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 それから強い衝動が起きるとまたアサギに縋り気を失うまで抱かれて、起きるとアサギが食事の介助までしてくれて、更にまた抱かれる――そんな時間が繰り返された。
 すっきりと目が覚めた朝、あれから何日経ったのかユズハにも分からなかった。ただ、同じベッドの隣にはぐっすりと眠るアサギがいるので、ずっと付き添ってくれていたことは分かる。
 こんなに無防備なアサギを見るのは初めてで、なんだか少し可愛くも見えた。
 そんなアサギをじっと見ているとその瞼が動き、ゆっくりとそれが開いた。少しぼんやりとした表情で目が合う。
「おはよう、アサギ」
「……ユズハ、具合は? 痛いところとか、ない?」
 アサギがユズハの頬に手を伸ばし優しく触れる。ユズハはそれに頷いた。
 訳が分からなくなって、激しくして欲しいと何度もユズハは強請ったのだが、最後までアサギは乱暴にはしなかった。そのおかげか、ユズハの体はどこにも痛みを感じていない。
「そうか、良かった」
 アサギの腕がユズハを包み込むように抱き寄せる。ユズハはそれに抵抗することなくアサギの胸に顔を寄せた。以前よりも随分アサギの香りが心地良く感じる。番になったせいかもしれない。 
「ユズハが発情してるって聞いて、薬を飲んで来たんだが、やはり少しあてられていたようだから、抱き潰してしまわないかと心配だったんだ」
    その言葉を聞いて、ユズハは少し納得した。発情期のオメガを前に、ずっと理性を保てるアルファなんて居ない。それを捨ててしまわないように、アサギはあえて薬を飲んでくれた。本当は一緒に発情してしまった方が気持ちいいだろうに、それをしなかったと分かると、その優しさが、胸が苦しくなるくらい嬉しい。
「項は痛くない?」
 割と思い切り噛んじゃったから、と言われ、ユズハは自身の首に手を寄せた。確かに後ろの部分がじんじんと熱い。でも不思議と痛みはなかった。
「大丈夫、だけど……」
 本当に番になんてなって良かったのだろうか、とユズハが不安でアサギを見上げる。相変わらず優しい顔のまま、アサギが口を開いた。
「次にここに来る時は、お前を迎えに来る」
 そう言ってユズハの額にキスをすると、アサギは起き上がり、ベッドを出て床に落ちたままの自身の衣服を身に付け始めた。ユズハはそれを見ながら体を起こす。振り返ったアサギが再びベッドに腰掛けた。
「体を冷やすな。もう一人の体じゃないんだから」
 アサギがガウンを拾い上げ、ユズハの肩に掛ける。ユズハはその言葉に頷いた。
「じゃあ、また、落ち着いたら会いに来る」
 アサギがユズハに深くキスをしてからベッドを離れた。そのまま部屋を出ていく。
 ユズハはそれを黙って見送りながら、そっと自身の腹に触れた。
 ここにアサギの子が居るかもしれない。発情期にこれでもかというほど抱き合ったのだからきっと宿っているのだろう。
「……ホントにこれで良かったのかな……」
 訳もなく不安になって、ユズハはまだアサギの香りが残るベッドにうずくまる様に横になって、目を閉じた。
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