮に足跡などを真似ても、鈍器とかで殴って壊れるかどうかで、本物か偽物かを判別できる。ここまで問題なくても、実際に飲んでみて冷たくないものはフロスト産ビールとは違う。
では、しっかり目印がある、壊れない、味もそっくりな偽物が出てきたら? ということだけど、正直、そこまでの技術があれば、別にこちらを真似する必要もないはずだから、まずあり得ないだろう、ということで話が付いた。
また、それぞれのビールについてだけど、常温発酵のビールについては、「マーブルビール」という名前が付いた。というのも、このビールを入れる壺にはマーブルの足跡を付けているという理由が大きいが、それ以前に、このビールの色が、マーブルの毛の色に似ているということもマーブルビールの名前の由来となっていた。ちなみに命名者は私ではないからね。
ということで、低温発酵のビールの方は「ジェミニビール」という名前になった。まだ完成してないんだけどね、ジェミニビール、、、。マーブルときたら次はジェミニという安易な理由ではあるが、それが我が領では定着しているのはある意味誇らしい。レオが「何でワシの名を使わんのじゃ!」とか言ってたみたいだけど、それについてはある意味しょうがない。
当人達は嬉しいやら恥ずかしいやらで、照れていた。とても可愛らしかった。ライムは? という話になり、フロスト産ミードの入れ物がライムの形じゃん、ということで、「ライムミード」という名前もあっさりと決まってしまった。当のライムは「ボクのなまえだー!!」と喜んでいたのでよしとしよう。
ちなみに、マーブルビールの色と、マーブルの色がそっくりという発言をしたのは、実はアンジェリカさんだったりする。というわけで、名付け親はアンジェリカさんということで。
どちらにせよ、マーブル、ジェミニの名前を付けた我が領産のビールについてはこれで目処が立ったので、これからは領民に丸投げして、このまま発展して欲しいと願ってやまない。
-------------------------
冒険者A「な、何これ? これがエール?」
冒険者B「今まで俺たちが飲んでいたものは何だったんだろう、、、。」
冒険者C「しかし、これで楽しみが増えたな!」
冒険者D「とはいえ、ここの魔物って、メチャクチャ強いんだよな、、、。」
冒険者達「「「「ビールのために頑張るぜ!!!」」」」
何だかんだといろいろあったけど、とりあえずはビールが完成しホッとしている。今回出すモノは常温発酵のビールのみであり、低温発酵のビールについてはもう少し時間が必要であるので出していない。
ちなみにミードについてだけど、これは基本私しか作っていない、というよりも、領民に開放するには材料が圧倒的に足りないからだ。一般の蜂を用いた養蜂ができるようになれば違ってくるが、基本的には恵みのダンジョンでシロップ達が作ってくれるハニービーのハチミツのみである。ハチミツについてはミードよりも通常使用の方を優先している、という理由もある。
話はそれたけど、今日完成した試作品であるが、あくまで試作品のため、スガープラント入りとそうでないものの2種類を各自1杯ずつ、つまり合計2杯しか飲めない。いつ飲むかは領民達に任せている。最初に飲む領民もいれば、後で取っておく領民もおり、それぞれに性格が出ておもしろい。もちろん、マーブル達にもそれぞれ2杯分飲めることになっている。
ちなみに、ビールを飲まない領民、ぶっちゃけ、子供達+飲めない人達、もちろん私も含めてだけど、彼らについてはどうしたかといえば、ビールにしないで麦汁のまま甘味として利用する分も一緒に生産しているため、折角だからこの麦汁に水を薄めて提供していたりする。こちらも実はかなり好評なのである。
領民達の様子だけど、最初にビールを飲んだ領民からは、「エールを冷たくするとこんなに美味い飲み物になるのか!?」とか、「こんなもの飲んだら、他の酒は飲めねえ!!」とか言っており、それを見て我慢しきれなくて飲んでしまった領民もおり、大好評と言っても良いのではなかろうか。マーブル達はまだ手を付けておらずに、食べ物に夢中だ。一通り食べてから堪能しようとしているらしい。ビールに興味のあるウサギ達やコカトリス達にも飲めるように準備はしてある。ウサギ達にしても、コカトリス達にしても、飲みたがる者とそうでない者がそれぞれいるのが興味深かった。
「おう、フロスト侯爵、凄ぇもんができちまったなあ!!」
嬉しそうに話しかけてきた人物、はい、トリトン陛下です。
「どうですか、陛下? お口に合いましたか?」
「おう! 見た感じは普通のエールだが、実際飲んでみると雲泥の差があるな、これ。」
「そうですか。お気に召して頂き何よりです。」
「で、相談なんだが、これも外交に使えないか?」
「これは外交には使えませんね。」
「まじか!? これだけの味なら文句は出ねぇぞ。そうだよな? 宰相。」
「そうですね。これが普通のエールだとは気づきますまい。フロスト侯爵、他に理由がありそうですね。」
「はい、もちろん理由がありまして、これって、日持ちがしないんですよね、、、。」
理由が意外だったのか、陛下とリトン公爵は驚いた顔をしていた。
「日持ちがしない、とは、一体? エールは日持ちがよくって、気軽に飲めるのが特徴だと聞いているが、このビールは違うのか?」
「材料の問題ですね。他国で生産されているエールですが、日持ちするようにスパイスを入れたり、高温で殺菌をしたりしていると思います。その分味が犠牲になってますけどね。それとは違い、ここで作ったビールは基本的には大麦と水しか使っておらず、発酵も自然に任せております。領内では、冷却してあるので、問題なく美味しく飲めますが、領外に出てしまうとどうしてもぬるくなる上に、殺菌もまともにしておりませんので、結局は飲めなくなるんですよね。」
「なるほど。冷却などの問題が解決できれば、輸出することも可能ということでいいのかな?」
「可能か不可能か、で言えば可能ですね。ただ、そうなると輸送費が馬鹿にならないですし、そこまでして手に入れるほどのものでもないですしね。何より、、、。」
「何より?」
「領民からの要望で作ったのがこのビールですので、領民達が気軽に飲めればいいので、正直、輸出用として領外に出すことは全く考えてません。それよりも、値段を安くしてエールのように気軽に飲んで欲しいですね。ということで、ビールについてはここでしか飲めないようにするつもりです。」
「そうか。侯爵がそう考えているのなら仕方がない。少し相談なんだが、我が領でも作ることを許可して欲しいのだが、構わないかな?」
「リトン公爵の領地でですか? もちろん構いませんよ、というよりも、作り方はエールとほぼ同じですから、許可も何もないですよ。使用する材料で味や保存性が変わりますから、我が領と同じやり方をしても、同じ味にはならないでしょうし、むしろ逆にまずくなる可能性だってありますよ。」
「なるほど、確かにそれもそうか。よし、我が領でもいろいろと試してみることとするか。」
「それがいいかと思います。先日のスタンピードの影響で、ゴブリンが大量発生してくれたおかげで、上質な肥料が手に入ったことによって、トリトン帝国の畑の土は質が大いに上がったでしょうから、、、一部を除いて。」
「確かにそうかもしれないな。もしかして、侯爵は、そういった意味も含めて、あのような嫌がら、いや、御礼の品を彼らに?」
「そういうことです。まさか、全く使用せずに腐らせてアンデッドを大量発生させる事態になるとは思いませんでしたけどね。あそこまで無知蒙昧だとは思いませんでした、、、。」
「あそこの住民達には申し訳ないことをしたかもしれんが、我が国の発展を邪魔するばかりか、足を引っ張る貴族連中や、神を騙るインチキな教会連中の化けの皮を剥がすことができたのは大きかったな。そのおかげで我らは開発に着手できるようになったからな。」
と、ビールの感想についてはあまり触れてくれなかった感があったけど、外交として使おうとした辺り高評価であっただろうと勝手に思った。
トリトン陛下とリトン公爵が去った後は、今度は洞穴族の3人がやってきた。
「ご領主!! この度は我らの願いを聞き届けて頂き、誠にかたじけない!!」
近い近い! これがアンジェリカさんら戦姫であれば、多少は目の保養になってまだ我慢できるが、むさい髭面の連中がこうしてきてしまうと、ウザい以外の何物でもなかった。まあ、それだけ喜んでくれていると思いながら、表情は冷めているのが自分でもわかってしまった。
「しかし! 試作品とはいえ、物足りないですぞ!!」
「大丈夫、今量産体制ができつつあるから、そのうち好きなだけ飲めるようになると思うよ。もちろん、予算の範囲内でね。」
「ぐっ。そうでしたな。まあ、いいです、これからガンガン稼げば良いだけの話ですな! ご領主、我らにガンガン仕事を振ってくだされよ!!」
そう言いながら、洞穴族の3人は嬉しそうにこの場を離れていった。
その後も領民がこちらに来ては御礼を伝えに来てくれた。ビールだけではなく、麦汁に水を加えただけの簡単なジュースではあったが、それについても子供達が御礼を言わんばかりに飛びついてきた。マーブル達も食事を一通り終えた後、改めてビールを飲んだようで、嬉しそうにこちらに飛びついてきた。モフモフ最高である。
大好評のうちに夕食会が終了して、片付けを済ませていつもの通り、ねぐらに移動して風呂と洗濯を済ませてから床に就いた。
次の日、フェラー族長とカムドさんに加えて、冒険者ギルド長も交えて話し合いを行った。もちろんビールについての内容である。
大まかな内容として、ここで生産されたビールは、冒険者ギルド内にある酒場、我が領内にある宿屋にある食堂に加えて、路上でもビールを取り扱う領民にのみ出すことにし、料金については、エールなどの安くて気軽に飲める程度の料金に抑えること、生産量が安定するまでは、1人当たりの飲める量を制限するということで決まった。ギルドからは、金額をもう少し高くしても問題ないという意見が出てきたが、あくまで領内で気軽に飲める酒をつくったに過ぎないので、そのような感じになった。
また、ギルド長から、他領から来た冒険者の口から、この町のビールについての噂が広がり、それを目当てに冒険者が今後も増えてくるだろうから、その対策についての話し合いも行われた。
第一には治安問題であるが、それについてはあっさりと解決した。というのも、ここの領民はかなり戦闘力が高いらしく、通常の冒険者では全く相手にならないそう。一応、対策としては、問題を起こした冒険者については、今後この町に入ることはできない状態にすることが決まった。
第二の問題点は、ここで作られたビールの偽物が他領で出回ることにより、ここのビールの評判が落ちることに対する危惧のようだった。正直個人的には、別に他人がどう思っていようが全く気にならなかったけど、領民達はそうではないらしい。
ということで、ビールを入れる壺に仕掛けを作るということになった。まず、ビールの入っている壺には目印を入れることにし、常温発酵のビールについては、マーブルの足跡を、もうすぐ完成する低温発酵のビールについては、ジェミニの足跡をそれぞれつけることにした。ちなみに、我が領産のミードについては、ライムを象(かたど)った印がすでに付いている。
もちろん、足跡などをつけることだけが仕掛けではなく、それぞれ足跡の付いた壺は、実は5メートルくらいの高さから落としてもヒビ一つ入らないような強化付与が施されており、仮に足跡などを真似ても、鈍器とかで殴って壊れるかどうかで、本物か偽物かを判別できる。ここまで問題なくても、実際に飲んでみて冷たくないものはフロスト産ビールとは違う。
では、しっかり目印がある、壊れない、味もそっくりな偽物が出てきたら? ということだけど、正直、そこまでの技術があれば、別にこちらを真似する必要もないはずだから、まずあり得ないだろう、ということで話が付いた。
また、それぞれのビールについてだけど、常温発酵のビールについては、「マーブルビール」という名前が付いた。というのも、このビールを入れる壺にはマーブルの足跡を付けているという理由が大きいが、それ以前に、このビールの色が、マーブルの毛の色に似ているということもマーブルビールの名前の由来となっていた。ちなみに命名者は私ではないからね。
ということで、低温発酵のビールの方は「ジェミニビール」という名前になった。まだ完成してないんだけどね、ジェミニビール、、、。マーブルときたら次はジェミニという安易な理由ではあるが、それが我が領では定着しているのはある意味誇らしい。レオが「何でワシの名を使わんのじゃ!」とか言ってたみたいだけど、それについてはある意味しょうがない。
当人達は嬉しいやら恥ずかしいやらで、照れていた。とても可愛らしかった。ライムは? という話になり、フロスト産ミードの入れ物がライムの形じゃん、ということで、「ライムミード」という名前もあっさりと決まってしまった。当のライムは「ボクのなまえだー!!」と喜んでいたのでよしとしよう。
ちなみに、マーブルビールの色と、マーブルの色がそっくりという発言をしたのは、実はアンジェリカさんだったりする。というわけで、名付け親はアンジェリカさんということで。
どちらにせよ、マーブル、ジェミニの名前を付けた我が領産のビールについてはこれで目処が立ったので、これからは領民に丸投げして、このまま発展して欲しいと願ってやまない。
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冒険者A「な、何これ? これがエール?」
冒険者B「今まで俺たちが飲んでいたものは何だったんだろう、、、。」
冒険者C「しかし、これで楽しみが増えたな!」
冒険者D「とはいえ、ここの魔物って、メチャクチャ強いんだよな、、、。」
冒険者達「「「「ビールのために頑張るぜ!!!」」」」
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