魂込めて歌いますッ‼

聖火

文字の大きさ
2 / 5
1章

1話 将来なんてメンドクセェ

しおりを挟む
「おい上代。進路調査票の提出、昨日までだったよな?」

 現在、絶賛説教され中。

 教室に着くやいなや担任からのご指名を受けたのだ。

 明日から始まる文化祭に向けて今日は丸一日その準備に充てられた。

 私のグループが担当していた、文化祭で使うもの集めは昨日のうちに終わっている。

 だから今日は気ままに過ごすつもりだったのだが。

「あははー先生怖いなぁ。もっと笑顔の方が可愛いですよ」

 まあこんな調子である。

 先生は「はあ、全く」とため息も追加で呆れた様子を呈する。

「それで、上代は何に悩んでるんだ?」

 真っ白な進路調査の紙をヒラヒラとさせながら、足を組み替えて面倒くさそうに質問する。

 教師にあるまじき態度の先生をぼんやりと眺める。

「んー、悩んでるっていうか、悩んでないのが問題っていうか」

「つまりなんだ、提出忘れてたってことか」

「まあそれも理由の一つですけど……」

 もう一つの方に結論を出せずに放置していた結果、存在を忘れて期限切れになったのだから。

「とりあえず明日までによく考えてこい。答えだせないなら相談乗るから」

「アリガト先生! また明日来ますよ」

 ぶんぶんと手を大きく振りながら私は職員室を後にした。


 私は思う。

 皆と同じように将来を受動的に、楽な方へ上手く立ち回れたら、と。

 私は考える。

 上手く立ち回れなかったとしても、せめて納得できる道はあるのだろうか、と。


「おかえり。何の呼び出しだったの?」

 ぐったりとした風で教室に戻ると、加奈が出迎えてくれた。

 はじける笑顔が眩しい、向日葵のような女の子だ。

 ついでに私の癒しでもある。

「進路調査票。昨日までだったけど出してなかったの」

 疲れたぁ、と大きめの声で息を吐く。

 そこに翼もやってきたのでいつもの三人が揃う。

「マジか。私なんてその日のうちに出してきたわ」

「私も次の日には出したよ。近くにある大学の理学部書いておいた」

 皆さんお気楽でいいねぇ、と少し皮肉気味に答えてみる。

 それを意にも返さず翼は続く。

「そんな悩むことなくね? 頭いいんだから良い大学書いときゃダイジョブっしょ」

「まあそうなんだけどねぇ。もう少し夢を見たいお年頃でもあるわけなんですよ」

 机の上のバッグを開き水筒を取り出す。

 中身の清涼飲料水を口に含み、その甘さで少し気分が晴れた。

「複雑っぽいね。そんなひびきちゃんにはこれあげる」

 そう言って加奈はスカートのポケットに手を伸ばす。

 同時に逆の手は別の方へ。

「何これ? チョコと刷毛?」

 っていうかチョコ溶けてんじゃん……

「そう、まだ文化祭の準備終わってないからね……」

「いやメンドクセェな。これ加奈の当番じゃん」

 それに終わってないのは昨日サボった加奈が悪い。

「道連れ! 良いではないか同胞よ」

 ええい、ままよ。

 サンフラワーな笑顔とスイートなチョコに免じて許してやる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

家から追い出されました!?

ハル
青春
一般家庭に育った私、相原郁美(あいはら いくみ)は両親のどちらとも似ていない点を除けば、おおよそ人が歩む人生を順調に歩み、高校二年になった。その日、いつものようにバイトを終えて帰宅すると、見知らぬ、だが、容姿の整った両親に似ている美少女がリビングで両親と談笑している。あなたは一体だれ!?困惑している私を見つけた両親はまるで今日の夕飯を言うかのように「あなた、やっぱりうちの子じゃなかったわ。この子、相原美緒(あいはら みお)がうちの子だったわ。」「郁美は今から施設に行ってもらうことになったから。」と言われる。 急展開・・・私の人生、どうなる?? カクヨムでも公開中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...