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しおりを挟む週末はあいにくの雨だった。秋生からは、また街歩きでもしようか、なんてデートプランを提示されていたのだが、雨だと歩くのも大変だ。それに、朱莉にはしたいことがあって、雨だから秋生さんの家に行く、とメッセージを送ってから家を出た。
「やっぱり、聞いてた通り少し辛いかも……」
朱莉は自身の体温が上がっているのを感じながら、電車に乗り込んだ。体調不良とも違う不思議な感覚は、朱莉にとって初めてのものだ。とはいえ、これは朱莉の覚悟だ。こうして秋生に会いに行くことで、秋生にどれだけ本気なのか、伝えたい。
そのために、昨日は泉田のところへ行き、卵子生成剤を投与した。
『ちゃんと様子を見て、無理は絶対しないで』と泉田が心配していたが、確かにこれは一人で移動するのは無謀だったかもしれない。
秋生の住むマンションがある最寄り駅で降りた朱莉は、そこで傘を持って待っている秋生の姿を見つけ、走り寄った。
「秋生さん、迎えに来てくれてありがとうございます」
秋生が迎えに来てくれた、少しでも早く会えた、それが嬉しくて秋生を笑顔で見上げると、その顔を見た途端、秋生の表情が少しこわばり、朱莉の頬に手を伸ばした。
「朱莉くん、具合悪いんじゃない……?」
頬に触れた秋生の手のひらは、朱莉には少しひんやりしている。
おそらく秋生の手が冷たいのではなくて、朱莉の体温が高いのだろう。秋生は朱莉の変化にすぐに気づいたらしい。さすが医者、というところか。
「具合が悪いわけじゃないんです、けど……」
さすがに駅の改札付近で、卵子生成剤の話をするわけにいかなくて、朱莉が言葉を濁す。秋生はそれに首をかしげながらも、すぐに家に行こう、と朱莉の手を掴んだ。その冷たい手に触れられるだけで、朱莉はドキドキと心臓を高鳴らせた。
このことを伝えたら、秋生はどんな反応をするだろう。また、無謀なことをして、と叱られるかもしれない。でももしかしたら喜んでくれるかも、そんな気持ちで朱莉は秋生の手を握り返した。
「ほんとに具合悪そうだけど、平気?」
部屋に着くと、秋生は一番に朱莉の体調を心配してくれた。いつも秋生には心配をかけてしまっているが、秋生も少し心配しすぎな気もして、朱莉は思わず笑ってしまった。
「大丈夫です。今日は自分でこうしてきたので」
朱莉は秋生に勧められたソファに腰かけてから、そう答えた。秋生が隣に座り、怪訝な顔をしてこちらを見つめる。
「昨日、泉田先生のところに行ったんです……卵子生成剤を打ってもらうために」
朱莉のその言葉だけで全部理解したのだろう。秋生が真剣な表情になり、朱莉の言葉を待っていた。どう答えていいのか分からないのだろう。
「ぼくは、秋生さんの子を産みたいと思ってるんです。そのくらい好きだから……ちゃんと、恋人にしてほしい。これは、ぼくのそういう覚悟、です」
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